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小さな幸せを願った勇者の話
43 嫌な予感
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城へは、すぐに入れてもらえた。ハルクが、王から正式な依頼を受けた騎士だったから、ということもあるだろうが、あまりの歓迎ぶりに嫌な予感しかしない。
俺を入り口で見咎めなかった所も、焦りが感じられた。
誰か、治癒魔法が必要な身分の高い人間がいる、としか思えない。神託の聖者に治してもらうために、王都へ呼んだのか?セナの魔法学校入学は、口実?
この時期はまだ、前世でも勇者の神託を受けていないため、俺は村に住んでいた。だから、誰が聖者に治して欲しがっているのかが分からない。セナは、どうだった?セナは前世でもすでに王都に呼ばれていたのだったか?いや、俺と同じ頃に魔法学校に入学させられていたような……。
あまり覚えていない。深く他人に興味を持たないように生きていたからな。どちらにしろ、この時期に調子が悪いなら聖者に治してもらうことができないのが、神の定めた運命で間違いないはずだ。
どの口が言っているのか、って話だが。
考え込んでいるうちに、長い廊下を進み階段を上がって、かなり奥の部屋へと通される。幾つかの場所に衛兵はいたが、俺たちの案内人は、顔だけで通れるほどの権力者のようだったらしく、すべての衛兵が頭を下げて通してくれた。
「神託の聖者さまに頼みがある。」
長ソファが向い合わせで置いてあり、真ん中に大きなテーブル、更に一人掛けのソファが一つ置いてある部屋に案内され、席に着くと同時に案内人は口を開いた。
まだ、挨拶を交わしあってもいない。部屋に控えていたメイドが、静かに紅茶を準備し始めた音だけが響く。
向かい合って座り、そう口を開いた所でようやくそこに三人の人間が座っていることに気付いたようである。
「これは……。騎士よ。何故、聖者さまが二人おるのか?」
ハルクの名前も知らないらしい。
「はっ。一人は神託の聖者さまの護衛でございます。」
「護衛、だと?お前がいて、何故そのような者がいるのだ。」
「その、聖者さまは小さな村でお育ちになり、剣の腕も立たず魔法の使い方も知らないから心配だと言うことで、魔法学校でもそのまま護衛をする、という幼馴染みの子どもが付いて参りました。」
「何を言っているのか分からぬ。騎士が迎えに行って、何が心配なのだ。しかも、その護衛とやらも村育ちだろう。同じようなものではないか!」
「は、しかし、不安な気持ちを、私では、その。」
「もうよい。」
要領を得ないハルクの言葉に焦れた案内人が話を切った所で、紅茶が運ばれて、優雅に目の前に置かれていった。真ん中には、焼き菓子も。何やら甘い匂いが漂って、俺たちは思わずそちらへ目線をやった。
「はあ。」
ため息が聞こえて、前を向く。案内人は、紅茶を一口飲んで気持ちを整えたようだ。
「神の遣わしめた聖者であることに間違いがなければ良い。姫の病を癒してほしい。」
俺を入り口で見咎めなかった所も、焦りが感じられた。
誰か、治癒魔法が必要な身分の高い人間がいる、としか思えない。神託の聖者に治してもらうために、王都へ呼んだのか?セナの魔法学校入学は、口実?
この時期はまだ、前世でも勇者の神託を受けていないため、俺は村に住んでいた。だから、誰が聖者に治して欲しがっているのかが分からない。セナは、どうだった?セナは前世でもすでに王都に呼ばれていたのだったか?いや、俺と同じ頃に魔法学校に入学させられていたような……。
あまり覚えていない。深く他人に興味を持たないように生きていたからな。どちらにしろ、この時期に調子が悪いなら聖者に治してもらうことができないのが、神の定めた運命で間違いないはずだ。
どの口が言っているのか、って話だが。
考え込んでいるうちに、長い廊下を進み階段を上がって、かなり奥の部屋へと通される。幾つかの場所に衛兵はいたが、俺たちの案内人は、顔だけで通れるほどの権力者のようだったらしく、すべての衛兵が頭を下げて通してくれた。
「神託の聖者さまに頼みがある。」
長ソファが向い合わせで置いてあり、真ん中に大きなテーブル、更に一人掛けのソファが一つ置いてある部屋に案内され、席に着くと同時に案内人は口を開いた。
まだ、挨拶を交わしあってもいない。部屋に控えていたメイドが、静かに紅茶を準備し始めた音だけが響く。
向かい合って座り、そう口を開いた所でようやくそこに三人の人間が座っていることに気付いたようである。
「これは……。騎士よ。何故、聖者さまが二人おるのか?」
ハルクの名前も知らないらしい。
「はっ。一人は神託の聖者さまの護衛でございます。」
「護衛、だと?お前がいて、何故そのような者がいるのだ。」
「その、聖者さまは小さな村でお育ちになり、剣の腕も立たず魔法の使い方も知らないから心配だと言うことで、魔法学校でもそのまま護衛をする、という幼馴染みの子どもが付いて参りました。」
「何を言っているのか分からぬ。騎士が迎えに行って、何が心配なのだ。しかも、その護衛とやらも村育ちだろう。同じようなものではないか!」
「は、しかし、不安な気持ちを、私では、その。」
「もうよい。」
要領を得ないハルクの言葉に焦れた案内人が話を切った所で、紅茶が運ばれて、優雅に目の前に置かれていった。真ん中には、焼き菓子も。何やら甘い匂いが漂って、俺たちは思わずそちらへ目線をやった。
「はあ。」
ため息が聞こえて、前を向く。案内人は、紅茶を一口飲んで気持ちを整えたようだ。
「神の遣わしめた聖者であることに間違いがなければ良い。姫の病を癒してほしい。」
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