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氷の王太子 レオン・リュミエール3

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「レオン様、お待たせしました!」

  しばらくしてアランが戻ってきた。

「あ、ああ……」

「? どうかしましたか?」

  ただならぬ様子のレオンにアランがけげんな表情を浮かべて尋ねる。

「い、いや、なんでもない」

「そうですか?」

  すっきりしないながらもアランは買ってきたクッキーを袋から取り出すとレオンに手渡した。

「季節限定のにゃんこちゃんクッキー以外に話題の新作はなさそうでした。みんな注文する商品もバラバラでしたし……。行列の理由は謎のままです」

  アランが首を傾げる。

  レオンは先ほどの女のことを気にかけつつもアランが買ってきたクッキーを一口つまんだ。次の瞬間、衝撃にレオンの目が大きく見開いた。

  今日二度目の大きな衝撃がレオンの体に走った。

「……な、なんだこのクッキーは……? 以前とまったく味が違うぞ……?」

「え、お気に召しませんでしたか?」

  アランがぎょっとした顔でレオンを見つめる。

「いや……ものすごくうまい」

  口に入れた瞬間からほろほろとほどけるはかない食感。濃厚なバターとアーモンドの香り。ざくざくしているのに口のなかですっと溶ける繊細な生地。

「なにがどうなっているんだ……? いや、行列の理由は間違いなくこれだ」

  以前のエンジェル・リーフのクッキーも美味だったが今日のクッキーのうまさは異次元だった。この味を求めて皆が行列をつくっているのだとレオンは思った。

  このクッキーの味の変化とあの娘がなんだか無関係のようには思えなくて、レオンの頭のなかはその2つのことでいっぱいになってしまった。

  今までエンジェル・リーフには何度も足を運んでいるがあの娘を見たのは今日が初めてだ。そしてクッキーのこの味の変化。

  ……気になる。気になって仕方がない。

  その日からレオンは気がつけばエンジェルリーフに毎日通うようになった。





「レオン様、今日もエンジェル・リーフへ行くんですかぁ?」

  もうこれで10日連続でエンジェル・リーフに通っている。アランは不満げだ。

「こんなに毎日クッキーばかり食べていたら太っちゃいますよ?」

「わ、わかっている」

  アランはレオンの行動を怪しみ始めていた。エンジェル・リーフのクッキーはたしかに美味しいがそれ以外にもレオンが気になっていることがあの店にあるようだとアランは思い始めていた。

  クッキーを買うのだって以前はアランに任せっぱなしだったのに最近は自ら店内に足を運んでは調理場のほうをちらちらと見ている。

  クッキーを買った後は裏口の近くのベンチに座って窓から調理場内を伺っているのだ。

  はっきり言ってはたから見たらただの不審者である。
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