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小さな幸せを願った勇者の話
96 またね
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光の魔力が腕輪に足りなかっただけ。だから、それさえ充ちればほら、目が覚める。
夢も見なかった。目を覚ましてすぐに体を起こし、身構える。気を失う前と同じ、宿屋の部屋。
「ユ、ユーゴー。」
すぐに動かせるようにと、握られていた手を払って起き上がったのが良くなかった。セナが目に涙を浮かべている。
「あ、ごめん。」
警戒を解いて謝ると、セナは首を振って泣いた。
「お、俺が、俺が悪かった。ごめん、ごめんな、ユーゴー。」
え?何が?
「俺が、光の魔力を込めてもらうのを忘れてたんだから、セナは何も悪くないだろう?急に旅に出たし、仕方ないんじゃないか。」
「違う、そうじゃない。勇者と名乗れって言ったこと。ユーゴーは、勇者をやりたくないと教えてくれていたのに。」
ああ。それか。
例えセナに言われても、やることは無いだろうと思っていたが……。
「セナが、やれと言うならやろうか?」
たった一人、心を預ける相手がそうして欲しいと言うのなら、それに逆らって生きた所で楽しくもない。それなら、わざわざ神の意思に反発して苦しむ必要もない。
「ユーゴー?」
光の腕輪を外して、セナの腕に嵌めた。
「じゃ、魔物を狩ってくる。俺の鑑定の儀まではまだ間があるから、今できることはレベルを上げるだけなんだ。狩った魔物を焼いて食えば、俺は生きていける。前に、もっと小さいときからそうしてたからな。セナはちゃんとお金を稼いでご飯を食べろよ。」
俺がレベルを上げに行くとの意思を示しているので、頭痛は起こらない。
そんなに鍛えてないから、寝起きすぐに動くことには慣れていないが、頭を一つ振ってベッドから下りる。
顔を洗おうとふらふら歩き出したらセナに抱きつかれた。
「セナ。」
何も言わないし、離れてもくれないセナの頭を見下ろす。俺たちにはずいぶん、身長差が出てきたな。
「俺の誕生日の後で会おう。鑑定の儀は、王都の教会で受ける。すぐに勇者パーティとして活動したかったら、近くに居て。一緒に王様に挨拶に行って、お金をもらえるようにしよう。人助けはその後になるけど、ごめんな。今の俺には、誰かを守りつつ魔物を倒すことが難しい。」
セナは、小さな子どものように涙を流しながら首を横に振り続けた。
全然、分からない。
伝えることだけ伝えておかなければ。
「たぶん、その光の腕輪があれば、治癒魔法を使っても魔力分だけで終わると思う。そういう仕組みの魔法具だ。命が削られる心配は無いから、思う存分、治癒魔法を使えるよ。今まで、借りててごめん。これは、セナのものだったんじゃないかな?」
ぐい、としがみつくセナを体からはがす。どうしてそんなに悲しそうな顔で泣くの?セナの希望通りの行動をしようとしてるのに。
顔を洗って、旅装を整える。自分の荷物から、お金をすべてセナの荷物に移した。
「四年間ありがとう、セナ。俺、楽しかった。またね。」
夢も見なかった。目を覚ましてすぐに体を起こし、身構える。気を失う前と同じ、宿屋の部屋。
「ユ、ユーゴー。」
すぐに動かせるようにと、握られていた手を払って起き上がったのが良くなかった。セナが目に涙を浮かべている。
「あ、ごめん。」
警戒を解いて謝ると、セナは首を振って泣いた。
「お、俺が、俺が悪かった。ごめん、ごめんな、ユーゴー。」
え?何が?
「俺が、光の魔力を込めてもらうのを忘れてたんだから、セナは何も悪くないだろう?急に旅に出たし、仕方ないんじゃないか。」
「違う、そうじゃない。勇者と名乗れって言ったこと。ユーゴーは、勇者をやりたくないと教えてくれていたのに。」
ああ。それか。
例えセナに言われても、やることは無いだろうと思っていたが……。
「セナが、やれと言うならやろうか?」
たった一人、心を預ける相手がそうして欲しいと言うのなら、それに逆らって生きた所で楽しくもない。それなら、わざわざ神の意思に反発して苦しむ必要もない。
「ユーゴー?」
光の腕輪を外して、セナの腕に嵌めた。
「じゃ、魔物を狩ってくる。俺の鑑定の儀まではまだ間があるから、今できることはレベルを上げるだけなんだ。狩った魔物を焼いて食えば、俺は生きていける。前に、もっと小さいときからそうしてたからな。セナはちゃんとお金を稼いでご飯を食べろよ。」
俺がレベルを上げに行くとの意思を示しているので、頭痛は起こらない。
そんなに鍛えてないから、寝起きすぐに動くことには慣れていないが、頭を一つ振ってベッドから下りる。
顔を洗おうとふらふら歩き出したらセナに抱きつかれた。
「セナ。」
何も言わないし、離れてもくれないセナの頭を見下ろす。俺たちにはずいぶん、身長差が出てきたな。
「俺の誕生日の後で会おう。鑑定の儀は、王都の教会で受ける。すぐに勇者パーティとして活動したかったら、近くに居て。一緒に王様に挨拶に行って、お金をもらえるようにしよう。人助けはその後になるけど、ごめんな。今の俺には、誰かを守りつつ魔物を倒すことが難しい。」
セナは、小さな子どものように涙を流しながら首を横に振り続けた。
全然、分からない。
伝えることだけ伝えておかなければ。
「たぶん、その光の腕輪があれば、治癒魔法を使っても魔力分だけで終わると思う。そういう仕組みの魔法具だ。命が削られる心配は無いから、思う存分、治癒魔法を使えるよ。今まで、借りててごめん。これは、セナのものだったんじゃないかな?」
ぐい、としがみつくセナを体からはがす。どうしてそんなに悲しそうな顔で泣くの?セナの希望通りの行動をしようとしてるのに。
顔を洗って、旅装を整える。自分の荷物から、お金をすべてセナの荷物に移した。
「四年間ありがとう、セナ。俺、楽しかった。またね。」
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