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刃の章

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「勝手な理屈だ……。」

 疲れたように快璃かいりさまが呟く。

「そちらはそちらで、穏やかに暮らしてくれないか?俺は、家族の問題で手一杯だ。もう二度と、俺たちに構わないでくれ。」

 家族の問題。俺にくっついているみこの顔を見ると、何とか話を聞こうと集中しているようだった。
 玻璃皇子はりのみこが言う。

「とりあえず、を連れて帰ることにしよう。まずはしゅを解かねばなるまい。私たちに男子おのこが生まれないだけならまだしも、皇家の血筋全てなのだから、放ってはおけまい。」
「渡すわけがない!うちの子には関係の無いことだ。帰れ!」
「生きて、帰すので?」

 甘いな、と思いながら聞いていると、潜角せんかくがぼそりと言った。
 快璃かいりさまが息を飲む。他の選択肢を全く考えていなかったようだ。しばらく、顔色の悪いまま考えていた。

「どこかに、閉じ込めておこう……。」

 大して広い家ではないので、物置部屋に入っていてもらうことにした。潜角せんかく平政ひらまさと三人で、その部屋で侵入者たちの応急手当をする。術士がすっかり退屈した様子で、自分は関係ないから帰らせてほしいと言ったが、無視した。
 二人に見張りを任せて、客室へ戻る。快璃かいりさまと透子とうこさんとみこの三人で、床に飛び散った血を無言で拭いていた。まりさんは、申し訳なさそうに布団で横になっていた。
 俺も手伝って部屋の中が元通りになると、快璃かいりさまが俺に深々と頭を下げた。

「本当に、ご迷惑をおかけして申し訳ない。」
「いや、まあ、貴方の所為ではないし。」
「それから、うちの子を救ってくれてありがとう。先ほども、ずっと守ってくれた。」

 そうして、みこの方を向く。距離は詰めずに、ゆっくりと話す。

「色々とすまない。俺の言葉は分かるだろうか。」

 みこが小さく頷くのを見て、ほっとした表情を見せた。

「初めまして。俺は快璃かいりだ。こちらは、伴侶の透子とうこ。君の名前を教えてくれるか。」

 みこは、俺の服をぎゅっと掴みながら、しっかりと二人の顔を見て答える。

「初めまして。みこです。」
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