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…茉莉の講義って何限目までなんだろ。
俺は茉莉の授業スケジュールは知らねぇ。大学から帰ってきてすぐにゴロリとベッドに寝そべりながら思った。
…いつも何してたっけ?最近は茉莉とほとんど一緒だったから…。
都会は金さえあれば遊べるところが多いけど、あいにく俺には金がない。そういえばどこかに遊びに行くときはいつも茉莉とかアルファが一緒だったなとぼんやりと気づく。バイトでもすればいいのだろうけど、遊びたいと能動的には思えないほどには怠惰だし、ただ大学に通うだけならオメガの援助金で足りるからやる気も出ない。
ふと、棚の上に置いてあるアルファからもらった贈り物が目に入る。そういえば母親もよくプレゼントをもらってはそれを見て喜んでたっけ。…俺は別に置きっぱなしだけど。
そういえば貰ってから中身を確認してないやつもあるなーと思い、おもむろに棚の上の箱をいろいろと開け始めた。
「すごい、机の上がキラキラしてる…。」
ネックレスからブレスレット、茉莉にしか貰ってないと思い込んでたピアスなんかも結構貰っていた。これは…、母親が喜んでいたのもわかる。すごい、綺麗だ。いろいろ手に取ったり眺めたりしながら楽しんでいるとふと首輪が気になった。
そういえばこれ、母親から貰った最初で最後のプレゼントだなぁ。
おもむろに首輪を外して眺めてみる。
「初めてみた時はこれも綺麗だなと思ったんだっけ。」
綺麗な刺繍のような模様が繊細に入っているが、アルファから頸を守るために頑丈な素材でできている。………ん?なんだこれ。こんな窪みあったか?
よく見ると刺繍の一部がへこんでいる。手で触りながらじっくりと見ると、これ、歯形だ!頸を甘噛みしてくる奴はよくいたけど、これ、絶対茉莉だ。茉莉と発情期過ごすまでは無かったし。強く噛みすぎだろ、あいつ。これ、大切にしてたのに………。
はぁぁぁ。と深いため息をついてさっきまでの楽しかった気持ちがもやもやとする。いや、しょうがないけど、首輪ってこういう物だし。まぁ、茉莉の歯形で、それだけラットになってくれてたって思えば……。いやでも、文句くらいは言ってやろう。また歯形付けられたら困る…。
どうしようもないことにうなだれていると茉莉からメッセージがきた。
"今から行く。"
人の気も知らないで。完全に八つ当たりだが返事をする気にもなれず、メッセージだけ見て無視をした。返事をしない俺に茉莉から何個か他にもメッセージがきてたが、それは見ることもせずまた首輪を付けてベッドにゴロリと寝そべった。
メッセージからそれほど時間が経たずに玄関がガチャリと開く音がする。茉莉がくるのはわかっていたので鍵はかけていない。そのまま廊下とキッチンが一体になったところを歩く足音がしてキッチンと部屋を分ける扉が開いた。
「おい、なんでメッセージの返事しねぇんだよ。………なんだこれ。」
開口一番、返事をしないことに文句を言い、机の上のプレゼントの山を見て茉莉が唖然としている。
「別に。アルファから貰ったやつを開けてみてたんだよ。」
ぶっきらぼうに答えると流石に不機嫌な俺に気づいたのか、眉間に皺を寄せてテーブルの近くに茉莉が座る。
「で、なんで玲は不機嫌なの?こんなにプレゼントもらって、可愛げねぇなぁ。……俺があげたブレスレットもあるし。」
がばりとベッドから起き上がり茉莉の近くに座る。
「そんなことはどうでもよくて!」
「そんなこと、ねぇ。」
イライラしている俺とは反対に嫌に冷静なのに揶揄うように俺の手を取り茉莉がくれたのだろうブレスレットをはめられる。そのまま続きを言えと茉莉に目で促されて、怖くなって茉莉から手を引っ込める。
いつもこれだ。俺はイライラしてるのにアルファに睨まれると脅える自分がいる。
茉莉から手を引っ込めてそのまま首輪を外して茉莉の前に突き出す。
「これ!お前の歯形がついてんだけど!強く噛みすぎだろ!大事にしてる首輪なんだからやめろよな。」
最後はちょっと勢いがなくなったが、言い切ってやった。茉莉は俺の突き出した首輪の歯形のところを手でなぞりながら「本当だ。」と呟いた。
「そんなことで怒ってたのかよ。首輪ってそういうもんだろ。逆に頸が守ってもらえてよかったじゃねぇか。」
「そんなことって!あんまもう顔も覚えてねぇけど母親から貰ったやつなんだよ…。」
言いながらなんだかマザコンみたいで嫌だなと思ってきて声が尻すぼみになってしまった。
「…あぁ、そう。これ、母親から貰ったやつね。なら、まぁ、悪かったな。今度からはあんま強く噛まねぇようにするから。ほら、もう首輪付けとけって。」
なんだか適当だな。訝しむように茉莉を見ると苦笑したように「悪かったって。」ともう一度謝られ、俺は渋々首輪をつけて怒りを収めることにした。
俺は茉莉の授業スケジュールは知らねぇ。大学から帰ってきてすぐにゴロリとベッドに寝そべりながら思った。
…いつも何してたっけ?最近は茉莉とほとんど一緒だったから…。
都会は金さえあれば遊べるところが多いけど、あいにく俺には金がない。そういえばどこかに遊びに行くときはいつも茉莉とかアルファが一緒だったなとぼんやりと気づく。バイトでもすればいいのだろうけど、遊びたいと能動的には思えないほどには怠惰だし、ただ大学に通うだけならオメガの援助金で足りるからやる気も出ない。
ふと、棚の上に置いてあるアルファからもらった贈り物が目に入る。そういえば母親もよくプレゼントをもらってはそれを見て喜んでたっけ。…俺は別に置きっぱなしだけど。
そういえば貰ってから中身を確認してないやつもあるなーと思い、おもむろに棚の上の箱をいろいろと開け始めた。
「すごい、机の上がキラキラしてる…。」
ネックレスからブレスレット、茉莉にしか貰ってないと思い込んでたピアスなんかも結構貰っていた。これは…、母親が喜んでいたのもわかる。すごい、綺麗だ。いろいろ手に取ったり眺めたりしながら楽しんでいるとふと首輪が気になった。
そういえばこれ、母親から貰った最初で最後のプレゼントだなぁ。
おもむろに首輪を外して眺めてみる。
「初めてみた時はこれも綺麗だなと思ったんだっけ。」
綺麗な刺繍のような模様が繊細に入っているが、アルファから頸を守るために頑丈な素材でできている。………ん?なんだこれ。こんな窪みあったか?
よく見ると刺繍の一部がへこんでいる。手で触りながらじっくりと見ると、これ、歯形だ!頸を甘噛みしてくる奴はよくいたけど、これ、絶対茉莉だ。茉莉と発情期過ごすまでは無かったし。強く噛みすぎだろ、あいつ。これ、大切にしてたのに………。
はぁぁぁ。と深いため息をついてさっきまでの楽しかった気持ちがもやもやとする。いや、しょうがないけど、首輪ってこういう物だし。まぁ、茉莉の歯形で、それだけラットになってくれてたって思えば……。いやでも、文句くらいは言ってやろう。また歯形付けられたら困る…。
どうしようもないことにうなだれていると茉莉からメッセージがきた。
"今から行く。"
人の気も知らないで。完全に八つ当たりだが返事をする気にもなれず、メッセージだけ見て無視をした。返事をしない俺に茉莉から何個か他にもメッセージがきてたが、それは見ることもせずまた首輪を付けてベッドにゴロリと寝そべった。
メッセージからそれほど時間が経たずに玄関がガチャリと開く音がする。茉莉がくるのはわかっていたので鍵はかけていない。そのまま廊下とキッチンが一体になったところを歩く足音がしてキッチンと部屋を分ける扉が開いた。
「おい、なんでメッセージの返事しねぇんだよ。………なんだこれ。」
開口一番、返事をしないことに文句を言い、机の上のプレゼントの山を見て茉莉が唖然としている。
「別に。アルファから貰ったやつを開けてみてたんだよ。」
ぶっきらぼうに答えると流石に不機嫌な俺に気づいたのか、眉間に皺を寄せてテーブルの近くに茉莉が座る。
「で、なんで玲は不機嫌なの?こんなにプレゼントもらって、可愛げねぇなぁ。……俺があげたブレスレットもあるし。」
がばりとベッドから起き上がり茉莉の近くに座る。
「そんなことはどうでもよくて!」
「そんなこと、ねぇ。」
イライラしている俺とは反対に嫌に冷静なのに揶揄うように俺の手を取り茉莉がくれたのだろうブレスレットをはめられる。そのまま続きを言えと茉莉に目で促されて、怖くなって茉莉から手を引っ込める。
いつもこれだ。俺はイライラしてるのにアルファに睨まれると脅える自分がいる。
茉莉から手を引っ込めてそのまま首輪を外して茉莉の前に突き出す。
「これ!お前の歯形がついてんだけど!強く噛みすぎだろ!大事にしてる首輪なんだからやめろよな。」
最後はちょっと勢いがなくなったが、言い切ってやった。茉莉は俺の突き出した首輪の歯形のところを手でなぞりながら「本当だ。」と呟いた。
「そんなことで怒ってたのかよ。首輪ってそういうもんだろ。逆に頸が守ってもらえてよかったじゃねぇか。」
「そんなことって!あんまもう顔も覚えてねぇけど母親から貰ったやつなんだよ…。」
言いながらなんだかマザコンみたいで嫌だなと思ってきて声が尻すぼみになってしまった。
「…あぁ、そう。これ、母親から貰ったやつね。なら、まぁ、悪かったな。今度からはあんま強く噛まねぇようにするから。ほら、もう首輪付けとけって。」
なんだか適当だな。訝しむように茉莉を見ると苦笑したように「悪かったって。」ともう一度謝られ、俺は渋々首輪をつけて怒りを収めることにした。
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