633 / 794
日ノ本未だ一統ならず-北条と東北。明とスペイン、欧州情勢。-
第632話 『開戦か交渉か』織田と同盟国と北条と(1577/8/16)
しおりを挟む
天正六年閏七月二十五日(1577/8/16) 諫早城 <純正>
転生して15年。ようやくなんとか平和になってきたと思ったのに、上杉に北条、そしてまたスペインって。なんでみんな、戦争しに出るかなあ。
攻められないようにするために、国を強くして攻める、というのは理屈として分かる。わからなくも、ない。
俺だって、今もそうだけど、必死だった。
最初は百石か二百石レベルの土豪も土豪、超無名の西の海賊なんだもん。同盟相手の小佐々家はあったけど、必死だったよ。針尾氏を滅ぼし、松浦氏を滅ぼした。
その間に小佐々宗家を継いで沢森姓から小佐々姓に変わっている。
これ、針尾も松浦も、何度も向こうに攻められたからだからね。
誰が血なまぐさい戦争なんてやりたいもんか。
のんびりゆるニートでありたかったんだよ、俺は。でも時代が……って言えばかっこいいかも知らんけど、周りがそうさせてくんなかったんだよ。
最初に書いたけど、やらなきゃやられる、そんなんなんだよ。現代の常識なんて通用しない。
『暴力は止めよう。話せば分かる』
わかんねえじゃねえか!
大村・有馬とは同盟を結びつつも、友好関係を結べる勢力とは積極的に結んだ。波佐見衆しかり、志佐しかり。龍造寺に有馬・大村連合軍が負けてからは、状況が変わった。
敵対関係にあった深堀を攻めて降し、有馬と大村を屠った。あまりにも無理難題を言ってくるもんだから、いい加減に袂を分かったんだ。
その後は龍造寺だった。
大きくなれば間違いなくぶつかると思って、多久の後藤氏の親子げんかを利用して味方に組み入れた。もっと大きな大友氏とは友好関係を保ったままだ。
龍造寺にしても、こっちからは攻めていない。向こうからだ、その後、大友も、島津も、全部あっちからだ。
四国攻めも中国平定も同じ。毛利は同盟関係にあったけど、背信行為が明らかになったから、一戦を交える覚悟で外交によって服属させた。
全部そうなんだよ。自己中な理屈かもしれないけど、脅威を外交によって排除しようとして、できないから戦ってきたんだ。だから今、スペインとの戦争も、本当はやりたくない。
やったら少なからず人が死ぬ。幸いにして葛の峠の戦いで親戚を3人失ってからは、親しい人は死んでいない。これはもう奇跡というか僥倖だ。
でも腐れ縁の勝行は片眼と片腕を失った。
できればやりたくないんだよ。でも、やらないとやられるのは、残念だけど今も15年前も変わらない。変わったのは、やられにくくなった、という事実だけ。
台湾では被害にあったけど、お互いに理解を深めて今は協力関係にある。上杉にしても外交交渉をした。北条は成功したけど、スペインは警告したにもかかわらず攻めてきた。
勝ちはしたけど終戦、というか宣戦布告がないから戦争じゃないのか? まあそんな事はおいといても、停戦もしてない。
言ってみれば戦争状態が続いているようなもん。
すぐにビサヤに攻め入らなかったのは被害が大きかったから。それから島津も含めた国内事情もあったんだ。その後は同盟勢力の拡大と上杉戦。
十分に国力は回復したけど、まだ完全じゃない。
スペインは欧州戦線で全戦力をアジアに向けられないとしても、国内に十分な兵力を残した上で、万全の状態でフィリピンのスペイン勢力と当たりたいと考えていた。
俺の基本姿勢は専守防衛じゃなくて先守防衛。しかもスペインには戦う意思がない事を告げて、攻めてくるなら戦うと警告もした。その上で攻めてきたんだ。
もう先守の段階は終わった。
そして、5~7年後のつもりが早くなっただけだ。
■対スペイン会議
「織田、にござるか?」
義久の質問に宗麟が質問で応えた。
「さよう。こたびの戦は外へ向けての戦にござる。わが小佐々家中が盟主となっておる大同盟において、合議が要るのはご存じでしょう。日ノ本での戦ではないゆえ、是非は問われなかった。なれど同盟の大名の助力を仰ぐかどうか、という事にござる」
義久は純正と宗麟、両方を見ながら言う。
「要らぬのではありませぬか」
小佐々の中にあって、一つの国とも言える大国の国主、毛利輝元である。スペインとの戦争になり、国内が混乱してくれば、真っ先に独立を画策するかもしれないほどの国力である。
その大きさから、直茂などは未だに毛利転封減封論者であった。
「御屋形様がお話しの通り、陸海軍を主にして攻める戦にござろう? ここで日ノ本の外、いわば内輪の戦に織田家の勢をかり出すなど、体裁が悪うござらぬか?」
ううむ……確かにそうだ、といわんばかりのざわつきが起こる。長宗我部元親が発言する。
「いやいや、それこそ良いのではありませぬか? 織田は我が軍に倣って、水軍の備えを強めておると聞き及んでおります。旧式となっても大砲を備えた船にござれば、露払いほどには使えましょう」
宮内少輔どの、と輝元が制するも、なおも元親は続けた。
「露払いとは失礼いたしました。されど参戦して軍功あれば、さきの商いでしたかな、諍いが起こっていると聞きおよびましたが、五年ほど猶予を与えてもよろしいかと存じます」
「ふむ」
「されば織田方も、無碍に断る事もないでしょう。織田にも小佐々にも、利のある話かと存じます。もしくは北条の海からの備えに織田水軍を用いるのもよいかと存じます」
「それは難しかろう。織田水軍では北条水軍と五分の戦いはできぬ」
純正は元親に答えた。正確な情報はまだだが、北条の海軍が北方艦隊の報告の通り10隻で、砲門数も同じものが10隻なら、織田水軍に勝ち目はない。
「ただ、宮内少輔の言う事ももっともである。織田との軋轢は、できればないに越したことはない。外務省は参戦を要請することを前提に条件をつめよ」
「はは」
次回 第633話 『開戦か交渉か』主戦論と非戦論
転生して15年。ようやくなんとか平和になってきたと思ったのに、上杉に北条、そしてまたスペインって。なんでみんな、戦争しに出るかなあ。
攻められないようにするために、国を強くして攻める、というのは理屈として分かる。わからなくも、ない。
俺だって、今もそうだけど、必死だった。
最初は百石か二百石レベルの土豪も土豪、超無名の西の海賊なんだもん。同盟相手の小佐々家はあったけど、必死だったよ。針尾氏を滅ぼし、松浦氏を滅ぼした。
その間に小佐々宗家を継いで沢森姓から小佐々姓に変わっている。
これ、針尾も松浦も、何度も向こうに攻められたからだからね。
誰が血なまぐさい戦争なんてやりたいもんか。
のんびりゆるニートでありたかったんだよ、俺は。でも時代が……って言えばかっこいいかも知らんけど、周りがそうさせてくんなかったんだよ。
最初に書いたけど、やらなきゃやられる、そんなんなんだよ。現代の常識なんて通用しない。
『暴力は止めよう。話せば分かる』
わかんねえじゃねえか!
大村・有馬とは同盟を結びつつも、友好関係を結べる勢力とは積極的に結んだ。波佐見衆しかり、志佐しかり。龍造寺に有馬・大村連合軍が負けてからは、状況が変わった。
敵対関係にあった深堀を攻めて降し、有馬と大村を屠った。あまりにも無理難題を言ってくるもんだから、いい加減に袂を分かったんだ。
その後は龍造寺だった。
大きくなれば間違いなくぶつかると思って、多久の後藤氏の親子げんかを利用して味方に組み入れた。もっと大きな大友氏とは友好関係を保ったままだ。
龍造寺にしても、こっちからは攻めていない。向こうからだ、その後、大友も、島津も、全部あっちからだ。
四国攻めも中国平定も同じ。毛利は同盟関係にあったけど、背信行為が明らかになったから、一戦を交える覚悟で外交によって服属させた。
全部そうなんだよ。自己中な理屈かもしれないけど、脅威を外交によって排除しようとして、できないから戦ってきたんだ。だから今、スペインとの戦争も、本当はやりたくない。
やったら少なからず人が死ぬ。幸いにして葛の峠の戦いで親戚を3人失ってからは、親しい人は死んでいない。これはもう奇跡というか僥倖だ。
でも腐れ縁の勝行は片眼と片腕を失った。
できればやりたくないんだよ。でも、やらないとやられるのは、残念だけど今も15年前も変わらない。変わったのは、やられにくくなった、という事実だけ。
台湾では被害にあったけど、お互いに理解を深めて今は協力関係にある。上杉にしても外交交渉をした。北条は成功したけど、スペインは警告したにもかかわらず攻めてきた。
勝ちはしたけど終戦、というか宣戦布告がないから戦争じゃないのか? まあそんな事はおいといても、停戦もしてない。
言ってみれば戦争状態が続いているようなもん。
すぐにビサヤに攻め入らなかったのは被害が大きかったから。それから島津も含めた国内事情もあったんだ。その後は同盟勢力の拡大と上杉戦。
十分に国力は回復したけど、まだ完全じゃない。
スペインは欧州戦線で全戦力をアジアに向けられないとしても、国内に十分な兵力を残した上で、万全の状態でフィリピンのスペイン勢力と当たりたいと考えていた。
俺の基本姿勢は専守防衛じゃなくて先守防衛。しかもスペインには戦う意思がない事を告げて、攻めてくるなら戦うと警告もした。その上で攻めてきたんだ。
もう先守の段階は終わった。
そして、5~7年後のつもりが早くなっただけだ。
■対スペイン会議
「織田、にござるか?」
義久の質問に宗麟が質問で応えた。
「さよう。こたびの戦は外へ向けての戦にござる。わが小佐々家中が盟主となっておる大同盟において、合議が要るのはご存じでしょう。日ノ本での戦ではないゆえ、是非は問われなかった。なれど同盟の大名の助力を仰ぐかどうか、という事にござる」
義久は純正と宗麟、両方を見ながら言う。
「要らぬのではありませぬか」
小佐々の中にあって、一つの国とも言える大国の国主、毛利輝元である。スペインとの戦争になり、国内が混乱してくれば、真っ先に独立を画策するかもしれないほどの国力である。
その大きさから、直茂などは未だに毛利転封減封論者であった。
「御屋形様がお話しの通り、陸海軍を主にして攻める戦にござろう? ここで日ノ本の外、いわば内輪の戦に織田家の勢をかり出すなど、体裁が悪うござらぬか?」
ううむ……確かにそうだ、といわんばかりのざわつきが起こる。長宗我部元親が発言する。
「いやいや、それこそ良いのではありませぬか? 織田は我が軍に倣って、水軍の備えを強めておると聞き及んでおります。旧式となっても大砲を備えた船にござれば、露払いほどには使えましょう」
宮内少輔どの、と輝元が制するも、なおも元親は続けた。
「露払いとは失礼いたしました。されど参戦して軍功あれば、さきの商いでしたかな、諍いが起こっていると聞きおよびましたが、五年ほど猶予を与えてもよろしいかと存じます」
「ふむ」
「されば織田方も、無碍に断る事もないでしょう。織田にも小佐々にも、利のある話かと存じます。もしくは北条の海からの備えに織田水軍を用いるのもよいかと存じます」
「それは難しかろう。織田水軍では北条水軍と五分の戦いはできぬ」
純正は元親に答えた。正確な情報はまだだが、北条の海軍が北方艦隊の報告の通り10隻で、砲門数も同じものが10隻なら、織田水軍に勝ち目はない。
「ただ、宮内少輔の言う事ももっともである。織田との軋轢は、できればないに越したことはない。外務省は参戦を要請することを前提に条件をつめよ」
「はは」
次回 第633話 『開戦か交渉か』主戦論と非戦論
3
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
『転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』
姜維信繁
ファンタジー
佐賀藩より早く蒸気船に蒸気機関車、アームストロング砲。列強に勝つ!
人生100年時代の折り返し地点に来た企画営業部長の清水亨は、大きなプロジェクトをやり遂げて、久しぶりに長崎の実家に帰ってきた。
学生時代の仲間とどんちゃん騒ぎのあげく、急性アルコール中毒で死んでしまう。
しかし、目が覚めたら幕末の動乱期。龍馬や西郷や桂や高杉……と思いつつ。あまり幕末史でも知名度のない「薩長土肥」の『肥』のさらに隣の藩の大村藩のお話。
で、誰に転生したかと言うと、これまた誰も知らない、地元の人もおそらく知らない人の末裔として。
なーんにもしなければ、間違いなく幕末の動乱に巻き込まれ、戊辰戦争マッシグラ。それを回避して西洋列強にまけない国(藩)づくりに励む事になるのだが……。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる