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2.どうしよう
しおりを挟むあれから隊長さん、もといクロードさんに色々質問をして、ある程度は現状を把握できた。
予想通り、僕は今家ごと獣人が存在する異世界に来てしまっていて、しかもクロードさんの敷地内にお邪魔してしまっているらしい。
クロードさん曰く、このまま家に住んでて構わないそうなので僕は大人しく引きこもることにした。この国の人たちにとって異世界人は、国に繁栄をもたらすと伝えられる神聖な存在なので、国王様からの呼び出しがちょくちょくあるかもしれない、とのこと。
「それにだ。ナツキが国に有益だと判断されれば国に繋ぎ止めようと王族や貴族との結婚を勧められる可能性もある。そうなればこの家から出なければならない。他の領主と結婚するのに俺の領地に住むわけにもいかないだろ?それに、例え他所に移り住んだとしてもいつでも帰って来れる訳でもない。貴族ってのは、おいそれと遠出が出来ないもんだ。他人の土地を勝手に踏む、なんてのはもってのほかだしな。あ、ナツキは特別だからな」
んー、よく分からないけど、知らない間にお見合い話を勧められて、それで決められちゃうってことだよね。
この家にも住めなくなるのか。
うん、それはやだな。
「そこで、だ。見知らぬ土地で知らない獣人となんて不安だろうからな。俺でよかったら相手になる」
ん?
「えっと…何の相手ですか?」
「結婚の相手だ」
「………」
「ぇ、と…クロードさんって侯爵様ですよね、貴族の」
「あぁ、一応な」
「ご結婚は……」
「していない。独り身だ」
「それでえっと、男の方……ですよね」
「男だな」
「つかぬことをお聞きしますが…お世継ぎなんかは……」
「まぁ、いずれ欲しいだろうな」
「えと、それってつまりは…僕と結婚をしておきながら愛人をつくるってことですか……」
「嫉妬か?可愛いな。獣人は生涯一人だけを愛するからな。俺が愛するのはナツキ、お前だけだ」
嫉妬…なのかな。うん、たぶん嫉妬だ。
だってクロードさんが他の人と…なんて考えるだけでも胸がモヤモヤする。
「……それはとても嬉しいですけど。クロードさんは僕で良いんですか?それに、僕が男だって知ってます?」
「あぁ、俺はナツキがいいんだ。ナツキは可愛いが性別は初めからわかってる。俺は狼だからな、鼻が効く」
「僕ではお世継ぎ産めませんけど、それでもよければ…お願いします」
「世継ぎの件は問題ねぇけどな…ま、それは追々。んじゃちょっと婚姻届持ってくるから待ってろ」
そう言ってクロードさんは屋敷に戻っていった。
我ながらすごい決断をしたと思う。
でも後悔はない。
ついさっき会ったばかりだけど、不思議とクロードさんの隣は心地いいし。
ずっとこのままでいたい、と感じるくらいには僕、クロードさんのことを好きなんだと思う。隊長さんなだけあって身体は逞しくて、頼り甲斐があって好きだ。
部下の隊員さんからも尊敬されてるみたいだし。きっといい人なんだと思う。
それに、ピクピク動く灰色の耳やフサフサの尻尾で腰をすりすりされるのが堪らない。毛並みは整えられていて、触り心地はふわふわだ。撫でてみたいなぁ、なんて思ってたら自分でも気が付かないまま、無意識にモフモフしてた。でも嫌がられずに逆に喜ばれたからそのままモフモフを堪能させてもらった。
うん、やっぱりいい人だ。
もしするにしても後悔は後ですればいい。
おばあちゃんも、やってみなきゃわからないって言ってたし。
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