211 / 810
九州三強と中央への目-肥前王 源朝臣小佐々弾正大弼純正-
9/2 19:00 蒲池鑑盛 嵐の前の静けさ
しおりを挟む
二日目 戌一つ刻(19:00) 角牟礼城下 蒲池鑑盛
日田勢八百も合わせて到着した。角牟礼城は城主の森五郎左衛門鑑高が指揮をとり、魚返・中島・志津利氏などの玖珠郡衆が籠城している。弓矢の名手、宿利外記もいて接近戦では注意が肝要だ。
角牟礼城は高さが六町ほどの角埋山の山頂に築かれている。周りは切り立った岩山でまさに要害である。本丸は山頂北西端にあり、二の丸、三の丸が空堀と土塁、そして要所に石垣を配して畝状竪堀群と無数の曲輪で守っている。
城の東側は南北に森川が流れており、川沿いは平野になっていて集落が点在している。川幅はせまい。川の東側、玄興院と天満社に陣を構えた。城までは十三町ほどだ。本陣目の前の川は、人が通れる浅瀬になっている。
その先も平野で視界が開けているので、大軍を展開しやすい。日は沈んでいたが軍議を開く。急を要するのだ。西牟田どの、星野どの、草野どの、黒木どの等の主要な国人を集める。
「各々方、これからどの様にして城を攻めるか協議いたそう」
わしは皆の顔を見回して告げる。
「ではまずは、要害、堅城にて降伏を勧めましょう。応じずともやらねばなりませぬ」。
西牟田どのが発言する。
うむ、そうだ、といって皆がうなずく。
「期限は昼ごろでよろしいでしょう。もともと応じるとは思っておりませぬ。形だけです。そしてそれまでの間に、軍を動かしまする」。
どこに動かすのだ?皆が一様に身を乗り出す。
「そして昼までに移動を終わらせるのです。半里もありませぬゆえ、半刻もあれば移動あたうでしょう。昼に降伏がなければ大砲にて砲撃を開始いたします。反対側の山の斜面から五町ほどです。届けばよし。届かなくても、土塁石垣を壊す事はできます」。
「そうして敵の意気をくじきつつ、別働隊が城攻めを行うのです」。
「調べによれば、本丸から南東へは尾根伝いに平地が続いていて、その南側に水の手があります」。
「本丸の南側から西側の二の丸、三の丸は頑強です。まず砲撃で敵の意識を集中させ、一番弱いであろう水の手から登り、尾根伝いに平地を本丸まで駆け上がりましょう」。
西牟田殿の発言に皆が同意する。
そこで、妙見城主の星野重実どのが口を開いた。
「西牟田殿のご意見、至極もっともにございます。それがしも賛成にござる。それに補足いたしとうございます」。
皆が今度は星野殿の方を向いて発言を待つ。
「されば、ここから北東三里半先(14km)、歩いて一刻半(3時間)のところには、帆足鑑直が守る日出生《ひじゅう》城がありもうす。兵はこちらも変わらず千足らず、六~七百ほどです。勇将でなる帆足は、密かに目立たぬよう兵を分散させて接近し、奇襲にて挟撃をしかけてくるやもしれませぬ」。
「兵の数はこちらが圧倒的に上にござりますれば、二手に分け、それぞれを同じ様に攻めるのが上策かと存じます」。
「兵法において兵を分けるは各個に敗れる恐れがあります。しかしそれは、各個が敵の一隊と同数程度、もしくは奇襲などで不意を突かれた場合でござる。もとより奇襲は寡兵が行う手立てにて、構えておれば恐れる事はありません」。
皆がうなずく。
「他に意見はありませぬか?では、星野殿の言われる様に二手に分け、角牟礼城は西牟田殿の策でまいるとする。隊はこちらがわしと草野殿、日出生城は西牟田殿を大将として、星野殿と黒木どの、陸軍は一個連隊と半個連隊で分けるとしよう。編成は小田大佐、お任せいたす」。
陸軍第三混成旅団長の小田増光大佐が返事をし、軍議は終わった。
日田勢八百も合わせて到着した。角牟礼城は城主の森五郎左衛門鑑高が指揮をとり、魚返・中島・志津利氏などの玖珠郡衆が籠城している。弓矢の名手、宿利外記もいて接近戦では注意が肝要だ。
角牟礼城は高さが六町ほどの角埋山の山頂に築かれている。周りは切り立った岩山でまさに要害である。本丸は山頂北西端にあり、二の丸、三の丸が空堀と土塁、そして要所に石垣を配して畝状竪堀群と無数の曲輪で守っている。
城の東側は南北に森川が流れており、川沿いは平野になっていて集落が点在している。川幅はせまい。川の東側、玄興院と天満社に陣を構えた。城までは十三町ほどだ。本陣目の前の川は、人が通れる浅瀬になっている。
その先も平野で視界が開けているので、大軍を展開しやすい。日は沈んでいたが軍議を開く。急を要するのだ。西牟田どの、星野どの、草野どの、黒木どの等の主要な国人を集める。
「各々方、これからどの様にして城を攻めるか協議いたそう」
わしは皆の顔を見回して告げる。
「ではまずは、要害、堅城にて降伏を勧めましょう。応じずともやらねばなりませぬ」。
西牟田どのが発言する。
うむ、そうだ、といって皆がうなずく。
「期限は昼ごろでよろしいでしょう。もともと応じるとは思っておりませぬ。形だけです。そしてそれまでの間に、軍を動かしまする」。
どこに動かすのだ?皆が一様に身を乗り出す。
「そして昼までに移動を終わらせるのです。半里もありませぬゆえ、半刻もあれば移動あたうでしょう。昼に降伏がなければ大砲にて砲撃を開始いたします。反対側の山の斜面から五町ほどです。届けばよし。届かなくても、土塁石垣を壊す事はできます」。
「そうして敵の意気をくじきつつ、別働隊が城攻めを行うのです」。
「調べによれば、本丸から南東へは尾根伝いに平地が続いていて、その南側に水の手があります」。
「本丸の南側から西側の二の丸、三の丸は頑強です。まず砲撃で敵の意識を集中させ、一番弱いであろう水の手から登り、尾根伝いに平地を本丸まで駆け上がりましょう」。
西牟田殿の発言に皆が同意する。
そこで、妙見城主の星野重実どのが口を開いた。
「西牟田殿のご意見、至極もっともにございます。それがしも賛成にござる。それに補足いたしとうございます」。
皆が今度は星野殿の方を向いて発言を待つ。
「されば、ここから北東三里半先(14km)、歩いて一刻半(3時間)のところには、帆足鑑直が守る日出生《ひじゅう》城がありもうす。兵はこちらも変わらず千足らず、六~七百ほどです。勇将でなる帆足は、密かに目立たぬよう兵を分散させて接近し、奇襲にて挟撃をしかけてくるやもしれませぬ」。
「兵の数はこちらが圧倒的に上にござりますれば、二手に分け、それぞれを同じ様に攻めるのが上策かと存じます」。
「兵法において兵を分けるは各個に敗れる恐れがあります。しかしそれは、各個が敵の一隊と同数程度、もしくは奇襲などで不意を突かれた場合でござる。もとより奇襲は寡兵が行う手立てにて、構えておれば恐れる事はありません」。
皆がうなずく。
「他に意見はありませぬか?では、星野殿の言われる様に二手に分け、角牟礼城は西牟田殿の策でまいるとする。隊はこちらがわしと草野殿、日出生城は西牟田殿を大将として、星野殿と黒木どの、陸軍は一個連隊と半個連隊で分けるとしよう。編成は小田大佐、お任せいたす」。
陸軍第三混成旅団長の小田増光大佐が返事をし、軍議は終わった。
1
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
『転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』
姜維信繁
ファンタジー
佐賀藩より早く蒸気船に蒸気機関車、アームストロング砲。列強に勝つ!
人生100年時代の折り返し地点に来た企画営業部長の清水亨は、大きなプロジェクトをやり遂げて、久しぶりに長崎の実家に帰ってきた。
学生時代の仲間とどんちゃん騒ぎのあげく、急性アルコール中毒で死んでしまう。
しかし、目が覚めたら幕末の動乱期。龍馬や西郷や桂や高杉……と思いつつ。あまり幕末史でも知名度のない「薩長土肥」の『肥』のさらに隣の藩の大村藩のお話。
で、誰に転生したかと言うと、これまた誰も知らない、地元の人もおそらく知らない人の末裔として。
なーんにもしなければ、間違いなく幕末の動乱に巻き込まれ、戊辰戦争マッシグラ。それを回避して西洋列強にまけない国(藩)づくりに励む事になるのだが……。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり
イミヅカ
ファンタジー
ここは、剣と魔法の異世界グリム。
……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。
近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。
そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。
無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?
チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!
努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ!
(この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)
転生農家の俺、賢者の遺産を手に入れたので帝国を揺るがす大発明を連発する
昼から山猫
ファンタジー
地方農村に生まれたグレンは、前世はただの会社員だった転生者。特別な力はないが、ある日、村外れの洞窟で古代賢者の秘蔵書庫を発見。そこには世界を変える魔法理論や失われた工学が眠っていた。
グレンは農村の暮らしを少しでも良くするため、古代技術を応用し、便利な道具や魔法道具を続々と開発。村は繁栄し、噂は隣領や都市まで広がる。
しかし、帝国の魔術師団がその力を独占しようとグレンを狙い始める。領主達の思惑、帝国の陰謀、動き出す反乱軍。知恵と工夫で世界を変えたグレンは、これから巻き起こる激動にどう立ち向かうのか。
田舎者が賢者の遺産で世界へ挑む物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる