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トラック2:学校の中の自分と家の中の自分は、性格が全く違うことがある
ご当地名物は、健康フードだったりジャンクフードだったりと、綺麗に二極化する
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全国には色々な地域で、違った特徴のスタミナラーメンが提供されている。
街中華のメニューだったら、にんにくをがっつり効かせてから、チャーシューの代わりに豚バラ肉をのせたり、もしくはねぎをふんだんに使ったりすると思う。
だが、水戸市民やひたちなか市民が想像するスタミナラーメンは、野菜が豊富なあんかけ炒めをのせたラーメンだ。
全国津々浦々で知れ渡っているのも、また別の旨さがあるに違いないし、街中華で提供されるエネルギッシュなのも、さぞ美味しいはず。
そんな中でも茨城のスタミナラーメンの魅力は、圧倒的な栄養価の高さにあると、県民を代表して声高に叫びたい。
具材は、にら・キャベツ・かぼちゃ・にんじん・レバーの五種類。店によっては、レバーの代わりにもつだったり、コーンが盛り付けてたりする。
にらのアリシンと、レバーのビタミンB1で疲労回復効果に、キャベツとにんじん、かぼちゃという食物繊維・βカロテンのコンビで便秘改善に効果覿面だ。
是非、全国の栄養士さんには、県民が愛すスタミナラーメンを学校給食に活かして頂きたい。
「スタミナ冷やし三玉三つお待たせしました!」
威勢の良い店員の声により、俺達の注文したスタミナラーメン(冷やし)が運ばれてきた。
冷やしと言っても、冷たい状態で運ばれてくるわけではなく、麺を水で冷やしてしめて、熱々のあんかけを被せる。
その温度感が逆に美味しさを引き立てくれる。
「来た来た」
「待ってた待ってた」
「全く、うちのわんぱく小僧はほんと食いしん坊だな」
「何暉信お前俯瞰したように言ってんだよ。好物なんだろ、涎垂れてるぞ」
「え、まじ!?」
そう暉信が慌てて口元を拭ったが、手の甲には何も糸を引いていない。
「よっしー、嘘ついたのか」
横目で睨んできた暉信に、俺はけらけら笑った。
「|談笑良いから早く食おうぜ」
博人《ひろと》が横から入った。
三つとも、中太面に覆いかぶさったあんかけは、まるで黄金のように燦然と輝く。
皆が一斉に最初の一口目をすする。
暉信に至っては、麺を一口一口噛みしめている。
「スタミナラーメンといったら、冷やしだよな」
「「ふぉうだな」」
博人も暉信もそれなと言わんばかりに、頬張りながら激しく頷く。
ピリ辛に仕上げたあんかけに、にらとキャベツのシャキシャキ感が食欲を掻き立て、かぼちゃの甘味がアクセントになり、レバーの独特な食感が満足感を与えてくれる。
俺達三人は、目の前の至極の一杯を食べることに夢中になっていた。
麺三玉は、俺達男子学生にとっては造作もない量。
白くて大きな丼ぶりにどっかり盛られた黄金の麺は、腹を空かした高校生の貪欲によってあっという間に平らげた。
食事も済ませ、店の外。
肌寒い季節。空はもうすっかり暗くなっていた。
傍を通る車のヘッドライトがいちいち眩しい。
「あ、そういえば、さっきの話の続きだけどさ」と、博人が俺に話しかけた。「要は俺も力になるっていうことだ」
そう答えた博人は、俺から目を合わそうとはしなかった。
「本当か!?」
加担してくれることは予想してないといえば嘘になるが、それでも俺は驚くあまり、大きな声で反応してしまった。
「当たり前じゃん。俺は紗彩ちゃんに一目惚れした身なんだぞ」
自分のことを親指で指して、フンスと鼻息荒く吹く博人。彼の頬は、若干赤く染まっていた。
「そこ、自慢げに言うとこなの?」俺は思わず目を細めてそう返したが、紗彩のことを心から心配している人がいるのは、頼もしいことこの上ない。「助かるよ、博人」
そう言い、俺は一目惚れという中々に純情な心をお持ちの親友に感謝した。
博人は、自分の鼻を擦りながら、
「良いってことよ」
と、どこか気恥ずかしそうにしていた。
「あの、盛り上がってるとこ悪いんだけど…」
「どうした暉信?」
横から小さくちょこんと手を挙げてきた暉信に気付き、俺は彼のほうを振り向いた。
「これ、どう見ても僕も手助けするよみたいな流れになってるんだけど……」
「暉信もやるよな?」
「いや、僕はどうしようかな…」
煮え切らない態度の暉信に、博人が「まじ?」と、ちょっと驚いた反応をしていた。
「よっしーは紗彩ちゃんと幼馴染の関係だし、博ちんも彼女には並々でない想いがある。でも僕は、二人と違って何かしらの特別な感情があるわけでもないし、ましてや接点も無い」
そのとおりだった。
俺と暉信は同じ中学出身じゃない。
偶々同じ高校で知り合い、偶々同じ部活で知り合ったというだけの友人関係。
逆に、俺と紗彩とは、高校に入学した境に、日に日に関わりが無くなっていった。
暉信の中で紗彩という存在は、俺と会話した中でしか知らない、知るわけがない。
お互い出会ったことのない赤の他人同士だというのに、そんな人に、助けたいと思う動機なんて見つかるだろうか。
「わかった」暉信の言わんとしていることを受け止め、そう俺は返答した。「別に強制はしてないから。答えをくれただけでもありがたい」
あまり波風を立てないよう、この話は一旦終わらせるとしよう。
だが、
「おい」
まだ諦めていない人が、いた。
街中華のメニューだったら、にんにくをがっつり効かせてから、チャーシューの代わりに豚バラ肉をのせたり、もしくはねぎをふんだんに使ったりすると思う。
だが、水戸市民やひたちなか市民が想像するスタミナラーメンは、野菜が豊富なあんかけ炒めをのせたラーメンだ。
全国津々浦々で知れ渡っているのも、また別の旨さがあるに違いないし、街中華で提供されるエネルギッシュなのも、さぞ美味しいはず。
そんな中でも茨城のスタミナラーメンの魅力は、圧倒的な栄養価の高さにあると、県民を代表して声高に叫びたい。
具材は、にら・キャベツ・かぼちゃ・にんじん・レバーの五種類。店によっては、レバーの代わりにもつだったり、コーンが盛り付けてたりする。
にらのアリシンと、レバーのビタミンB1で疲労回復効果に、キャベツとにんじん、かぼちゃという食物繊維・βカロテンのコンビで便秘改善に効果覿面だ。
是非、全国の栄養士さんには、県民が愛すスタミナラーメンを学校給食に活かして頂きたい。
「スタミナ冷やし三玉三つお待たせしました!」
威勢の良い店員の声により、俺達の注文したスタミナラーメン(冷やし)が運ばれてきた。
冷やしと言っても、冷たい状態で運ばれてくるわけではなく、麺を水で冷やしてしめて、熱々のあんかけを被せる。
その温度感が逆に美味しさを引き立てくれる。
「来た来た」
「待ってた待ってた」
「全く、うちのわんぱく小僧はほんと食いしん坊だな」
「何暉信お前俯瞰したように言ってんだよ。好物なんだろ、涎垂れてるぞ」
「え、まじ!?」
そう暉信が慌てて口元を拭ったが、手の甲には何も糸を引いていない。
「よっしー、嘘ついたのか」
横目で睨んできた暉信に、俺はけらけら笑った。
「|談笑良いから早く食おうぜ」
博人《ひろと》が横から入った。
三つとも、中太面に覆いかぶさったあんかけは、まるで黄金のように燦然と輝く。
皆が一斉に最初の一口目をすする。
暉信に至っては、麺を一口一口噛みしめている。
「スタミナラーメンといったら、冷やしだよな」
「「ふぉうだな」」
博人も暉信もそれなと言わんばかりに、頬張りながら激しく頷く。
ピリ辛に仕上げたあんかけに、にらとキャベツのシャキシャキ感が食欲を掻き立て、かぼちゃの甘味がアクセントになり、レバーの独特な食感が満足感を与えてくれる。
俺達三人は、目の前の至極の一杯を食べることに夢中になっていた。
麺三玉は、俺達男子学生にとっては造作もない量。
白くて大きな丼ぶりにどっかり盛られた黄金の麺は、腹を空かした高校生の貪欲によってあっという間に平らげた。
食事も済ませ、店の外。
肌寒い季節。空はもうすっかり暗くなっていた。
傍を通る車のヘッドライトがいちいち眩しい。
「あ、そういえば、さっきの話の続きだけどさ」と、博人が俺に話しかけた。「要は俺も力になるっていうことだ」
そう答えた博人は、俺から目を合わそうとはしなかった。
「本当か!?」
加担してくれることは予想してないといえば嘘になるが、それでも俺は驚くあまり、大きな声で反応してしまった。
「当たり前じゃん。俺は紗彩ちゃんに一目惚れした身なんだぞ」
自分のことを親指で指して、フンスと鼻息荒く吹く博人。彼の頬は、若干赤く染まっていた。
「そこ、自慢げに言うとこなの?」俺は思わず目を細めてそう返したが、紗彩のことを心から心配している人がいるのは、頼もしいことこの上ない。「助かるよ、博人」
そう言い、俺は一目惚れという中々に純情な心をお持ちの親友に感謝した。
博人は、自分の鼻を擦りながら、
「良いってことよ」
と、どこか気恥ずかしそうにしていた。
「あの、盛り上がってるとこ悪いんだけど…」
「どうした暉信?」
横から小さくちょこんと手を挙げてきた暉信に気付き、俺は彼のほうを振り向いた。
「これ、どう見ても僕も手助けするよみたいな流れになってるんだけど……」
「暉信もやるよな?」
「いや、僕はどうしようかな…」
煮え切らない態度の暉信に、博人が「まじ?」と、ちょっと驚いた反応をしていた。
「よっしーは紗彩ちゃんと幼馴染の関係だし、博ちんも彼女には並々でない想いがある。でも僕は、二人と違って何かしらの特別な感情があるわけでもないし、ましてや接点も無い」
そのとおりだった。
俺と暉信は同じ中学出身じゃない。
偶々同じ高校で知り合い、偶々同じ部活で知り合ったというだけの友人関係。
逆に、俺と紗彩とは、高校に入学した境に、日に日に関わりが無くなっていった。
暉信の中で紗彩という存在は、俺と会話した中でしか知らない、知るわけがない。
お互い出会ったことのない赤の他人同士だというのに、そんな人に、助けたいと思う動機なんて見つかるだろうか。
「わかった」暉信の言わんとしていることを受け止め、そう俺は返答した。「別に強制はしてないから。答えをくれただけでもありがたい」
あまり波風を立てないよう、この話は一旦終わらせるとしよう。
だが、
「おい」
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