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風花の園で 下
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「おや、そうなんだ」
少女の方を向いて相槌を打つ。場を繋ぐトーク力がないので、少女の方から話しをしてくれるのは嬉しい。
「お母さん、言ってたの。『たんぽぽは花言葉が素敵だ』って」
「花言葉……へぇ」
成程。花言葉からたんぽぽを好きになったのね。
「どんな花言葉があるのかな?」
取り敢えず質問してみると、「うんと……」と少女は暫し逡巡して答えてくれる。
「たんぽぽは『愛の神託』や『誠実』、『幸福』っていう花言葉があるって……」
「へえ……そうなんだ。たんぽぽってそこら中で見かけるけど、そんな綺麗な花ことばがるんだね」
たんぽぽって確か雑草だったよね? それなのに愛の花言葉があるのか。
「あの、綿毛のたんぽぽに息を吹きかけると、綿毛が飛んでいくから……それで愛の花言葉が多いんだよって。綿毛のたんぽぽで花占いとか昔していたからって……」
「花占い……そうなんだ」
花占いから『愛の神託』とか『誠実』なんて言葉が生まれたのね。成程。
「うん……でも、花言葉には幸せな花言葉を持っていても、怖い花言葉も持つのもあるって……」
「怖い花言葉?」
思わず問い返す。少女は少し委縮したようだった。
「四つ葉のクローバー……あれも『幸運』って意味があるけど……他にも『復讐』って意味の花言葉があるって」
「ふ、復讐……」
怖っ⁉ 四つ葉のクローバーって持っていたら幸せになれるんじゃなかったの⁉ そんな、そんな怖い花言葉が備わっているなんて!
「うん……それで……たんぽぽにも……悲しい花言葉があるんだよって……」
「そうなんだ……」
ううむ。なかなか幸せな花言葉だけのお花ってないんだろうか。四つ葉のクローバーですら『復讐』って。贈り物で下手な花とか贈ったら、邪推されそう……。
「それで? たんぽぽの悲しい花言葉って……」
「それ、は……」
少女が口を開きかけた、瞬間。
「あおぃいいいいいいいいいいい!」
ぎゅむ
「はうわ⁉」
突然後ろから突進してきた人物に抱きしめられる。衝撃で口から変な声が漏れた。というか、
「っ白兎! いきなり抱き着くな! びっくりしただろうが!」
「えへへへー。だって、蒼依が遅いんだもん! もうそろそろ移動の時間だよ! 早く馬車に戻らないと!」
振り返ると、白兎がプゥーっと頬を膨らませていた。可愛いだろうけど、そういうのは大人のお姉さま方にやれ! 男の僕にしても意味ないぞ!
「ってそうなの? もう行くのか」
そういえば何時までに帰って来てねとか御者の人に言われていないし、訊いてもいなかった。いや、まあ夢だもんねぇ。
「そっか……じゃあごめんね、僕等はそろそろ行くね」
「あ……うん。私も戻るから……」
いきなりの白兎の登場に呆気にとられたのか。少女は驚いた表情のままこくこくと頷く。
……うん。まあいきなり男が抱き着いて来るのを見たら、驚くわな。
「それじゃあね」
「バイバ~イ!」
僕と白兎が少女に手を振れば、
「うん……さよなら……」
少女もおずおずと手を振り返してくれる。
は~っと息を吐いて来た道を帰る。なんか白兎の登場で感動が薄れたような……?
などと考えていたら、白兎が付いて来ていないことに気付く。
「白兎?」
振り返れば、じっとこちらに背を向けて、少女の方を見つめる白兎の姿が。
んん? どうかした?
「白兎? どうかした?」
「ん⁉ ん~ん、なんでもなーい」
声をかければ、こちらへと急ぎ駆け寄る白兎。
「さー、戻ろう戻ろう!」
「う、うん……そうだね」
さっきまで少女の方を向いて佇んでいたと思えば、今度はぐいぐいと僕の背を押して馬車へと急がせて来る。どうしたんだ?
「……――」
「ん?」
白兎が何か言ったような気がして、再び振り返る。
「ん?」
キョトンとした表情の白兎。んん? 気のせいかな?
「さっき何か言った?」
「ん~? 何も言ってないよ~それより!」
ぷぅっと頬を膨らませる白兎。
「兎は寂しいと死んじゃうんだからね! 俺を放っておかないでよね!」
「兎って……君確かに白兎って名前に兎は言っているけど、兎じゃないでしょうに……」
「いいからいいから! 行くの!」
グイグイと背中を押して急かしてくる。ううむ、なんだろう? 気のせいだったのかな?
首を傾げる僕。うーん、確かに聞こえた気がしたんだけどなあ。
『ごめんね』と、白兎がいった気がしたんだけども……。
少女の方を向いて相槌を打つ。場を繋ぐトーク力がないので、少女の方から話しをしてくれるのは嬉しい。
「お母さん、言ってたの。『たんぽぽは花言葉が素敵だ』って」
「花言葉……へぇ」
成程。花言葉からたんぽぽを好きになったのね。
「どんな花言葉があるのかな?」
取り敢えず質問してみると、「うんと……」と少女は暫し逡巡して答えてくれる。
「たんぽぽは『愛の神託』や『誠実』、『幸福』っていう花言葉があるって……」
「へえ……そうなんだ。たんぽぽってそこら中で見かけるけど、そんな綺麗な花ことばがるんだね」
たんぽぽって確か雑草だったよね? それなのに愛の花言葉があるのか。
「あの、綿毛のたんぽぽに息を吹きかけると、綿毛が飛んでいくから……それで愛の花言葉が多いんだよって。綿毛のたんぽぽで花占いとか昔していたからって……」
「花占い……そうなんだ」
花占いから『愛の神託』とか『誠実』なんて言葉が生まれたのね。成程。
「うん……でも、花言葉には幸せな花言葉を持っていても、怖い花言葉も持つのもあるって……」
「怖い花言葉?」
思わず問い返す。少女は少し委縮したようだった。
「四つ葉のクローバー……あれも『幸運』って意味があるけど……他にも『復讐』って意味の花言葉があるって」
「ふ、復讐……」
怖っ⁉ 四つ葉のクローバーって持っていたら幸せになれるんじゃなかったの⁉ そんな、そんな怖い花言葉が備わっているなんて!
「うん……それで……たんぽぽにも……悲しい花言葉があるんだよって……」
「そうなんだ……」
ううむ。なかなか幸せな花言葉だけのお花ってないんだろうか。四つ葉のクローバーですら『復讐』って。贈り物で下手な花とか贈ったら、邪推されそう……。
「それで? たんぽぽの悲しい花言葉って……」
「それ、は……」
少女が口を開きかけた、瞬間。
「あおぃいいいいいいいいいいい!」
ぎゅむ
「はうわ⁉」
突然後ろから突進してきた人物に抱きしめられる。衝撃で口から変な声が漏れた。というか、
「っ白兎! いきなり抱き着くな! びっくりしただろうが!」
「えへへへー。だって、蒼依が遅いんだもん! もうそろそろ移動の時間だよ! 早く馬車に戻らないと!」
振り返ると、白兎がプゥーっと頬を膨らませていた。可愛いだろうけど、そういうのは大人のお姉さま方にやれ! 男の僕にしても意味ないぞ!
「ってそうなの? もう行くのか」
そういえば何時までに帰って来てねとか御者の人に言われていないし、訊いてもいなかった。いや、まあ夢だもんねぇ。
「そっか……じゃあごめんね、僕等はそろそろ行くね」
「あ……うん。私も戻るから……」
いきなりの白兎の登場に呆気にとられたのか。少女は驚いた表情のままこくこくと頷く。
……うん。まあいきなり男が抱き着いて来るのを見たら、驚くわな。
「それじゃあね」
「バイバ~イ!」
僕と白兎が少女に手を振れば、
「うん……さよなら……」
少女もおずおずと手を振り返してくれる。
は~っと息を吐いて来た道を帰る。なんか白兎の登場で感動が薄れたような……?
などと考えていたら、白兎が付いて来ていないことに気付く。
「白兎?」
振り返れば、じっとこちらに背を向けて、少女の方を見つめる白兎の姿が。
んん? どうかした?
「白兎? どうかした?」
「ん⁉ ん~ん、なんでもなーい」
声をかければ、こちらへと急ぎ駆け寄る白兎。
「さー、戻ろう戻ろう!」
「う、うん……そうだね」
さっきまで少女の方を向いて佇んでいたと思えば、今度はぐいぐいと僕の背を押して馬車へと急がせて来る。どうしたんだ?
「……――」
「ん?」
白兎が何か言ったような気がして、再び振り返る。
「ん?」
キョトンとした表情の白兎。んん? 気のせいかな?
「さっき何か言った?」
「ん~? 何も言ってないよ~それより!」
ぷぅっと頬を膨らませる白兎。
「兎は寂しいと死んじゃうんだからね! 俺を放っておかないでよね!」
「兎って……君確かに白兎って名前に兎は言っているけど、兎じゃないでしょうに……」
「いいからいいから! 行くの!」
グイグイと背中を押して急かしてくる。ううむ、なんだろう? 気のせいだったのかな?
首を傾げる僕。うーん、確かに聞こえた気がしたんだけどなあ。
『ごめんね』と、白兎がいった気がしたんだけども……。
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