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番外編
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近くにあった食料品店で、鈴音さんが言う通りの材料を買った。ケーキの材料代って結構高くてびっくりした。けどまあ、プレゼントだ。貧乏性は忘れる。
タクシーに乗って向かったのは、鈴音さんのマンション。関西にいることも多い鈴音さんだけど、結城組の事務所近くに部屋があるのも便利だし、狼さんも使うしということで折半して部屋を買ったらしい。
お邪魔してみると、広々とした部屋にはモニターが何台もあったり、何か分からない物がいっぱいあって、まるで秘密基地みたいだった。
「あ? ああ、職業柄ちょっとな」
とだけ言われてそれ以上聞く気にはならなかった。すげぇ。やっぱこの人やべぇ。と思っただけ。触らぬ神に祟りなし。
「よし、じゃあサクッと作りますか!」
「お願いします!」
さて。
まぁ俺は、ゲイではないのよ。もちろん鈴音さんは綺麗だと思うし、いい人だって思ってる。それに狼さんが超絶恐いのも面倒なのも分かってるし、ついでに言うと結城もそういう意味で恐い。
しかし、俺は今、『萌え』を理解した!!
「……くまのエプロン……!」
「可愛いだろー。お気に入りなんだ。俺に似合うって弟がくれてさ」
「弟さんがいらっしゃるんですか?」
「いや、なんつーか、親代わりみたいな夫婦の子供。だから血は繋がってない」
「ああ、そうか。鈴音さんって兄弟とかいなさそうなイメージっていうか……余計なこと聞いてすいません」
「ま、いいじゃんいいじゃん! さっさと作ろうぜ」
「おっけーっす!」
そんなこんなで横で全く同じものを作ってくれる鈴音さんの作業を見様見真似で作っていく。途中、生地を寝かせたりオーブンで焼いたりしてる間に、共通の話題として結城とか狼さんの話なんてしつつ(驚くべきことに鈴音さんは狼さんのことを本気で可愛いと思っているらしい。目が腐っているとしか思えない)ケーキは完成した。
「上手くいったじゃん。巽さん、きっと喜ぶぜ」
と言いながら、早速自分で作ったケーキを食べる鈴音さん。この細身でホールケーキをペロリと軽々食べてしまうんだから驚き。
俺は使った道具類を洗って片付けながら感謝の言葉を口にした。
「まじで今日はありがとうございました。助かりました」
「いいってことよ。俺も楽しかったし、ケーキ食えるし」
「それで依頼料とかは?」
「そんなのいらねえって。かづっちゃんから金なんか取れねぇよ」
「いいんですか?」
「そんなにケチそうに見える?」
「見えないっす!」
「だろ? だから気にすんな。それにかづっちゃんには感謝もしてんだ。また困った時は呼んでくれよな」
「え? 感謝って?」
片付けが丁度終わって、鈴音さんに向き直った。そんな俺と目を合わせて、鈴音さんはニカッと笑う。
「なーいしょ!」
「気になるっすよ」
「意識させる気はねぇんだ。今まで通り、普通にしててくれたらそれでいい」
「ええ?」
「さてと、かづっちゃん。事務所まで送るから帰る準備」
「あ、はい!」
結局何のことやら分からず終い。そんでもっていつの間にやらケーキを食い終わってることに驚愕したあと、鈴音さんの快適な運転で結城組の事務所まで送ってもらった。
タクシーに乗って向かったのは、鈴音さんのマンション。関西にいることも多い鈴音さんだけど、結城組の事務所近くに部屋があるのも便利だし、狼さんも使うしということで折半して部屋を買ったらしい。
お邪魔してみると、広々とした部屋にはモニターが何台もあったり、何か分からない物がいっぱいあって、まるで秘密基地みたいだった。
「あ? ああ、職業柄ちょっとな」
とだけ言われてそれ以上聞く気にはならなかった。すげぇ。やっぱこの人やべぇ。と思っただけ。触らぬ神に祟りなし。
「よし、じゃあサクッと作りますか!」
「お願いします!」
さて。
まぁ俺は、ゲイではないのよ。もちろん鈴音さんは綺麗だと思うし、いい人だって思ってる。それに狼さんが超絶恐いのも面倒なのも分かってるし、ついでに言うと結城もそういう意味で恐い。
しかし、俺は今、『萌え』を理解した!!
「……くまのエプロン……!」
「可愛いだろー。お気に入りなんだ。俺に似合うって弟がくれてさ」
「弟さんがいらっしゃるんですか?」
「いや、なんつーか、親代わりみたいな夫婦の子供。だから血は繋がってない」
「ああ、そうか。鈴音さんって兄弟とかいなさそうなイメージっていうか……余計なこと聞いてすいません」
「ま、いいじゃんいいじゃん! さっさと作ろうぜ」
「おっけーっす!」
そんなこんなで横で全く同じものを作ってくれる鈴音さんの作業を見様見真似で作っていく。途中、生地を寝かせたりオーブンで焼いたりしてる間に、共通の話題として結城とか狼さんの話なんてしつつ(驚くべきことに鈴音さんは狼さんのことを本気で可愛いと思っているらしい。目が腐っているとしか思えない)ケーキは完成した。
「上手くいったじゃん。巽さん、きっと喜ぶぜ」
と言いながら、早速自分で作ったケーキを食べる鈴音さん。この細身でホールケーキをペロリと軽々食べてしまうんだから驚き。
俺は使った道具類を洗って片付けながら感謝の言葉を口にした。
「まじで今日はありがとうございました。助かりました」
「いいってことよ。俺も楽しかったし、ケーキ食えるし」
「それで依頼料とかは?」
「そんなのいらねえって。かづっちゃんから金なんか取れねぇよ」
「いいんですか?」
「そんなにケチそうに見える?」
「見えないっす!」
「だろ? だから気にすんな。それにかづっちゃんには感謝もしてんだ。また困った時は呼んでくれよな」
「え? 感謝って?」
片付けが丁度終わって、鈴音さんに向き直った。そんな俺と目を合わせて、鈴音さんはニカッと笑う。
「なーいしょ!」
「気になるっすよ」
「意識させる気はねぇんだ。今まで通り、普通にしててくれたらそれでいい」
「ええ?」
「さてと、かづっちゃん。事務所まで送るから帰る準備」
「あ、はい!」
結局何のことやら分からず終い。そんでもっていつの間にやらケーキを食い終わってることに驚愕したあと、鈴音さんの快適な運転で結城組の事務所まで送ってもらった。
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