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快璃の章

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 すでに身分を捨てた俺たちだが、城へ入ることは簡単だった。たった一人の直系の皇子みこを縛り上げて連れているのだ。

快璃かいりさま。これは、一体……。」
「どうか玻璃皇子はりのみこをお離しください。」
「こんなことをされて、あけの国は何をお考えなのか。」

 すべての雑音を無視して、真っ直ぐに父の執務室を目指す。玻璃はりはずっと、一言も発しなかった。術士は、申し訳ないが付き合ってもらっている。放すと、何をするか分からない恐ろしさがあるからだ。
 騒ぎはすでに伝わっていたらしい。
 執務室から出てきた父が、こちらを睨み付けていた。

「お久しぶりでございます。」

 全員できちんと礼は取る。俺たちは、話し合いをしに来たのだ。

「何を考えている、快璃かいり。」
「皇家にしゅをかけた犯人を、捕まえましてございます。」
「なに?」
「執務室でお話致しませんか?」

 廊下では、人の目や耳が多すぎる。困るのは俺ではない。

「……入れ。」

 父も気付いたのだろう。執務室へと身を翻した。

みかど。危険です。」

 護衛が刀に手をかけながら、周りを取り囲んでいる。こちらも、かり啄木鳥きつつきが刀に手をかけていた。

「俺は、話をしにきた。荒事は望まない。」
玻璃皇子はりのみこを拘束しておいて、そのような言い訳が通じるとでも?」

 護衛の一人が言うが、気にせず父に続いた。じりじりと間を詰めてくるのを無視して、仲間六人と、拘束した二人で中へ入り、戸を閉めた。畳の間で、腰を下ろす。かり啄木鳥きつつきは立ったまま辺りを警戒した。玻璃はりはされるがまま、腰を下ろして黙っている。

みかどに奏上申し上げます。しゅをかけたのは玻璃皇子はりのみこでございます。」

 父の言葉を待つ間が惜しい。俺は、礼儀を無視して先に口を開いた。

「は。馬鹿馬鹿しい。皇家へのしゅを何故皇子みこが?自らの首を絞めているではないか。」
「そう、馬鹿馬鹿しい話です。しかし俺は、本人から聞きました。どうぞ、お尋ねください。そして、ご判断を。」
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