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「ふっ、あ、んんっ。……あっ、やっ、もうだめ……、茉莉、イク、あっ、イっちゃう。…っあぁぁぁっ‼︎」

はぁはぁと荒い息を整えている途中に茉莉がキスをしてくる。

「ーーっはぁ、………ま、茉莉、苦しい…。」

「苦しいくらいが好きなくせに。」

何度も茉莉にイかせられて涙目になって訴えているのに茉莉は取り合ってくれない。イキすぎてもう苦しい。気持ちいいけど苦しい…。

「うあっ、あっ、んんっ!」

乳首を舐められたかと思えば、また俺のぬかるんだ後孔にゆっくりと茉莉のものが入ってくる。気持ちよくて、苦しくて、訳が分からなくて茉莉の背中に手を回し縋り付く。

「つらいの、玲?」

茉莉が動くのをやめて俺の額の汗を拭ってくれる。苦しくて閉じていた目をゆっくりと開けると心配そうに俺を覗き込む茉莉がいる。

「…っつらいって言うか……気持ち良すぎて…。」

俺の言葉にどこか安心したような顔をする茉莉。

「じゃあ、最後。一緒にイこ。玲。」

そう言って、優しく俺のことを抱きしめるようにして動く茉莉。望んだことなのに最後と言われると寂しくなった。軽く揺さぶられているだけなのに気持ち良すぎてイったばかりなのにまたすぐイキそうになる。

「あっ、ん。……やっ、またっ。……っはぁ、あっあっ、茉莉っ、茉莉っ、あっ、やっ、あぁぁ‼︎」

俺が果てるのと同時に茉莉のものが俺の中にトクトクと注がれる。長くて、多い、アルファ特有のものにお腹が苦しくなってくる。お腹は苦しいはずなのに、なんだか満たされる感じが心地よくて俺はそのまま寝てしまった。寝ている俺の頭を茉莉が撫でてくれたような気がして、俺はひどく安心した。


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「はぁ、この部屋とももうお別れか。広くて気持ちがいいベッドが最高だったな…。」

 次の日の昼頃に目が覚めると茉莉はすでに起きていて、豪華な軽食が溢れんばかりにのっているダイニングテーブルで果物をつまみながらニュースを見ていた。「やっと起きたか。」と声をかけられるままに俺ものそのそとダイニングテーブルへ向かいながら先の言葉を寝起きのぼんやりとした頭で呟く。

「いい部屋だっただろう。玲には勿体ないな。」

ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべたまま、意地の悪いことを言う。もう昨日までのように甲斐甲斐しく俺のことを抱き上げて食べ物を運んでくれる茉莉はいないらしく、大人しく茉莉の向かいの席に座り俺も果物をつまむ。

「茉莉にもまだ分不相応だろ、こんないい部屋。」

「俺ほどのアルファに何言ってんだか。玲ぐらいだぞ、俺の価値を理解してない奴。」

「茉莉こそ何言ってるんだか。ただの同級生だろ。」

茉莉がどれだけすごいアルファでも、俺からすれば結局はただの同級生なのだから、俺に不相応なものは茉莉にも不相応なはずだ。…嫌なほどにこの部屋に茉莉が馴染んでいたとしても。

俺の言葉に目を見張ったかと思えば、不敵な笑みを浮かべる茉莉に見てはいけないものを見てしまったかのように感じて、そのままこの会話は終わりにして目の前の果物を頬張る。

「そろそろ帰るか。」

不意に茉莉が声をかけてくる。

「え?」

「いや、もう飯も食べてダラダラしたし、発情期ヒートも終わったし、やることやってすることないだろ。」

「そりゃ、まぁ、そうだけど…。」

「なに?いい部屋すぎて自分のボロアパートに帰るのが嫌になった?」

「失礼だろ、俺の部屋に。別にそんなんじゃねぇけど…まぁ、帰るか…。」

少しだけ寂しいと思ってしまったのは、ずっと茉莉と一緒にいたからだ。思ったよりも呆気なく終わりを迎えた発情期ヒートに俺はがっかりしている。茉莉に何を期待していたのか…。

茉莉にあけられたピアスを触りながらごにょごにょと口籠もっていると茉莉が立ち上がって腕を引いてきた。

「あんま触ってると傷が感染するぞ。ほら、帰りたくねぇ気持ちもわかるけどさすがに明日から大学行かなきゃだろ。」

「わかってるよ。」

ここでごねても、どうせすぐにあのアパートに帰らないといけない。アパートに帰るのが嫌なのではなく……、こんなこと言ってもどうしようもないかと思い直し、部屋を出る茉莉の後ろ姿を追う。

 俺の肩を抱き寄せて「発情期ヒートセックス気持ち良かったな。」なんて冗談まじりに笑顔で言う茉莉はやっぱり最低で、そんな茉莉を振り払えない俺も、どうかしている。
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