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二日目の放課後。

前回カラオケルームで失敗した私達はファミレスに来ていた。

学校から少し離れていて、この時間だからか人も少なく。

勉強目的で来ているのは私達だけの様だった。

奥の席へと案内されると、愛華さんと向かい合わせで座り二人でメニューを眺めると、とりあえずドリンクバーを頼むことに決まり、注文をしようと手元にあったスイッチを押す。

すると、すぐにウェイトレスさんが来るのだけど。

「え!?な、なんであんたがここにいるの!?」

突然、驚き始める愛華さん。

その視線の先にはクラスメイトで、愛華さんの友達の宮園まりさんがウェイトレス姿で立っていた。

「なんでって、うち今日もバイトだって言ってんじゃん。」

「で、でも、まりのバイト先って、こことは正反対だよね!?」

「あー。そゆことか。ヘルプでこっちきてんのー。今テスト前で人足んないらしくてさー。」

「そ、そういう時は言っておいてよね!?」

「なんでいちいち言わないといけないんだよー。まじうける!」

「うけるな!」

「ところでさー。こっちはだれ?」

「同じクラスの子!河合睦月!」

「んー。わからん。」

「あんたねー!いい加減クラスメイトの顔と名前くらい覚えなさいよ!」

「いちいちクラスのやつとか覚えてられっかよー。」

「あーもう!あんたって子はー!」

「むしろお前の記憶力がやべーわ!普段バカなのにさー。」

「うっさい!もう早く注文取ってよ!ドリンクバー二つ!あとイチゴパフェ一つ!」

「へいへーい。」

そう返事すると、宮園さんは手元の機械を操作して、厨房の方へと消えていく。

そのやりとりを俯きながら、黙って聞いているしかなくて。

「むつき…。ごめんね。」

そんな私を心配してくれる愛華さん。

「う、ううん…。び、びっくりしたけど大丈夫だよ…。あ、ありがと…。」

その優しさが嬉しくて頑張って笑って返事すると、微笑み返してくれる。

それから、お互いにドリンクバーで飲み物を取り、また席に戻る。

自分達の飲み物を一口飲み終えたあと。

「むつきってコーラ好きなんだねー。昨日のカラオケでも飲んでたよね。」

「う、うん…。コーラだけじゃなく炭酸系は基本好きかな…。」

「そうなんだね!あ、ねーねー!むつきー!あたしに一口ちょうだーい!」

私が飲んでいたコーラを指差す。

「う、うん…。い、いいよ…。」

「ありがとー!それじゃあ、あたしのオレンジジュースもどーぞ!おいしいよー!」

そう言い、お互いに交換するのだけど。

(あ、あれ…?これって…間接キスなんじゃ!?)

なんて考えていると。

「んー!やっぱ炭酸苦手かもー!」

と、震えている愛華さんは、いつのまにか一口飲み終えていた。

(私が意識しすぎで、愛華さんにとっては友達同士でする普通の行為なのかな…。)

なんてまた考えてしまっていると。

「あれ?むつきオレンジジュース嫌いだった?勧めちゃってごめんね…。」

と、申し訳なさそうにする愛華さんに。

「う、ううん…。そ、そんなことないよ…。ひ、一口もらうね…。」

そう伝えると、思い切ってストローに口を付けると少し飲み。

「お、おいしいね…。」

正直、ドキドキでよくわからなかったけど感想を伝える。

すると、愛華さんは嬉しそうにしていて、特に気にする様子もなかったので、それ以上意識すると顔が真っ赤になりそうなので、考えないようにした。

それから、愛華さんがお手洗いに向かうと、宮園さんがやってきて。

「パフェおまちー!」

そう言うと、なぜかイチゴパフェとチョコパフェがテーブルに置かれる。

頼んだのはイチゴパフェだけのはずなのにと、戸惑っていると。

「あーこれ?さっき悪いことしちゃったなーって。だからお詫びに。うちの奢りだから気にすんなー!」

「あ、ありがとうございます…。」

私のことを気遣ってくれて、お礼を伝えるのだけど。

「いいっていいってー!それよりさー。」

と言うと、隣に座り始める宮園さんは。

「二人ってどういう関係なん?」

なぜか、詮索を始める。

「え、えっと…。と、友達です…。」

「まじか!知らなかったわ!いつ友達になったん?」

「き、昨日、勉強を教えてほしいってお願いされて…。そ、それから友達に…。」

愛華さんのことを考えると、百合漫画がきっかけという訳にはいかず、咄嗟に考えた理由を話す。

「あーやっぱそういうことかー。」

そう言うと、宮園さんは少し考えて。

「ほんとはさー。うちとめぐるん…あ、花巻めぐるのことね。そいつと一緒にバカ愛華から勉強教えてって頼まれたんだけどさー。うちはバイト入ってたし。めぐるんは妹の勉強見ないといけなくて。」

たしかに昨日愛華さんもそう言ってた。

「それでどうしようか悩んでたんだけど。お前が教えてくれるのならよかったわー!まじありがとなー!」

「い、いえ…。そ、そんなお礼なんていいですよ…。」

「でもさー。あいつ集中力なさすぎて苦労してるだろー。うちらもいつもそれで悩まされててさー。記憶力はやばいくらい良いくせに、そのせいでいつもテスト悲惨なんだよなー。」

「あ、あはは…。」

私のせいでもあったけど、昨日のことを思い出し、苦笑いしていると。

「あいつのこと頼むな。普段言い合いばっかしてるけど、大事な友達なんだ。」

宮園さんは真剣な様子で話す。

それを聞いて。

ずっと口が悪くて怖い人だと思っていたけど。

本当は友達想いの良い人なんだと、考えを改め。

宮園さんのお願いのために、そしてなにより愛華さんのためにも。

「は、はい…!が、がんばります…!」

精一杯返事をすると。

「お前良い奴だな!気に入った!よーし!お前は今からうちとも友達だ!」

宮園さんは笑顔で私の肩を掴み、抱きしめながらそう言うのであった。

そんな宮園さんの行動に慌てていると。

「なんだよー。うちと友達になるの嫌なのかよー。」

そう言い、口を尖らせていじけた素ぶりを見せる。

「い、いやじゃないです…。お、驚いていただけで…。」

(陽キャの人の行動に慣れていないだけなんです…。)

と、心の中で思いながら答えると。

「そっか!ならうちのことは、まりって呼んでくれよな!それと敬語禁止!これからよろしくな!」

「う、うん…。よ、よろしくね…まりさん…。」

まりさんと友達になった私。

まりさんに未だに抵抗できず、抱きしめられていると愛華さんが戻ってきて。

「ちょ、ちょちょちょちょっとあんた!なにしてんの!?」

「うわ!うっせー奴が戻ってきた!」

「だれがうっせー奴よ!!!」

なんて言い合いが始まり。

店長さんに睨まれてることに気づいたまりさんが。

「それじゃあ勉強がんばれよー!バカ愛華!むつきち!」

と、戻っていく。

「む、むつきち…?」

去り際に言った、まりさんの言葉に驚いていると。

「あー。まりって友達にはあだ名付けるんだ。あたしも昔はあいぽんって呼ばれてたし。」

そうなんだ…。あだ名とか初めてだから嬉しい…。なんて喜んでいると。

「っていうかなんで!?いつの間に、むつきとまりが友達に!?」

と、驚いている愛華さんに、いなかった間のことを話すと愛華さんは嬉しそうにしていた。

言い合いを見ていると、仲悪いのかな。なんて思うこともあったけど。

やっぱり友達同士なんだなぁ。と思うと、なんだか心が温かくなるのであった。


それから、お互いにパフェを食べ始めることになるのだけど。

「むつき!これすっごく美味しいよ!食べてみて!はい!」

と言うと、一口分のイチゴパフェを取り、私に食べさせようとしてくれる。

断ろうとするのだけど、愛華さんはなんだか楽しそうで。

断るに断りきれず、顔が赤くなってしまう前にいただくと、今度は愛華さんがチョコパフェを食べたくなったみたいで。

器ごと渡そうとすると、あーん。と口を開ける。

私が戸惑っていると。

「ねーねー。むつきー。ちょうだーい。」

と、催促されてしまい。

愛華さんの顔を直接見れず、俯きながら食べさせると、愛華さんはよほど美味しかったのか大喜びで。

愛華さんは気にしてないのかなとチラッと様子を伺うと、なんだか顔が少し赤かった気がするけど。

直視出来なかったから、きっと私の気のせいなのだろう。

それから、ついに勉強を始めることになるのだけど。

まりさんが心配してくれたのか様子を確認しに来る度に、愛華さんと言い合いを始めてしまい。

あまり捗らず、今日の勉強会も終わってしまう。

さすがに、まりさんも悪いと思ったのか私と愛華さんのファミレス代を奢ってくれて。

(なんか最近奢ってもらってばっかりじゃない…?)

なんて思いながらもお言葉に甘えると、まりさんと別れる。

その後の帰り道。

どうやって愛華さんに勉強を教えたらいいのか考えていると。

「明日ってさ。休みじゃない?」

「う、うん…。や、休みだね…。」

「それでね。明日、むつきのお家に遊びに…じゃなかった!勉強しに行っても良いかな?」

「う、うちに…!?」

「うん!だめ…かな…?」

「い、いいよ…。」

うちに友達が遊びに来るなんて初めてで。

すごい緊張してしまうけど、愛華さんのお願いを断る理由も特になかったのでそう答えると。

「やったー!それじゃあ明日むつきのお家にお邪魔するね!楽しみだなー!」

「う、うん…。で、でも勉強するんだからね…?」

「大丈夫!たぶん!きっと!」

という不安が残る返事を聞き終わると、明日はうちで勉強会をすることになるのだった。

果たして勉強会を無事にすることが出来るのか…。

テスト開始まで残り、3日。


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