【完結】何度でもやり直しましょう。愛しい人と共に送れる人生を。

かずえ

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快璃の章

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 潜角せんかくが、商人が使う馬車を手配していた。商品を積む荷台を屋根付きのものにし、布団を敷き詰めてある。そこに、まり真鶴まなづるかくを積み込んだ。
 あかつきの国を早々に離れなければいけないが、怪我人を置いていけない。ここでは医者を呼ぶこともできないので、無理を押しても連れ出さねばならなかったのだ。
 耶麻やまの国で合流することにして、幾人かに別れて出立した。玻璃はりは置いて行くつもりであったが、真鶴まなづるから離れようとしなかったので、馬車に放り込んだ。
 みかどより、こちらの動きの方が早かったようだ。当然だろう。誰一人欠けることなく国境を通り抜けて耶麻やまの国へ着いた。
 即日、耶麻やまの国からあかつきの国へ絶縁宣言が出され、国境が閉じられた。続けて、あけの国からも同じようにあかつきの国との縁を切る旨が発表されて、国境が閉じられる。二国は、本格的に軍を動かしてあかつきの国との境目に配備した。
 俺たちを追うために、その二国に兵を進めてきていたあかつきの国であったが、しょせん、追っ手程度の人数である。本格的な戦支度をした軍勢を前に、驚いて逃げ帰った。
 三強のうちの二国が反旗を翻した話は瞬く間に広がった。耶麻やまの国は、絶縁宣言をすると同時に周辺国へもその旨の使いを出していたため、各国は慌てて学校に預けていた子弟を呼び戻したらしい。それぞれが呼び戻すのが、間に合ったのか間に合わなかったのかは、分からない。だが、そのまま人質に取られていたとしても諦めた国もあったのだろう。あかつきの国から周りの国は離れ、小国は耶麻やまの国やあけの国に庇護を求めた。二国は同盟関係であることを早々に発表していたので、どちらか近い国に頼った形である。あかつきの国を中心に平穏を保っていた国々は一時騒然としたが、あかつきの国は内政が荒れて、抗議の攻撃を仕掛ける余裕が無かった。
 皇家に男児が生まれないしゅが解けないばかりか、次期みかどである玻璃皇子はりのみこが行方知れずとなったのだ。皇家を見限る者も出て、男児の生まれている家が力を持ち始めた。内乱の日も近いだろう。
 玻璃はりは静かに、与えられた屋敷で真鶴まなづるかくと暮らしている。帰る気は全く無いようだった。
 みこは、まりの怪我が治るのを見届けて、じんと二人で旅に出た。元の世界へ帰る手立てを見つけたいのだと言う。疲れたら帰っておいでと送り出した。
 透子とうこには新しい命が宿り、俺たちはようやく、術式の輪から抜け出して人生を送り始めた。



終わり
 
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感想 3

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みんなの感想(3件)

柚木ゆず
2021.03.26 柚木ゆず

本日、真鶴の章11まで拝読しました。

自分はお昼の休憩が少し長くありますので、こちらの作品はいつもその際に(出先のPCで)拝読しておりまして。
毎回、非常によい時間となっております。

それぞれが(キャラクターさん達が)、しっかりと存在しているので。
その一挙手一投足が気になり、夢中になってしまうのですよね。


今日は自宅PCでの拝読でしたが、いつもと同じく、前のめり気味にモニターを見つめておりました。

2021.03.26 かずえ

いつも感想を頂き、ありがとうございます。

柚木さまの作品を、私もいつも楽しく読んでいます。

私の作品の続きを楽しみにしてくださっているとのことで、とても励みになります。
これからも、よろしくお願いしますm(_ _)m

解除
ま
2021.03.25
ネタバレ含む
2021.03.25 かずえ

感想を、ありがとうございます。
どちらの作品も読んで頂いて、とても嬉しいです。
記憶がある方が有利なので、どうしても先手を取られてしまって悔しいところです(-_-#)
深剣、私もお気に入りです。切られた回で、国を捨てて友人を選んだ侠気、今回も記憶ないけど友人の話を信じるようなところ、こんな友がいるかいないかが双子の運命の分かれ目でした。
これからも、よろしくお願いします(^-^)

解除
柚木ゆず
2021.02.06 柚木ゆず

恋愛小説大賞のページでタイトルを発見し、クリックをさせていただきました。

本日、2まで拝読しました。
読み始めた瞬間に、『重厚なストーリーだ』『かなり練られている』。そう感じるクオリティーでして、一気に物語の世界に引き込まれました。

この人生が、どう未来へと伸びてゆくのか。
これからも、見守らせていただきます。

2021.02.06 かずえ

感想をありがとうございます。割りと心のままに書いていくタイプなのですが、一度、練ったものを書いてみたくて試しています。上手くいくか分からず、早くも物語が予定から外れていたりしますが、見守って頂けると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。

解除

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