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絆
㉒ side 柳川晴子
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「~♪」
私、柳川晴子は鼻歌を歌いながら自室の床に寝っ転がりながらファッション雑誌を読み耽ていた。
ファッションは、欠かせない。自分を可愛く、美しく見せる。誰よりも可愛く、誰よりも美しく、そして何より他の何よりも目立つことが出来る。
目立ちたがり屋……なのだろう。自分でそれを認めるのは気恥ずかしいけども。
もっと言えば、承認欲求の塊。クラスでも頭が良い訳ではない。スポーツが得意という訳でもない。でも、ならばせめてファッションだけは誰よりも上でありたい。そして誰からも羨ましがられたい。
光輝君と付き合いたいと前に言ったのも、その類。ただだ他の人から羨ましがられたいからという理由。カッコイイ彼氏と付き合うことが出来れば、その分他の子よりも優位に立てる。自慢出来る。
そんな何処か蟻地獄にも似た底なし沼な承認欲求の塊。そしてそれが故に一種の刹那主義とも言える直情的な衝動で、何もかも決めてしまうことがある。
嘗て同じ友人グループの池田千佳を仲間外れにしたこと然り、今現在進行形で音無希津奈を仲間外れにしていること然り。
しかし、それを悪いとは思わない。感情的であるが故に、「自分の気分を害した相手が悪い」と短絡的な思考に陥る。ついでに言えば、別に直接的ないじめ行為をしている訳ではない。私にとって、『仲間外れにする』とは怒った自分と相手との間の為の、冷却期間のような認識だ。希津奈の電話をブロックさせたのも、意地が悪いが話題になって欲しくないからだ。
自分でも単純だと思うが――どうしてもクラスで、いや学校でも人気な回夜光輝君と希津奈が二人で親し気に会話しているのを見た瞬間、希津奈に上に立たれた気がしたのだ。
私の方が可愛いのに。
私の方が奇麗になるべくずっとずっと努力しているのに!
そんな――高校生にもなって子供じみた思考が、希津奈を『仲間外れ』にさせるよう誘った。
しかし、だからと言って希津奈と一生連絡を取らない、会話しないというつもりもなかった。自分の中の、この天気にも似た怒りの感情が収まれば、それまsでのことが無かったように挨拶してお昼を一緒に食べることになるだろう。
これは、なんてことない――いじめ等ではなく飽くまでも友人関係上のひと悶着でしかない。
そう私は思っているし、事実その通りだと信じて疑わない。
「~♪」
だから休日で親が家にいない独りでいるこの時間も、何の良心の呵責もなく過ごせていた。お気に入りのファッション誌で情報を集め、SNSで映える服装を模索し、どんな写真をアップするか考える。
なんてことない、幸せな私の日常。
そこに、
ピンポーン
「ん?」
チャイムの音が鳴る。一瞬動きを止め……すぐに自分以外家に誰も居ないことを思い出す。
(はー……だっるぅ……)
起き上がり、本や小物で散乱した部屋を歩いて部屋から出る。私の家は二階建ての家で私の自室は二階にある。その為部屋の外に脱ぎ散らかしていたスリッパを履き、階段を下りて家の中にある外の子機であるインターホンと繋がった家内部の方の親機を弄る。
「はい、柳川です」
何時もと同じように応える。が、
「? あ、れ……?」
インターホンに取り付けられたカメラの画像には、誰も映っていなかった。
(え、何これ? 悪戯?)
訳が分からなかった。何度か「もしもし! もしもし!」と大声で画面越しに叫ぶが誰かが映ることはない。
本当に悪戯……今のご時世に、ピンポンダッシュされたのだろうか? この異常事態を前に恐怖を感じていた私だが……段々と悪戯されたのでは? という疑念が確信へと変わるに連れて、恐怖が怒りへと塗り替えられていく。
何なんだろう……。元来の直情的な性格から大股に歩いて玄関へと向かう。
コツコツ コツコツ
嫌に大きく、スリッパの音が響く。
玄関のロックを外し、外に出る。
ガチャ
扉を開けると、
「………………?」
そこにはやはり誰も居ない。
やっぱ悪戯か……。ふん、と不快感から鼻を鳴らす。同時に、安堵が胸の内に広がる。
ふと彼方の空を見つめる。夕焼け空も終わりの頃、宵闇の時。
もうそんな時刻か……。そんな感想を抱き、私は踵を返して家の中へと戻ろうとし――
ガサ
音が、した。
なんだ? 近所の悪ガキが姿を見せたのか? と思い、怪訝な表情で音のした方を振り返る。と、
「――――――え?」
その眼前の光景に、驚き、戸惑い、そして――
◇ ◇ ◇
ガラガラと旅行鞄を私、音無希津奈は引いて歩く。夕焼けも終わった宵の刻。夜の静寂が落ち始めた頃、私は木田の家に戻っていた。
(もう少し……もう少し……)
心を無にしてただ急ぐ。必要な物の場所は分かっている。あとは運ぶだけ――!
早ク……早ク……速ク……速ク――――――!
速足で木田の家に急ぐ。その途中、ある十字路に差し掛かって曲がる、と。
「こんばんは」
「あ………………」
思わず、声を上げた。
忘れもしないおとぎ話に出てくるような、黒いローブ姿。自称〝回る夜を歩く者〟んしいて、〝魔女〟と云われたクラスメイト。
「素敵な夜ね」
回夜歩美が、十字路を曲がった先で笑って此方を見ていた。
私、柳川晴子は鼻歌を歌いながら自室の床に寝っ転がりながらファッション雑誌を読み耽ていた。
ファッションは、欠かせない。自分を可愛く、美しく見せる。誰よりも可愛く、誰よりも美しく、そして何より他の何よりも目立つことが出来る。
目立ちたがり屋……なのだろう。自分でそれを認めるのは気恥ずかしいけども。
もっと言えば、承認欲求の塊。クラスでも頭が良い訳ではない。スポーツが得意という訳でもない。でも、ならばせめてファッションだけは誰よりも上でありたい。そして誰からも羨ましがられたい。
光輝君と付き合いたいと前に言ったのも、その類。ただだ他の人から羨ましがられたいからという理由。カッコイイ彼氏と付き合うことが出来れば、その分他の子よりも優位に立てる。自慢出来る。
そんな何処か蟻地獄にも似た底なし沼な承認欲求の塊。そしてそれが故に一種の刹那主義とも言える直情的な衝動で、何もかも決めてしまうことがある。
嘗て同じ友人グループの池田千佳を仲間外れにしたこと然り、今現在進行形で音無希津奈を仲間外れにしていること然り。
しかし、それを悪いとは思わない。感情的であるが故に、「自分の気分を害した相手が悪い」と短絡的な思考に陥る。ついでに言えば、別に直接的ないじめ行為をしている訳ではない。私にとって、『仲間外れにする』とは怒った自分と相手との間の為の、冷却期間のような認識だ。希津奈の電話をブロックさせたのも、意地が悪いが話題になって欲しくないからだ。
自分でも単純だと思うが――どうしてもクラスで、いや学校でも人気な回夜光輝君と希津奈が二人で親し気に会話しているのを見た瞬間、希津奈に上に立たれた気がしたのだ。
私の方が可愛いのに。
私の方が奇麗になるべくずっとずっと努力しているのに!
そんな――高校生にもなって子供じみた思考が、希津奈を『仲間外れ』にさせるよう誘った。
しかし、だからと言って希津奈と一生連絡を取らない、会話しないというつもりもなかった。自分の中の、この天気にも似た怒りの感情が収まれば、それまsでのことが無かったように挨拶してお昼を一緒に食べることになるだろう。
これは、なんてことない――いじめ等ではなく飽くまでも友人関係上のひと悶着でしかない。
そう私は思っているし、事実その通りだと信じて疑わない。
「~♪」
だから休日で親が家にいない独りでいるこの時間も、何の良心の呵責もなく過ごせていた。お気に入りのファッション誌で情報を集め、SNSで映える服装を模索し、どんな写真をアップするか考える。
なんてことない、幸せな私の日常。
そこに、
ピンポーン
「ん?」
チャイムの音が鳴る。一瞬動きを止め……すぐに自分以外家に誰も居ないことを思い出す。
(はー……だっるぅ……)
起き上がり、本や小物で散乱した部屋を歩いて部屋から出る。私の家は二階建ての家で私の自室は二階にある。その為部屋の外に脱ぎ散らかしていたスリッパを履き、階段を下りて家の中にある外の子機であるインターホンと繋がった家内部の方の親機を弄る。
「はい、柳川です」
何時もと同じように応える。が、
「? あ、れ……?」
インターホンに取り付けられたカメラの画像には、誰も映っていなかった。
(え、何これ? 悪戯?)
訳が分からなかった。何度か「もしもし! もしもし!」と大声で画面越しに叫ぶが誰かが映ることはない。
本当に悪戯……今のご時世に、ピンポンダッシュされたのだろうか? この異常事態を前に恐怖を感じていた私だが……段々と悪戯されたのでは? という疑念が確信へと変わるに連れて、恐怖が怒りへと塗り替えられていく。
何なんだろう……。元来の直情的な性格から大股に歩いて玄関へと向かう。
コツコツ コツコツ
嫌に大きく、スリッパの音が響く。
玄関のロックを外し、外に出る。
ガチャ
扉を開けると、
「………………?」
そこにはやはり誰も居ない。
やっぱ悪戯か……。ふん、と不快感から鼻を鳴らす。同時に、安堵が胸の内に広がる。
ふと彼方の空を見つめる。夕焼け空も終わりの頃、宵闇の時。
もうそんな時刻か……。そんな感想を抱き、私は踵を返して家の中へと戻ろうとし――
ガサ
音が、した。
なんだ? 近所の悪ガキが姿を見せたのか? と思い、怪訝な表情で音のした方を振り返る。と、
「――――――え?」
その眼前の光景に、驚き、戸惑い、そして――
◇ ◇ ◇
ガラガラと旅行鞄を私、音無希津奈は引いて歩く。夕焼けも終わった宵の刻。夜の静寂が落ち始めた頃、私は木田の家に戻っていた。
(もう少し……もう少し……)
心を無にしてただ急ぐ。必要な物の場所は分かっている。あとは運ぶだけ――!
早ク……早ク……速ク……速ク――――――!
速足で木田の家に急ぐ。その途中、ある十字路に差し掛かって曲がる、と。
「こんばんは」
「あ………………」
思わず、声を上げた。
忘れもしないおとぎ話に出てくるような、黒いローブ姿。自称〝回る夜を歩く者〟んしいて、〝魔女〟と云われたクラスメイト。
「素敵な夜ね」
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