上 下
142 / 810
九州三強と中央への目-肥後の相良と阿蘇、そして北肥後国人衆-

笛吹けども踊らず 筑後衆

しおりを挟む
永禄九年 十一月 小佐々城 小佐々純正

千方から報告が届いた。

「その後筑後衆はどうだ?動きそうか?」
「は、たびたび大友から出陣要請が出ておるようですが、毛利の動向も有り、腰が重いようです。」

ふむ、やはり毛利の存在が大きいか。大友にしてみれば長引けばやっかいだし、早めに決着をつけたいところだな。しかし国衆制はやはり面倒だな。動員兵力はもとより、参戦する・しないが外的要因によるところが大きすぎる。

やはりよほど大きい勢力でない限り、基本的に直轄地政策がいいな。

今後の基本方針は大友を極力刺激せずに、毛利と泥沼で戦ってもらって、お互いに国力を消費してもらう。その隙にこちらも国力をつけ、対等ではなくとも簡単には手が出せない様にする。

筑後は火薬庫だから、やはり肥後か。北肥後は完全に大友に従属しているわけではないから、阿蘇か相良と結ぶか?日向以外は大隅に肝付がいるが、どう考えても島津が北上してくるだろう。

しかし、父祖伝来の土地を回復するとなれば、肥後よりも日向だな。確か史実でも、肥後をとるのは日向の伊東氏を破ってからだ。

流れ的には、耳川の戦い→島津の三州統一→大友の没落→龍造寺の台頭となる。いや、いやいや、既に龍造寺隆信を討ち果たしているから、正直史実は参考程度にしかならない。島津の北上と九州制覇の野心は既定路線とは言え、順序が変わるはずだ。

目安とするなら、南肥後の相良義陽と東肥後の阿蘇惟政は最後まで島津に抵抗するだろうから、やはり北肥後か。相良・阿蘇と誼を通じながら徐々に攻略していこうか。日向の伊東は大友と親しいのだろうか?

いずれにしても史実どおり伊東と相良と阿蘇は島津の防波堤になってもらおう。しかしそうなると耳川の合戦が遅くなるな。いっそ時期をみて筑前・筑後に攻め入るか?だとすればどっちだ?

こちらが筑前衆に攻め込んだら間違いなく大友勢が優位になるだろう。毛利は退かぬかもしれないが、国衆は動揺するはずだ。どっちが勝つか、勝つ方につこうとするだろうからな。

筑前が完全に大友から独立し、毛利勢力が豊前全域を支配する様になれば、大友の影響力は豊後のみになる。筑後は日和見だからな。そうなれば北九州はまた群雄割拠になる。・・・当面は情報収集に専念するべきか。

「千方、北肥後のぐあいはどうだ?誰か国衆の中でも抜きん出た、小大名はいるのか?」

「は、さればおおよそ三人に絞られまする。まずは隈部城の隈部親永。こちらは大津山城の大津山家稜、内村城の内空閑鎮真他を従えておりまする。次に菊池城の赤星統家ですが、こちらは合志城の合志親為、小代城の小代実忠を取り込んでおります。最後が隈本城の城親賢、こちらは宇土城の名和行直を傘下に入れております。」

「なるほど、だいたい三つに分かれているのだな。」

「はい。ただしこちらの三家は、その時々に応じて大友の支援を受けたり、または大友の支援を受けていた勢力を攻撃したりと、大友に対する態度をはっきりさせていません。」

「なるほど。難しいな。」

「されど今のところ、一番大きく大友の援助を受けているのは隈部親永と存じます。そして赤星統家に属する小代実忠ですが、小代城から合志城に向かうには反対勢力の内村城下を抜けなければなりません。それゆえ内村城を組み入れようと、各勢力が躍起になっております。」

「なるほど。地の利で考えれば内空閑が要と。」

「そうか。うーん、ふむふむ。うー。よし、利三郎と道喜、道喜がいなければ弥市を呼んでくれ。」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』

姜維信繁
ファンタジー
佐賀藩より早く蒸気船に蒸気機関車、アームストロング砲。列強に勝つ! 人生100年時代の折り返し地点に来た企画営業部長の清水亨は、大きなプロジェクトをやり遂げて、久しぶりに長崎の実家に帰ってきた。 学生時代の仲間とどんちゃん騒ぎのあげく、急性アルコール中毒で死んでしまう。 しかし、目が覚めたら幕末の動乱期。龍馬や西郷や桂や高杉……と思いつつ。あまり幕末史でも知名度のない「薩長土肥」の『肥』のさらに隣の藩の大村藩のお話。 で、誰に転生したかと言うと、これまた誰も知らない、地元の人もおそらく知らない人の末裔として。 なーんにもしなければ、間違いなく幕末の動乱に巻き込まれ、戊辰戦争マッシグラ。それを回避して西洋列強にまけない国(藩)づくりに励む事になるのだが……。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ
ファンタジー
 ここは、剣と魔法の異世界グリム。  ……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。  近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。  そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。  無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?  チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!  努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ! (この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

処理中です...