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トラック4 令嬢誘拐、復讐のツバサ
エピローグ
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「博士」
「お、お疲れちゃーん」
ラボの扉を開け入ってきたのは、キョウヤ。その手にはコーヒーカップ。
「ここに置いときますよ」
「あんがと」
「……それで、何かわかりましたか?」
背を向けたまま作業を続けるメイに、彼が聞く。
その内容は――件のメモリアナイツについて。
「うん」
その質問に、軽い口調で返す彼女。キョウヤの方向へ椅子を回し向き直ると、
「あれから色々照合してみたんだけど……あれは『光』の聖剣で間違いにゃいね」
「光、ですか」
「ん。『光』『闇』『水』『天』『地』『磁』『幻』……10年前失われた聖剣のうちの一本……『聖双剣キラメキ』」
「先日取り戻したのが、確か『地』でしたか」
「そ。それに――」
――こんな宇宙の果てまで追ってくるとは――
「あのハイヴァンドが言ってたことを信じるなら、光の聖剣はこの星の外まで飛んで行ってたことになる。道理で見つからないはずだよ」
にゃははは、と笑い、コーヒーを口にするメイ。
そんな彼女をよそに、深刻な顔つきで考え込むキョウヤ。
「そんな聖剣を所持しているとなると……彼は一体、何者なんでしょうか」
「確かにねー。でもまぁ、あんまり心配いらないんじゃにゃいかな?」
「何を根拠にそんな」
「聖剣……厳密にはメモリアレコードは使い手を選ぶってことは知ってるでしょ?」
「それは、はい」
「つまりそういうことよ」
「説明になってない気がしますが……?」
「あっはは、バレちった?」
※
「くぁ……あ」
夜。大あくびをしながら背伸びをし、それからベッドにどさりと倒れ込む。
今日はいろいろありすぎて、ホントに疲れた。
昨日から数えて2日ほど寝てなかったこともあって、俺の眠気はマックスだ。
このまま目を閉じれば、すぐ夢の中だろう。
「ん?」
けど、そうはいかなかった。コンコンと鳴る音に、軽く返事を返す。
立ち上がってドアを開けると、そこには――
「あれ、どうしたんすか?」
少し頬の赤い、センパイの姿。軽くお辞儀をすると、そのまま部屋へと入ってくる。
俺は再びベッドに腰掛け、センパイもその横に座った。
「「……」」
暫し、互いに沈黙。何とも言えない空気が流れだす。
あれ、俺なんか怒らせるようなことしたっけ――そんなことを考えていると。
「あの」
唐突に、センパイが口を開いた。
「押忍」
戸惑いつつも、返す。
「助けに来ていただいて、本当にありがとうございました」
ああ、何だそんなことか。俺は安心し、ほっと息をついた。そして笑って見せると、
「よしてくださいよセンパイ。当たり前じゃないですか」
胸を叩いて、そう言った。
「……当たり前、ですか」
「はい!もー、今更水臭いんですから」
そんなやり取りをしていると。
「うぉあ!?」
突然、センパイが俺の胸元へ寄りかかってきた。
慌てて受け止めると、かすかな震えが伝わってくる。
ああ、そういうことか。
「お疲れさんです」
後は何も言わない。
俺はそっと腕を回し、その背中を軽く叩いた――
「お、お疲れちゃーん」
ラボの扉を開け入ってきたのは、キョウヤ。その手にはコーヒーカップ。
「ここに置いときますよ」
「あんがと」
「……それで、何かわかりましたか?」
背を向けたまま作業を続けるメイに、彼が聞く。
その内容は――件のメモリアナイツについて。
「うん」
その質問に、軽い口調で返す彼女。キョウヤの方向へ椅子を回し向き直ると、
「あれから色々照合してみたんだけど……あれは『光』の聖剣で間違いにゃいね」
「光、ですか」
「ん。『光』『闇』『水』『天』『地』『磁』『幻』……10年前失われた聖剣のうちの一本……『聖双剣キラメキ』」
「先日取り戻したのが、確か『地』でしたか」
「そ。それに――」
――こんな宇宙の果てまで追ってくるとは――
「あのハイヴァンドが言ってたことを信じるなら、光の聖剣はこの星の外まで飛んで行ってたことになる。道理で見つからないはずだよ」
にゃははは、と笑い、コーヒーを口にするメイ。
そんな彼女をよそに、深刻な顔つきで考え込むキョウヤ。
「そんな聖剣を所持しているとなると……彼は一体、何者なんでしょうか」
「確かにねー。でもまぁ、あんまり心配いらないんじゃにゃいかな?」
「何を根拠にそんな」
「聖剣……厳密にはメモリアレコードは使い手を選ぶってことは知ってるでしょ?」
「それは、はい」
「つまりそういうことよ」
「説明になってない気がしますが……?」
「あっはは、バレちった?」
※
「くぁ……あ」
夜。大あくびをしながら背伸びをし、それからベッドにどさりと倒れ込む。
今日はいろいろありすぎて、ホントに疲れた。
昨日から数えて2日ほど寝てなかったこともあって、俺の眠気はマックスだ。
このまま目を閉じれば、すぐ夢の中だろう。
「ん?」
けど、そうはいかなかった。コンコンと鳴る音に、軽く返事を返す。
立ち上がってドアを開けると、そこには――
「あれ、どうしたんすか?」
少し頬の赤い、センパイの姿。軽くお辞儀をすると、そのまま部屋へと入ってくる。
俺は再びベッドに腰掛け、センパイもその横に座った。
「「……」」
暫し、互いに沈黙。何とも言えない空気が流れだす。
あれ、俺なんか怒らせるようなことしたっけ――そんなことを考えていると。
「あの」
唐突に、センパイが口を開いた。
「押忍」
戸惑いつつも、返す。
「助けに来ていただいて、本当にありがとうございました」
ああ、何だそんなことか。俺は安心し、ほっと息をついた。そして笑って見せると、
「よしてくださいよセンパイ。当たり前じゃないですか」
胸を叩いて、そう言った。
「……当たり前、ですか」
「はい!もー、今更水臭いんですから」
そんなやり取りをしていると。
「うぉあ!?」
突然、センパイが俺の胸元へ寄りかかってきた。
慌てて受け止めると、かすかな震えが伝わってくる。
ああ、そういうことか。
「お疲れさんです」
後は何も言わない。
俺はそっと腕を回し、その背中を軽く叩いた――
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