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本編
学園生活、始まります! 01
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目の前には咲き乱れる桜。
ひらひらと舞い落ちる桜の花びらをそっと手に取る。柔らかく、そしてほのかに暖かい感触が指先に広がった。
少し若葉の匂いが残る春の日差しの香りを胸に留め、桃色の景色に懐かしさを感じながら、以前より少し大人びたメル・アスカードは新たな決意を胸に、
一歩、その足を踏み出した。
16歳になった僕、メル・アスカードは今日から王立魔術高等学園に入学する。
ここは魔力量を多く保持しているαとΩが入学する、貴族の子息や令嬢達が通う学園だ。
大陸一の領土を誇る大国、ラブフォード王国の中央王都にあり、四方八方から多くの生徒を乗せた馬車がひしめき合い寄せ、集まってくる。
前世で体験した帰省ラッシュの高速道路の渋滞なんて目じゃないほどに。
本来ならば、αやΩの総人口は高く見積もっても全体の5%にも満たないはずだが、なぜこんなにも生徒数が多いのかと言われれば答えはひとつ。いや、ふたつ?みっつ?
愛の女神様曰く、この世界では
αはΩと、βはβ同士で婚姻を結ぶ人が殆どで、不倫や浮気をする人はほとんどおらず、
皆が皆、お互いに愛し合っているからなの!
らぶらぶね♡
しかも、βの男性でも妊娠できちゃうのよぉ♡
私の力でちょぴっと加護を授ければ一発妊娠よ!
代わりに教会まで来てもらわなきゃいけないけどね⭐︎
らしい。女神様は時折、僕の夢に出てきてはそんな趣味詰め詰めの世界のことを話してくれる。
と、いうわけでこの王国の一世帯あたりの出生率はとんでもなく高い。平民は少なくても5,6人だが貴族は10人以上は当たり前だ。
えっ、身体持つの?母体への影響大丈夫って?
そこは異世界お約束。
女神様の加護やら魔力量が多い程寿命が伸びるやら老け難いやらで、絶対安全に出産できるらしい。兎にも角にも凄い。
それでもって、旦那様方は皆精力旺盛らしい。
……うん。それは聞きたくなかった。
そんな頭が痛くなるような桃色ピンクの話を思い出しながら、ぎゅうぎゅう詰めの人混みを掻き分け、新入生向けに張り出された紙を見る。
うぅ~、これじゃあ見えない。背伸びしないと!んぐぐぐ…あっ、やっと見えた。
えぇと、
『入学式は大舞踏会ホールで行われます。各自、指定された場所に集まり、教員の指示に従って下さい』
ひらひらと舞い落ちる桜の花びらをそっと手に取る。柔らかく、そしてほのかに暖かい感触が指先に広がった。
少し若葉の匂いが残る春の日差しの香りを胸に留め、桃色の景色に懐かしさを感じながら、以前より少し大人びたメル・アスカードは新たな決意を胸に、
一歩、その足を踏み出した。
16歳になった僕、メル・アスカードは今日から王立魔術高等学園に入学する。
ここは魔力量を多く保持しているαとΩが入学する、貴族の子息や令嬢達が通う学園だ。
大陸一の領土を誇る大国、ラブフォード王国の中央王都にあり、四方八方から多くの生徒を乗せた馬車がひしめき合い寄せ、集まってくる。
前世で体験した帰省ラッシュの高速道路の渋滞なんて目じゃないほどに。
本来ならば、αやΩの総人口は高く見積もっても全体の5%にも満たないはずだが、なぜこんなにも生徒数が多いのかと言われれば答えはひとつ。いや、ふたつ?みっつ?
愛の女神様曰く、この世界では
αはΩと、βはβ同士で婚姻を結ぶ人が殆どで、不倫や浮気をする人はほとんどおらず、
皆が皆、お互いに愛し合っているからなの!
らぶらぶね♡
しかも、βの男性でも妊娠できちゃうのよぉ♡
私の力でちょぴっと加護を授ければ一発妊娠よ!
代わりに教会まで来てもらわなきゃいけないけどね⭐︎
らしい。女神様は時折、僕の夢に出てきてはそんな趣味詰め詰めの世界のことを話してくれる。
と、いうわけでこの王国の一世帯あたりの出生率はとんでもなく高い。平民は少なくても5,6人だが貴族は10人以上は当たり前だ。
えっ、身体持つの?母体への影響大丈夫って?
そこは異世界お約束。
女神様の加護やら魔力量が多い程寿命が伸びるやら老け難いやらで、絶対安全に出産できるらしい。兎にも角にも凄い。
それでもって、旦那様方は皆精力旺盛らしい。
……うん。それは聞きたくなかった。
そんな頭が痛くなるような桃色ピンクの話を思い出しながら、ぎゅうぎゅう詰めの人混みを掻き分け、新入生向けに張り出された紙を見る。
うぅ~、これじゃあ見えない。背伸びしないと!んぐぐぐ…あっ、やっと見えた。
えぇと、
『入学式は大舞踏会ホールで行われます。各自、指定された場所に集まり、教員の指示に従って下さい』
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