上 下
12 / 40

11話

しおりを挟む
お風呂から上がり現在は晩ご飯を食べようとしているところ。だったのだが…。

リビングに行くと、どうやらお母さんは未だ帰ってきていないみたい。

「お母さん…ほんとに朝日のお家に行ってるんだね…」

「そうみたいだねぇ!あっ!それでね、かずきのお母さんに頼まれたの!」

なにを?と聞くと朝日が答える。

「かずきと一緒に晩御飯を作ってほしいって!」

「えぇ…お母さんそんなこと頼んでたの…」

お母さん泊まりに来た朝日になに頼んでるの…。そして朝日の家でなにしてるの…。

「うん!ハンバーグの材料が冷蔵庫にあるみたいだから一緒に作ろ!」

そう言い朝日はやる気満々だ。

私はある程度の練習はしていたので作ることは出来る。

それに朝日も学校のお弁当を自分で作るくらい料理が得意だ。

今日屋上で食べさせてくれたお弁当のおかずも本当においしくて習いたい程だった。

これなら大丈夫かなと思い、それじゃあやろっかぁと言う。

がんばろー!と朝日が言い、さっそく料理をすることにした。

まずはお米の準備をし、冷蔵庫を確認すると、確かにハンバーグの材料があったので作ることにする。

二人で並び、朝日が玉ねぎを切り、私はビニール手袋をしてひき肉をこねていた。

ひき肉をこね終わると朝日が後は任せて!というので私はサラダを作ることにした。

そして晩御飯が完成する。

ハンバーグとご飯、サラダをテーブルに並べる。

「かんせーい!」

朝日が嬉しそうに両手を上げ言った。

「おつかれさまぁ!美味しそうにできたねぇ!」

「うん!さっそく食べよ!」

私はそうだね!と言い二人で、いただきますをした。

朝日がまずはハンバーグ食べてみてー!というので一口食べる。

「美味しい!」

本当に美味しかった。

焼き加減もちょうどよく、なにより甘く仕上がったデミグラスソースが私の好きな味だった。

ただ、お母さんが作ってくれるソースの味に似てたので朝日に聞いてみた。

「実はね…さっきかずきのお母さんが、かずきの好きな味を教えてくれたんだ!上手く出来てよかったぁ!」

「そうだったんだぁ。ありがとう朝日」

そう言い朝日の頭を撫でてあげる。

朝日はえへへ…と嬉しそうにする。

そんな朝日を見て、かわいいなぁ…と思ったのは内緒。



晩御飯を食べ終え、食器を二人で洗っている時に朝日が言う。

「えへへ…なんかこうしてると新婚さんみたいだねぇ…」

「違うと思うよぉ」

「えー。新婚さんみたいだよー」

「違うよー」

「ざんねーん」

そんな会話をしながら、終わらせると一緒に部屋に戻ることにした。


部屋で雑談をしてると、そろそろ寝よっかという話になり準備をする。

だが、ここで気づく。

私の部屋にベッドが一つ、そして予備の布団がないことに…。

「朝日…うち予備の布団ないよ…」

「うん?別になくて大丈夫だよ?」

え?という顔をしていると朝日が続けて言う。

「だってかずきのベッドで一緒に寝ればいいんだもん!」

なるほど…たしかにそれなら…いやいや、それはさすがに…と思い断ろうとしたが朝日が強引に決めると二人で一緒のベッドで寝ることになってしまった…。

私今日緊張して寝れなさそう…。



二人でベッドの上で横になると、電気を消す。

部屋の中は月明かりが照らしているだけになった。

「えへへ…かずきの匂いがいっぱいだぁ…」

朝日が私のベッドに顔を埋めながら言う。

「何言ってるの…それに今日は朝日も同じ匂いでしょ…」

「そうだったぁ!嬉しいなぁ…」

もぉ!早く寝るよ!と伝え、寝ようとしたのだが…。

朝日が今度は私の胸に顔をうずめてくる。

「ちょ、なにしてるの!?」

「うん?かずき成分補充してるのー」

私は離れるように伝えるが全然離してくれない…。

それどころか気づけば私の上に覆い被さるように乗ってくる。

「あ、朝日…重いよ!」

「あー失礼なー!私重くないよー!」

「降りてよぉ」

「やだー」

まったく降りてくれそうにない朝日。

それならと、朝日をくすぐる。

「あはは!かずきやめてー!またくすぐるとかずるいよー!」

よほど、くすぐったいのか抵抗しようとする朝日。

だが、私は降りてくれるまでやめない。

「わ、わかった!降りるからー!」

そう言うとやっと降りる朝日。

「はぁはぁ…あーくすぐったかったぁ。もー汗かいちゃったよぉ」

「はぁはぁ…朝日がなかなか降りてくれないからだよ…」

お互い必死だったのか息が荒くなっていた。

そうして、息を整えると朝日が言う。

「あのね…かずき…」

うん?と言い朝日の方を見ると真剣な顔をしている。

「私のこと抱きしめてキス…してくれないかな…」

「え!?急にどうしたの!?」

朝日の急なお願いに私は混乱する。

わ、私が朝日を抱きしめて、キ、キスするの!?え?私が!?

抱きしめられるのですら、まだ恥ずかしくて抵抗があるのに、抱きしめて…しかもキス!?

抱きしめるのはまだいい…だけどキスは…。

「だめ…かな…?」

悲しそうな顔をする朝日。

「だ、抱きしめるだけなら…でもキスは…ちょっと…私ファーストキスもまだだし…」

「それならほっぺでも…だめ…?」

「うーん…」

しばらく考えたが朝日がすごく悲しそうなので決心する。

「ほっぺなら…いいよ…」

それを聞いて安心したのか笑顔になる朝日。

こうして私は朝日を抱きしめて頬にキスをすることになった。



ベッドの上で、起き上がり二人で向き合う。

「そ、それじゃあいくね…」

「う、うん…」



最初に朝日を抱きしめることから始める。

図書室で真白さんを後ろから抱きしめることになったけど今はそれ以上に緊張していた。

朝日も緊張しているようで鼓動が早くなっているのを感じた。

私も朝日に鼓動が早くなっているのがバレてるんだろうなと思った。

朝日からは普段、私が使っているシャンプーの香りがする。

だけど不思議で使い慣れてるシャンプーの香りなのに、朝日からすると思うとすごくドキドキした。

朝日をさらにぎゅっと抱きしめる。

そんな朝日も私をぎゅっとする。

そして朝日が吐息を漏らし、かずき…大好きだよぉ…とつぶやく。

私はドキッとしつつも、耳元でありがと、と言い抱きしめ続ける。

朝日が、んっ…と反応する。

それからはしばらく抱き合い、そして離す。



さて、ここからが問題だ…。

ほっぺならいいよと言ったけどキスすることに変わりはない…。

うぅ…。今までで一番緊張するよぉ…。

緊張をほぐす為に朝日の髪を撫でると、朝日が気持ちよさそうにしている。

そして、お互い見つめ合うと朝日が目をつぶる。

月明かりに照らされ朝日の頬が紅潮しているのがわかる。

そんな朝日を見ているとなんだかすごく愛おしい。

このままだと唇にキスをしてしまいそうだったので、意を決して朝日の頬に自分の唇を近づける。

ドキドキしすぎて爆発するんじゃないかと思った。

そしてとうとう私の唇が朝日の頬につく。

朝日の頬は柔らかくなんだか気持ちがよかった。

そうして唇を離すと気づけば朝日は泣いていた。

私なにか失敗したのかと思い理由を聞くと朝日が答える。

「かずき…ありがとね…私のわがまま聞いてくれて。私かずきのこと好きになってから…かずきにしてほしいことがたくさんあって…。やっとその一つ叶ったんだ…。それが嬉しくて…。ごめんね…」

「でも私、朝日の気持ちに応えてあげられなくて…」

ごめんね…と言いかけると泣いていた朝日が笑顔で答える。

「ううん…今はいいの!でもいつか絶対私のこと大好きにさせてあげるんだからね!他の三人にだって負けないよ!」

そう言い朝日が私の頬にキスをし、抱きしめる。

そうして、今夜は朝日に抱きしめられて眠ることになった。

いつか…そんな日が来るのかな…と考えながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

さくらと遥香(ショートストーリー)

youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。 その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。 ※さくちゃん目線です。 ※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。 ※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。 ※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...