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快璃の章
15
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すでに身分を捨てた俺たちだが、城へ入ることは簡単だった。たった一人の直系の皇子を縛り上げて連れているのだ。
「快璃さま。これは、一体……。」
「どうか玻璃皇子をお離しください。」
「こんなことをされて、明の国は何をお考えなのか。」
すべての雑音を無視して、真っ直ぐに父の執務室を目指す。玻璃はずっと、一言も発しなかった。術士は、申し訳ないが付き合ってもらっている。放すと、何をするか分からない恐ろしさがあるからだ。
騒ぎはすでに伝わっていたらしい。
執務室から出てきた父が、こちらを睨み付けていた。
「お久しぶりでございます。」
全員できちんと礼は取る。俺たちは、話し合いをしに来たのだ。
「何を考えている、快璃。」
「皇家に呪をかけた犯人を、捕まえましてございます。」
「なに?」
「執務室でお話致しませんか?」
廊下では、人の目や耳が多すぎる。困るのは俺ではない。
「……入れ。」
父も気付いたのだろう。執務室へと身を翻した。
「帝。危険です。」
護衛が刀に手をかけながら、周りを取り囲んでいる。こちらも、狩と啄木鳥が刀に手をかけていた。
「俺は、話をしにきた。荒事は望まない。」
「玻璃皇子を拘束しておいて、そのような言い訳が通じるとでも?」
護衛の一人が言うが、気にせず父に続いた。じりじりと間を詰めてくるのを無視して、仲間六人と、拘束した二人で中へ入り、戸を閉めた。畳の間で、腰を下ろす。狩と啄木鳥は立ったまま辺りを警戒した。玻璃はされるがまま、腰を下ろして黙っている。
「帝に奏上申し上げます。呪をかけたのは玻璃皇子でございます。」
父の言葉を待つ間が惜しい。俺は、礼儀を無視して先に口を開いた。
「は。馬鹿馬鹿しい。皇家への呪を何故皇子が?自らの首を絞めているではないか。」
「そう、馬鹿馬鹿しい話です。しかし俺は、本人から聞きました。どうぞ、お尋ねください。そして、ご判断を。」
「快璃さま。これは、一体……。」
「どうか玻璃皇子をお離しください。」
「こんなことをされて、明の国は何をお考えなのか。」
すべての雑音を無視して、真っ直ぐに父の執務室を目指す。玻璃はずっと、一言も発しなかった。術士は、申し訳ないが付き合ってもらっている。放すと、何をするか分からない恐ろしさがあるからだ。
騒ぎはすでに伝わっていたらしい。
執務室から出てきた父が、こちらを睨み付けていた。
「お久しぶりでございます。」
全員できちんと礼は取る。俺たちは、話し合いをしに来たのだ。
「何を考えている、快璃。」
「皇家に呪をかけた犯人を、捕まえましてございます。」
「なに?」
「執務室でお話致しませんか?」
廊下では、人の目や耳が多すぎる。困るのは俺ではない。
「……入れ。」
父も気付いたのだろう。執務室へと身を翻した。
「帝。危険です。」
護衛が刀に手をかけながら、周りを取り囲んでいる。こちらも、狩と啄木鳥が刀に手をかけていた。
「俺は、話をしにきた。荒事は望まない。」
「玻璃皇子を拘束しておいて、そのような言い訳が通じるとでも?」
護衛の一人が言うが、気にせず父に続いた。じりじりと間を詰めてくるのを無視して、仲間六人と、拘束した二人で中へ入り、戸を閉めた。畳の間で、腰を下ろす。狩と啄木鳥は立ったまま辺りを警戒した。玻璃はされるがまま、腰を下ろして黙っている。
「帝に奏上申し上げます。呪をかけたのは玻璃皇子でございます。」
父の言葉を待つ間が惜しい。俺は、礼儀を無視して先に口を開いた。
「は。馬鹿馬鹿しい。皇家への呪を何故皇子が?自らの首を絞めているではないか。」
「そう、馬鹿馬鹿しい話です。しかし俺は、本人から聞きました。どうぞ、お尋ねください。そして、ご判断を。」
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