70 / 211
小さな幸せを願った勇者の話
69 楽しい学校生活
しおりを挟む
翌日も、その次の日も、学校は臨時休校となった。朝から冒険者ギルドへ行って依頼を受け、薬草を摘み、ガウナーに教えてもらった大衆食堂で昼ごはんを食べて、また昼からも薬草を摘んだ。
無事に冒険者登録ができたマールクも一緒に、四人で出かけてご飯を食べて、依頼料の小遣いを手にして喜んだ。マールクは、初日に街へ一人で出たときに、騎士服に似た形の動きやすい服が売っている店を探していてくれて、俺がセナの護衛騎士だと言えるような格好を整えてくれた。
なかなか値が張ったので手持ちの金では足りず、マールクに貸してもらって購入した。手持ちの金、というのは、セナを王都へ連れてくるために用意された金を懐に入れたものの残りである。多めに準備されていたとはいえ三人分であり、俺の分の旅費も出していると、節約しつつ来ても多くは残らなかったのだ。
薬草摘みだけでは返せそうになく、毎日の昼食代で消えていくので、ランク上げのための金も借りなくてはいけないかもしれない。ランクが上がったら魔物退治でもして、ひと息に金を稼がないと借金ばかりが増えるかもしれない。
寮は、三日目に街から戻ったときに一般寮へ移っていいと言われて、そちらに引っ越しをすることができた。
引っ越しといっても、荷物などほとんど無く、旅の荷物にセナの制服と教科書が増えた程度で、身軽に移動して終わった。一般寮は二人部屋と一人部屋があるようだが、マールクとガウナーに二人部屋が与えられ、セナに一人部屋が与えられた。狭いが、一人部屋で良かった。これで安心して二人でいることができる。
昼ごはん代や文房具を買うための雑費的なお金は、月に銀貨十五枚貰えるようだ。やはり、セナ一人でも下着や服の替えを買う余裕はほとんど無さそうで、時間がある時には冒険者ギルドで金を稼いでおかなくてはいけないようだ。
「今日からこのクラスで共に学ぶことになったセナ君だ。仲良くするように。」
セナが、ようやくCクラスで紹介してもらうことができた。もう三日も寮にいるので、すでに顔見知りの者も多く、特に騒ぎもなかった。ただ、平民のクラスで護衛が付いていることが珍しかったらしい。
「ユーゴーも生徒なんだと思ってた。」
寮では、セナと一緒に食堂で食事を摂り、一緒に風呂に入っている同じくらいの年齢の俺も、そのように見られていたらしい。
教室の後ろでずっと立っている俺に、クラスの子が休憩時間に話しかけてくれたりする。
「ね、ユーゴー。ユーゴーも座っちゃ駄目なのかな。」
セナは申し訳無さそうに眉を下げているが、護衛って皆、立っているんじゃないのかな?
マールクとガウナーは、一日交代で俺たちに付いてきて、退屈そうに廊下で立っていたけれど、何日かしたら椅子を借りて座って授業を聞き始めたので、俺にも教室内での椅子が用意された。教師も、立っていられると気になるから座っていてくれた方がいい、と言ってくれ、一週間もする頃には、セナの教科書を一緒に見ながら授業を受ける、二人で楽しい学校生活が始まっていた。
無事に冒険者登録ができたマールクも一緒に、四人で出かけてご飯を食べて、依頼料の小遣いを手にして喜んだ。マールクは、初日に街へ一人で出たときに、騎士服に似た形の動きやすい服が売っている店を探していてくれて、俺がセナの護衛騎士だと言えるような格好を整えてくれた。
なかなか値が張ったので手持ちの金では足りず、マールクに貸してもらって購入した。手持ちの金、というのは、セナを王都へ連れてくるために用意された金を懐に入れたものの残りである。多めに準備されていたとはいえ三人分であり、俺の分の旅費も出していると、節約しつつ来ても多くは残らなかったのだ。
薬草摘みだけでは返せそうになく、毎日の昼食代で消えていくので、ランク上げのための金も借りなくてはいけないかもしれない。ランクが上がったら魔物退治でもして、ひと息に金を稼がないと借金ばかりが増えるかもしれない。
寮は、三日目に街から戻ったときに一般寮へ移っていいと言われて、そちらに引っ越しをすることができた。
引っ越しといっても、荷物などほとんど無く、旅の荷物にセナの制服と教科書が増えた程度で、身軽に移動して終わった。一般寮は二人部屋と一人部屋があるようだが、マールクとガウナーに二人部屋が与えられ、セナに一人部屋が与えられた。狭いが、一人部屋で良かった。これで安心して二人でいることができる。
昼ごはん代や文房具を買うための雑費的なお金は、月に銀貨十五枚貰えるようだ。やはり、セナ一人でも下着や服の替えを買う余裕はほとんど無さそうで、時間がある時には冒険者ギルドで金を稼いでおかなくてはいけないようだ。
「今日からこのクラスで共に学ぶことになったセナ君だ。仲良くするように。」
セナが、ようやくCクラスで紹介してもらうことができた。もう三日も寮にいるので、すでに顔見知りの者も多く、特に騒ぎもなかった。ただ、平民のクラスで護衛が付いていることが珍しかったらしい。
「ユーゴーも生徒なんだと思ってた。」
寮では、セナと一緒に食堂で食事を摂り、一緒に風呂に入っている同じくらいの年齢の俺も、そのように見られていたらしい。
教室の後ろでずっと立っている俺に、クラスの子が休憩時間に話しかけてくれたりする。
「ね、ユーゴー。ユーゴーも座っちゃ駄目なのかな。」
セナは申し訳無さそうに眉を下げているが、護衛って皆、立っているんじゃないのかな?
マールクとガウナーは、一日交代で俺たちに付いてきて、退屈そうに廊下で立っていたけれど、何日かしたら椅子を借りて座って授業を聞き始めたので、俺にも教室内での椅子が用意された。教師も、立っていられると気になるから座っていてくれた方がいい、と言ってくれ、一週間もする頃には、セナの教科書を一緒に見ながら授業を受ける、二人で楽しい学校生活が始まっていた。
67
お気に入りに追加
450
あなたにおすすめの小説

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました
むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる