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絆
⑥ 魔女と呼ばう少年
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脇目も振らず、夜の住宅街を疾駆する。
『〝絆〟という言葉について、こんなお話を知っている?』
回夜さんのその〝話〟を聞いた後――頭の中が真っ白になり、そのまま全力で走って去っていってしまった。
(私、は――)
回夜さんの話を聞いて、そんなはずない、そんなことはない、と幾度も頭の中で否定の言葉を浮かべる。
しかし――一度浮かんだ疑念は消えてはくれない。
「はぁ……はぁ……」
無茶苦茶に街中を疾走し、体力が尽きたことで一度止まって荒い息を吐く。
「はぁ……はぁ……っ私は、どうして……!」
独り言を躊躇いもなく街中で呟く。普段は目立つようなことしない。しかし、どうしても言ってしまう。
原因は……分かっている。先の回夜さんの『話』のせいだ。
(あんなの、気にすることないのに……!)
汗だくの中ハンカチで額の汗を拭う。色々とあったが、早く家に帰ろう。うん、そうしよう。
気持ちを切り替え、ハンカチをしまってめちゃくちゃに走って今何処か分からない中家路へ着こうとした、
「音無!」
瞬間だった。
「っ⁉」
急に肩を捕まれる。驚いて、つかんできた手を振り払ってその手の主を見て、
「――え」
固まった。
「こ、光輝……君?」
それは、回夜さんの親戚で、同じ苗字でクラスメイトの、回夜光輝君が怖い表情で私と同じように汗だくで立っていた。
◇ ◇ ◇
「漸く、追いつけた……!」
「……ど、どうしたの……こんな時間に……」
光輝君は普段から学校ではクールで大人びている印象があり、こうして私に話しかけてくれるのも珍しい。しかも、今は夜中だ。
いや、そもそも何故、どうして此処に?
「な、なんで……」
混乱する私に汗だくで同じように息も絶え絶えな様子の光輝君は、真剣な表情で此方を見て話し始めた。
「あいつと……歩美と、一緒に居て……それで急に走っていったから……!」
「え、あ……」
見られていた。その事実に驚き、ぎゅっと胸が締め付けられる。
顔が熱くなり、言葉が出ない。
(見られた……! ううん、でも内容までは知られていない?)
どうしよう。その言葉が脳裏を駆け巡る。回夜さんに自分の話について他言無用と口止めも頼んでいない。クラス中に知られるのは避けたいけど――。
「あいつに……何か、言われたのか?」
「っ……!」
心臓が跳ね上がる。光輝君の瞳には、どこか確信めいたものが宿っていた。
何と言うべきか……。逡巡し、混乱する。しかし、
「あいつには、歩美には気をつけろ……!」
光輝君の言葉は、私の予想とはまるで違っていた。
「……え?」
目が点になる。どういうこと?
「さっき、二人で話してるのを見た。お前達がどういう話をしたか、どんな関係かは知らない。だけど、あいつの言葉には気を付けろ」
有無を言わせない力強さ。迫力に飲まれる私。
そして――
「あいつは……〝魔女〟だ」
鬼気迫る表情で、光輝君はそう言い放った。
『〝絆〟という言葉について、こんなお話を知っている?』
回夜さんのその〝話〟を聞いた後――頭の中が真っ白になり、そのまま全力で走って去っていってしまった。
(私、は――)
回夜さんの話を聞いて、そんなはずない、そんなことはない、と幾度も頭の中で否定の言葉を浮かべる。
しかし――一度浮かんだ疑念は消えてはくれない。
「はぁ……はぁ……」
無茶苦茶に街中を疾走し、体力が尽きたことで一度止まって荒い息を吐く。
「はぁ……はぁ……っ私は、どうして……!」
独り言を躊躇いもなく街中で呟く。普段は目立つようなことしない。しかし、どうしても言ってしまう。
原因は……分かっている。先の回夜さんの『話』のせいだ。
(あんなの、気にすることないのに……!)
汗だくの中ハンカチで額の汗を拭う。色々とあったが、早く家に帰ろう。うん、そうしよう。
気持ちを切り替え、ハンカチをしまってめちゃくちゃに走って今何処か分からない中家路へ着こうとした、
「音無!」
瞬間だった。
「っ⁉」
急に肩を捕まれる。驚いて、つかんできた手を振り払ってその手の主を見て、
「――え」
固まった。
「こ、光輝……君?」
それは、回夜さんの親戚で、同じ苗字でクラスメイトの、回夜光輝君が怖い表情で私と同じように汗だくで立っていた。
◇ ◇ ◇
「漸く、追いつけた……!」
「……ど、どうしたの……こんな時間に……」
光輝君は普段から学校ではクールで大人びている印象があり、こうして私に話しかけてくれるのも珍しい。しかも、今は夜中だ。
いや、そもそも何故、どうして此処に?
「な、なんで……」
混乱する私に汗だくで同じように息も絶え絶えな様子の光輝君は、真剣な表情で此方を見て話し始めた。
「あいつと……歩美と、一緒に居て……それで急に走っていったから……!」
「え、あ……」
見られていた。その事実に驚き、ぎゅっと胸が締め付けられる。
顔が熱くなり、言葉が出ない。
(見られた……! ううん、でも内容までは知られていない?)
どうしよう。その言葉が脳裏を駆け巡る。回夜さんに自分の話について他言無用と口止めも頼んでいない。クラス中に知られるのは避けたいけど――。
「あいつに……何か、言われたのか?」
「っ……!」
心臓が跳ね上がる。光輝君の瞳には、どこか確信めいたものが宿っていた。
何と言うべきか……。逡巡し、混乱する。しかし、
「あいつには、歩美には気をつけろ……!」
光輝君の言葉は、私の予想とはまるで違っていた。
「……え?」
目が点になる。どういうこと?
「さっき、二人で話してるのを見た。お前達がどういう話をしたか、どんな関係かは知らない。だけど、あいつの言葉には気を付けろ」
有無を言わせない力強さ。迫力に飲まれる私。
そして――
「あいつは……〝魔女〟だ」
鬼気迫る表情で、光輝君はそう言い放った。
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