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世界の平和を祈った聖者の話

27 会いたい

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「二日後だ。これを受けよう。」

 王都への護衛依頼はあったらしい。運が良かった。マールクが早速、依頼を受ける手続きをしている。

「家へ戻るか。宿に泊まって待つか。」

 さて、二日後までどうするかと頭を悩ませた。
 借りている部屋は、しばらく戻らないつもりでしっかりと片付けてきた。俺が治療院にしていた小屋のように解約しようかとも考えたけれど、二ヶ月暮らす間に増えた食器や調理具、風呂の道具、衣類、寝具類をすべて持ち運ぶ訳にもいかない。処分するのも時間がかかる。考えた末、拠点とする場所は必要だということで部屋の契約は切らず、物は置いてきた。お金はかかるが、休める場所が必ずあるのは大事なことだ。だから、家へ戻れば余計なお金はかからないけれど。

「教会の手の者が来るかもしれない。宿にしよう。」

 ガウナーの言うことが正しい気がした。

「なんだ。家はそのままなのか。治療院はもう片付けたのに?」

 横で聞いていたムスカが、意外そうに言う。

「治療院小屋の賃貸契約が切れてたから、もう帰ってこないのかと思ってたよ。」
「そんなことまで調べたの?」

 一日も経ってないのに。
 この人、ちょっと怖いな。

「あそこのおかげで命拾いした者が何人いると思っているんだ?冒険者ギルドとして発表しなくてはならない死者数は、とても減っていたんだぞ。教会の治療院まで行って間に合わない奴は多かったしな。」
「完全に治したのは、ムスカさんだけですよ?」
「数日経ったら皆、それなりに回復していたさ。冒険者に戻れた者も大勢いたし、冒険者に戻れなくても日常生活は送れるようになっていた。ギルドとして、あの治療院には感謝しているとギルドマスターは言っていたぞ。」
「ふーん。」

 感謝するなら対価で示してほしかったなあ、なんてね。
 そんな考えが頭を過ってから、教会の聖女たちを思う。聖女と認定されてからは、たくさんの人を助けるために自分を捧げている女の人たち。治療中に吐いたりしないために食事も制限して、治療中の自分の苦しさも、また神様に近付いたと喜びに変えていた女の人たち。
 皆の考える、聖女の正しい姿なんだろう。
 俺には無理だ。
 そういえば父さんも、人を助けるための行動が一生懸命になり、自分の身を後回しにしがちだった。平和な村だったし、今考えると、村の周りの魔物も弱かったし、父さんは光の腕輪を着けていて魔力だけで治癒魔法を使えるから、無事だったんだと思う。
 そんな風にならない俺は、対価を求める俺は、本当に聖者なんだろうか?
 ああ、ユーゴーに会いたい。
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