547 / 794
西国王小佐々純正と第三勢力-対上杉謙信 奥州東国をも巻き込む-
第547話 『晴天の霹靂 越前での一揆と書状。純正、謙信に敗れけり?』
しおりを挟む
天正元年 四月二日 京都 大使館
純正の顔はいつになく険しい。対上杉戦に舵をきったものの、いったいどれくらいの期間戦が続くのか?
早く終わるに越した事はない。
もちろん、本当は長期戦というよりも経済戦で徐々に謙信を締め付け、撤退させる事が目的であった。
上杉領への禁輸を実施しても、小佐々領には影響がない。
上杉領から物が入らなくても、いっこうに困らない。
しかし、経済制裁は効果が出るのに時間がかかる。
その間に越中は戦乱に巻き込まれるし、一向宗は正直好きにはなれないものの、それでも戦で一般人が死ぬのは避けたかった。
謙信は退かない。
ならば一戦交えて手痛い打撃を与えて、退かせるしかない。
そう純正は決断したのだが、やはり謙信がどこまで考えて行動しているのか? それが不安だったのだ。
まさか、負ける事は、ない、よな?
「少し、休みますか?」
目の前にいる純久が、書類に目を通すのを一旦止めて、純正に声をかける。
「あ、うん、そうだな」
純久が近習にその旨を伝え、珈琲が運ばれ茶菓子をほおばる。純正は国許から送られてくる決裁書類に目を通し、最終決裁をする作業を連日行っていたのだ。
「大使! 大使! 大変です! ……これは御屋形様! 失礼いたしました!」
「よい、いかがした」
純久が純正を一瞥して近習に聞く。
「は、一揆にございます!」
「なに? 一揆じゃと?」
一揆だと? あり得ん! いや、薩摩か? 土佐か? 肥前か? 筑前と豊前か? しかし、そのどこからも苦情もなければ陳情もない。
一揆が起こる兆候などなかったぞ!
その思いが一瞬にして純正の頭を巡った。
「どこだ? いずこで一揆が起きたのだ?」
「はい、それが……越前にございます」
「な、越前? 越前か……」
言うまでもなく、越前は小佐々の領地ではない。信長が二月に平定し、朝倉の旧臣が治めていた。
「越前ならば、まあ、良いことではないが、わが所領ではない。なに故そのように慌てておるのだ?」
「それが、その一揆勢が、三国湊のわれら小佐々の荷船を襲っているのです。無論わが小佐々のみではなく、織田や浅井の荷船も襲われてはおりますが、小佐々の荷船が一番多うございます」
「左様か……然れど織田の所領ゆえ、直に手を下すことは出来ぬな。叔父上、いかがいたそうか?」
「は、まずはよく事の様を改め(状況をしらべ)、兵部卿様(信長)にも知らせるべきかと存じます」
「うむ、では早速そうするといたそう」
信長の領国内での一揆、それによる自国の商船の被害。由々しき事ではあるが、収拾できない事ではない。
天正元年 四月二日 午三つ刻(1200) 庄川西岸(二塚村) 道雪本陣
「どうじゃ? 渡れそうか?」
道雪は渡河の準備を始めるとともに、狙撃の可能性を考えて鉄砲隊と弓隊を配置していた。
「深い所ですと肩まで、浅い所でも膝まではあります!」
「なんとか渡れる、太刀を濡らさずに渡れぬだろうか?」
「そうなりますと、鉄砲は無論のこと、大刀は肩の上まで持ち上げて渡るより他ありませぬ。土地の者を集めて聞いておりますが、安堵して渡るには、しばし刻が要るかと存じます」
中途半端な深さであった。
もう少し深ければ船を用意しただろうが、なまじ歩いて渡れる瀬があるために用意していない。
やはり当初の作戦通りに本陣は動かず、全体を見て必要にあわせて後詰めを送る他ないようである。
「申し上げます! 島津軍、一進一退の模様」
「うむ」
「申し上げます! 三好軍、立て直しを図り、再び渡河を始めております!」
「うむ」
次々に報告が入ってくる。
■庄川西岸(枇杷首村) 三好本陣
「殿、先陣の先駆けは渡り終わり、陣を作り始めてございます」
「うむ、敵の事の様(様子)はいかがじゃ?」
「は、はじめは鉄砲弓矢を激しく射かけて抗っておりましたが、やがて我らが渡りきると、諦めて奥の本陣に退いていきましてございます」
「うむ、こちらの失(被害)はいかほどか?」
「は、数十にございますが、軽い傷にございます」
「そうか、では引き続き渡河を進めるとしよう。謙信の本陣は如何じゃ?」
「は、川岸よりさらに東へ五、六町(5~600m)離れて陣を張っております。動く気配はございませぬ」
「ふむ、正面の我らを意に介せず、何を巧むか(企む)……いかが思う?」
長治は軍監の小西隆佐に尋ねる。
「然うですな……。敵が我らが川を渡りたる砌(時)に掛かりたる(攻めてくる)は、あるいは、と考えておりました。されどここで何もなきは、いささか不気味にございますな」
「あえて川を渡らせていると?」
「左様、古来より川を前にして、渡りたる敵に掛かる(攻撃する)というのが兵法の定石なれば、謙信の意趣(意図)が分かりませぬ」
「ふむ……」
「とてもかくても(いずれにしても)、敵の動きに心おき(注意し)ながら、全て渡り終わるのを待ちましょう」
「そういたそう」
■能登 七尾城 遊佐続光(意訳あり)
文を遣るのは久しき事に候へども、能登の静謐と美作守殿との友誼は片時も忘らず候。
我の思ひは届かず修理大夫殿御出陣の由、誠に恨めしき仕儀に候。
おそらくはお家のため、能登のために我に与するかまた小佐々に与するかを考えけりと存じ候。
然れども我らの勢、ただいま庄川の東にて相見えるも、四倍の敵に対していささかも劣らざり候。
加えて小佐々の船手衆、兵船もろとも打ち破りけり候。此頃は遠き出羽の湊に流れ着きたるもや候。
七日や十日、けだし一月以上は如何様にも動けじ候。
敵を屠りけりわが船手、明日明後日にも兵船数百を以て七尾の湊に掛からん候。
誼を通わしき美作守殿故、先に申し伝え候。恐々謹言。
四月二日 謙信 花押
遊佐美作守殿
(※意訳※)
手紙を出すのは久しぶりだけど、能登の平和と美作守殿との友情は片時も忘れた事はありません。
渡しの願いは届かずに、修理大夫殿が御出陣なさった事は残念です。
恐らくは家と能登の将来のために、上杉につくか小佐々につくかを悩んだ事でしょう。
ですが我らの軍勢は四倍の敵に対して全く劣勢ではありません。
それに加えて小佐々の水軍を撃破しました。今ごろは遠い出羽の湊に流れ着いたかもしれません。
七日から十日、もしかすると一ヶ月は確実に動けません。
敵を破ったうちの水軍が、明日か明後日にでも数百隻の兵船で七尾の港に攻め入ります。
親交のあった美作守殿ですから、先にお知らせしました。恐々謹言。
四月二日 謙信 花押
遊佐美作守殿
「……」
■摂津 石山本願寺(意訳あり)
未だ申し入れず候と言へども、是を以てこれまでの諍いを収め、我らと門徒の争いをなくしたく存じ候。
抑(そもそも)、わが越後には浄土真宗の寺数多あり、郎等(家臣)の多くは門徒に候。
然れども、越後守護代の役目なれば、図らずも越中の守護代の求めに応ぜざるを得ざりけり候。
我が祖父の砌(頃)よりの宿縁(因縁)なれど、誰が好んで軍を起こしましょう哉。
此度の軍においても、神保越中守(神保長住)の求め故、致し方なく軍旅を率いて越中に入らん候。
加えて、我が負くる事は万に一つも無きことと存じ候へども、その万に一つが起きた後は如何相成るかと案じたり候。
織田は越前を治し、その勢いたるや加賀にも届かんと存じ候。
その織田と盟を結びし小佐々と争う事にならんと存じ候へども、小佐々と結びたりとて織田との争いは避けらじと存じ候。
幾月かの後、必ずや加賀の地を奪わんと北に勢を向かわせるは必定かと存じ候。
我は公方様の御内書によりて、上洛への道を作らんがために働きたり候。
我の思いが叶ひし後には、加賀越中の門徒達を疎かにせぬ事をお約束いたし候。
何卒御仏の道に沿いて、我と共に歩まれん事を、切に願い候。恐惶謹言。
(※意訳※)
まだ書面のやりとりをした事はありませんが、この書面をもって、今までの争いを終わりにしたいと考えています。
そもそも、我が越後には浄土真宗の寺がたくさんあり、家臣の中にも信徒が多数います。
ですが、越後の守護代という立場上、越中の守護代の要請には応じざるをえませんでした。
祖父の代からの因縁ですが、好き好んで戦う人などいません。
今回の戦争も神保越中守の要請で、仕方なく軍勢を率いて越中に入るのです。
加えて、私が負ける事は万に一つもありませんが、万が一負けた場合は、その後どうなるでしょうか?
織田は越前を領し、その勢いは加賀にまで及んでいます。
その織田と同盟を結んでいる小佐々と戦う事になったのですが、小佐々と誼を結んでも、織田との戦いは避けられません。
数ヶ月後には、必ず加賀に出兵するのは間違いありません。
私は公方様の御内書により、上洛するために動いています。私の願いが叶ったときには、加賀と越中の門徒達をないがしろにしないことを約束します。
何とぞ御仏の道に沿って、私と共に歩んでいただけることを、切に願っています。恐惶謹言。
三月十九日 謙信 花押
本願寺門主 顕如 殿
「……なんと、これは……ぐ……」
■第三師団、陸路にて北信濃の平倉城へ。4/5着の予定。
■第二師団、吉城郡塩屋城下。
■第四艦隊、出羽田川郡鼠ヶ関港。
■上杉軍城生城別働隊、喜右衛門。行軍中。
■杉浦玄任、庄川西岸小牧村。渡河開始。
■島津(伊東)軍、上杉軍の右翼と交戦。上杉軍からの包囲を避けるために後退。乱戦。
■島津(肝付)軍、吉久新村にて放生津兵と戦闘。
■島津本軍、庄川西岸にて渡河準備。先陣は渡河後、上杉軍の左翼(前先陣の右翼)と交戦中。
■三好軍、庄川西岸枇杷首村より再び渡河開始。
■立花軍、二塚村。渡河を諦め待機中。
■一条軍、大田村。渡河の準備。
■龍造寺軍、青島村。渡河の準備。
■謙信、庄川東岸、大門新村に布陣、右翼、伊東軍と交戦。
■(秘)○上中
■放生津城の伏兵二千、伊東軍を包囲殲滅するため、後方より襲撃。伊東、肝付、島津軍と乱戦。
■(秘)○○行軍中
純正の顔はいつになく険しい。対上杉戦に舵をきったものの、いったいどれくらいの期間戦が続くのか?
早く終わるに越した事はない。
もちろん、本当は長期戦というよりも経済戦で徐々に謙信を締め付け、撤退させる事が目的であった。
上杉領への禁輸を実施しても、小佐々領には影響がない。
上杉領から物が入らなくても、いっこうに困らない。
しかし、経済制裁は効果が出るのに時間がかかる。
その間に越中は戦乱に巻き込まれるし、一向宗は正直好きにはなれないものの、それでも戦で一般人が死ぬのは避けたかった。
謙信は退かない。
ならば一戦交えて手痛い打撃を与えて、退かせるしかない。
そう純正は決断したのだが、やはり謙信がどこまで考えて行動しているのか? それが不安だったのだ。
まさか、負ける事は、ない、よな?
「少し、休みますか?」
目の前にいる純久が、書類に目を通すのを一旦止めて、純正に声をかける。
「あ、うん、そうだな」
純久が近習にその旨を伝え、珈琲が運ばれ茶菓子をほおばる。純正は国許から送られてくる決裁書類に目を通し、最終決裁をする作業を連日行っていたのだ。
「大使! 大使! 大変です! ……これは御屋形様! 失礼いたしました!」
「よい、いかがした」
純久が純正を一瞥して近習に聞く。
「は、一揆にございます!」
「なに? 一揆じゃと?」
一揆だと? あり得ん! いや、薩摩か? 土佐か? 肥前か? 筑前と豊前か? しかし、そのどこからも苦情もなければ陳情もない。
一揆が起こる兆候などなかったぞ!
その思いが一瞬にして純正の頭を巡った。
「どこだ? いずこで一揆が起きたのだ?」
「はい、それが……越前にございます」
「な、越前? 越前か……」
言うまでもなく、越前は小佐々の領地ではない。信長が二月に平定し、朝倉の旧臣が治めていた。
「越前ならば、まあ、良いことではないが、わが所領ではない。なに故そのように慌てておるのだ?」
「それが、その一揆勢が、三国湊のわれら小佐々の荷船を襲っているのです。無論わが小佐々のみではなく、織田や浅井の荷船も襲われてはおりますが、小佐々の荷船が一番多うございます」
「左様か……然れど織田の所領ゆえ、直に手を下すことは出来ぬな。叔父上、いかがいたそうか?」
「は、まずはよく事の様を改め(状況をしらべ)、兵部卿様(信長)にも知らせるべきかと存じます」
「うむ、では早速そうするといたそう」
信長の領国内での一揆、それによる自国の商船の被害。由々しき事ではあるが、収拾できない事ではない。
天正元年 四月二日 午三つ刻(1200) 庄川西岸(二塚村) 道雪本陣
「どうじゃ? 渡れそうか?」
道雪は渡河の準備を始めるとともに、狙撃の可能性を考えて鉄砲隊と弓隊を配置していた。
「深い所ですと肩まで、浅い所でも膝まではあります!」
「なんとか渡れる、太刀を濡らさずに渡れぬだろうか?」
「そうなりますと、鉄砲は無論のこと、大刀は肩の上まで持ち上げて渡るより他ありませぬ。土地の者を集めて聞いておりますが、安堵して渡るには、しばし刻が要るかと存じます」
中途半端な深さであった。
もう少し深ければ船を用意しただろうが、なまじ歩いて渡れる瀬があるために用意していない。
やはり当初の作戦通りに本陣は動かず、全体を見て必要にあわせて後詰めを送る他ないようである。
「申し上げます! 島津軍、一進一退の模様」
「うむ」
「申し上げます! 三好軍、立て直しを図り、再び渡河を始めております!」
「うむ」
次々に報告が入ってくる。
■庄川西岸(枇杷首村) 三好本陣
「殿、先陣の先駆けは渡り終わり、陣を作り始めてございます」
「うむ、敵の事の様(様子)はいかがじゃ?」
「は、はじめは鉄砲弓矢を激しく射かけて抗っておりましたが、やがて我らが渡りきると、諦めて奥の本陣に退いていきましてございます」
「うむ、こちらの失(被害)はいかほどか?」
「は、数十にございますが、軽い傷にございます」
「そうか、では引き続き渡河を進めるとしよう。謙信の本陣は如何じゃ?」
「は、川岸よりさらに東へ五、六町(5~600m)離れて陣を張っております。動く気配はございませぬ」
「ふむ、正面の我らを意に介せず、何を巧むか(企む)……いかが思う?」
長治は軍監の小西隆佐に尋ねる。
「然うですな……。敵が我らが川を渡りたる砌(時)に掛かりたる(攻めてくる)は、あるいは、と考えておりました。されどここで何もなきは、いささか不気味にございますな」
「あえて川を渡らせていると?」
「左様、古来より川を前にして、渡りたる敵に掛かる(攻撃する)というのが兵法の定石なれば、謙信の意趣(意図)が分かりませぬ」
「ふむ……」
「とてもかくても(いずれにしても)、敵の動きに心おき(注意し)ながら、全て渡り終わるのを待ちましょう」
「そういたそう」
■能登 七尾城 遊佐続光(意訳あり)
文を遣るのは久しき事に候へども、能登の静謐と美作守殿との友誼は片時も忘らず候。
我の思ひは届かず修理大夫殿御出陣の由、誠に恨めしき仕儀に候。
おそらくはお家のため、能登のために我に与するかまた小佐々に与するかを考えけりと存じ候。
然れども我らの勢、ただいま庄川の東にて相見えるも、四倍の敵に対していささかも劣らざり候。
加えて小佐々の船手衆、兵船もろとも打ち破りけり候。此頃は遠き出羽の湊に流れ着きたるもや候。
七日や十日、けだし一月以上は如何様にも動けじ候。
敵を屠りけりわが船手、明日明後日にも兵船数百を以て七尾の湊に掛からん候。
誼を通わしき美作守殿故、先に申し伝え候。恐々謹言。
四月二日 謙信 花押
遊佐美作守殿
(※意訳※)
手紙を出すのは久しぶりだけど、能登の平和と美作守殿との友情は片時も忘れた事はありません。
渡しの願いは届かずに、修理大夫殿が御出陣なさった事は残念です。
恐らくは家と能登の将来のために、上杉につくか小佐々につくかを悩んだ事でしょう。
ですが我らの軍勢は四倍の敵に対して全く劣勢ではありません。
それに加えて小佐々の水軍を撃破しました。今ごろは遠い出羽の湊に流れ着いたかもしれません。
七日から十日、もしかすると一ヶ月は確実に動けません。
敵を破ったうちの水軍が、明日か明後日にでも数百隻の兵船で七尾の港に攻め入ります。
親交のあった美作守殿ですから、先にお知らせしました。恐々謹言。
四月二日 謙信 花押
遊佐美作守殿
「……」
■摂津 石山本願寺(意訳あり)
未だ申し入れず候と言へども、是を以てこれまでの諍いを収め、我らと門徒の争いをなくしたく存じ候。
抑(そもそも)、わが越後には浄土真宗の寺数多あり、郎等(家臣)の多くは門徒に候。
然れども、越後守護代の役目なれば、図らずも越中の守護代の求めに応ぜざるを得ざりけり候。
我が祖父の砌(頃)よりの宿縁(因縁)なれど、誰が好んで軍を起こしましょう哉。
此度の軍においても、神保越中守(神保長住)の求め故、致し方なく軍旅を率いて越中に入らん候。
加えて、我が負くる事は万に一つも無きことと存じ候へども、その万に一つが起きた後は如何相成るかと案じたり候。
織田は越前を治し、その勢いたるや加賀にも届かんと存じ候。
その織田と盟を結びし小佐々と争う事にならんと存じ候へども、小佐々と結びたりとて織田との争いは避けらじと存じ候。
幾月かの後、必ずや加賀の地を奪わんと北に勢を向かわせるは必定かと存じ候。
我は公方様の御内書によりて、上洛への道を作らんがために働きたり候。
我の思いが叶ひし後には、加賀越中の門徒達を疎かにせぬ事をお約束いたし候。
何卒御仏の道に沿いて、我と共に歩まれん事を、切に願い候。恐惶謹言。
(※意訳※)
まだ書面のやりとりをした事はありませんが、この書面をもって、今までの争いを終わりにしたいと考えています。
そもそも、我が越後には浄土真宗の寺がたくさんあり、家臣の中にも信徒が多数います。
ですが、越後の守護代という立場上、越中の守護代の要請には応じざるをえませんでした。
祖父の代からの因縁ですが、好き好んで戦う人などいません。
今回の戦争も神保越中守の要請で、仕方なく軍勢を率いて越中に入るのです。
加えて、私が負ける事は万に一つもありませんが、万が一負けた場合は、その後どうなるでしょうか?
織田は越前を領し、その勢いは加賀にまで及んでいます。
その織田と同盟を結んでいる小佐々と戦う事になったのですが、小佐々と誼を結んでも、織田との戦いは避けられません。
数ヶ月後には、必ず加賀に出兵するのは間違いありません。
私は公方様の御内書により、上洛するために動いています。私の願いが叶ったときには、加賀と越中の門徒達をないがしろにしないことを約束します。
何とぞ御仏の道に沿って、私と共に歩んでいただけることを、切に願っています。恐惶謹言。
三月十九日 謙信 花押
本願寺門主 顕如 殿
「……なんと、これは……ぐ……」
■第三師団、陸路にて北信濃の平倉城へ。4/5着の予定。
■第二師団、吉城郡塩屋城下。
■第四艦隊、出羽田川郡鼠ヶ関港。
■上杉軍城生城別働隊、喜右衛門。行軍中。
■杉浦玄任、庄川西岸小牧村。渡河開始。
■島津(伊東)軍、上杉軍の右翼と交戦。上杉軍からの包囲を避けるために後退。乱戦。
■島津(肝付)軍、吉久新村にて放生津兵と戦闘。
■島津本軍、庄川西岸にて渡河準備。先陣は渡河後、上杉軍の左翼(前先陣の右翼)と交戦中。
■三好軍、庄川西岸枇杷首村より再び渡河開始。
■立花軍、二塚村。渡河を諦め待機中。
■一条軍、大田村。渡河の準備。
■龍造寺軍、青島村。渡河の準備。
■謙信、庄川東岸、大門新村に布陣、右翼、伊東軍と交戦。
■(秘)○上中
■放生津城の伏兵二千、伊東軍を包囲殲滅するため、後方より襲撃。伊東、肝付、島津軍と乱戦。
■(秘)○○行軍中
2
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
『転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』
姜維信繁
ファンタジー
佐賀藩より早く蒸気船に蒸気機関車、アームストロング砲。列強に勝つ!
人生100年時代の折り返し地点に来た企画営業部長の清水亨は、大きなプロジェクトをやり遂げて、久しぶりに長崎の実家に帰ってきた。
学生時代の仲間とどんちゃん騒ぎのあげく、急性アルコール中毒で死んでしまう。
しかし、目が覚めたら幕末の動乱期。龍馬や西郷や桂や高杉……と思いつつ。あまり幕末史でも知名度のない「薩長土肥」の『肥』のさらに隣の藩の大村藩のお話。
で、誰に転生したかと言うと、これまた誰も知らない、地元の人もおそらく知らない人の末裔として。
なーんにもしなければ、間違いなく幕末の動乱に巻き込まれ、戊辰戦争マッシグラ。それを回避して西洋列強にまけない国(藩)づくりに励む事になるのだが……。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界国盗り物語 ~野望に燃えるエーリカは第六天魔皇になりて天下に武を布く~
ももちく
ファンタジー
天帝と教皇をトップに据えるテクロ大陸本土には4つの王国とその王国を護る4人の偉大なる魔法使いが存在した
創造主:Y.O.N.Nはこの世界のシステムの再構築を行おうとした
その過程において、テクロ大陸本土の西国にて冥皇が生まれる
冥皇の登場により、各国のパワーバランスが大きく崩れ、テクロ大陸は長い戦国時代へと入る
テクロ大陸が戦国時代に突入してから190年の月日が流れる
7つの聖痕のひとつである【暴食】を宿す剣王が若き戦士との戦いを経て、新しき世代に聖痕を譲り渡す
若き戦士は剣王の名を引き継ぎ、未だに終わりをしらない戦国乱世真っ只中のテクロ大陸へと殴り込みをかける
そこからさらに10年の月日が流れた
ホバート王国という島国のさらに辺境にあるオダーニの村から、ひとりの少女が世界に殴り込みをかけにいく
少女は|血濡れの女王《ブラッディ・エーリカ》の団を結成し、自分たちが世の中へ打って出る日を待ち続けていたのだ
その少女の名前はエーリカ=スミス
とある刀鍛冶の一人娘である
エーリカは分不相応と言われても仕方が無いほどのでっかい野望を抱いていた
エーリカの野望は『1国の主』となることであった
誰もが笑って暮らせる平和で豊かな国、そんな国を自分の手で興したいと望んでいた
エーリカは救国の士となるのか?
それとも国すら盗む大盗賊と呼ばれるようになるのか?
はたまた大帝国の祖となるのか?
エーリカは野望を成し遂げるその日まで、決して歩みを止めようとはしなかった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる