【完結】人形と皇子

かずえ

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第十章 されど幸せな日々

103 年始の集まり  成人

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 年始の集まりは二回目だから、わくわくして出かけた。何をするか分かっているから、楽しみ。
 何をするのか、どんなものなのか知らなくて出かけるのも楽しみだけれど、知っていることで楽しみになることもある。お誕生日会とかもそうだ。お誕生日会って、毎月、していることはあまり変わらない。でも、毎月楽しみ。参加してくれる家族の皆も楽しそうにしてくれている。おんなじ楽しいことがずっとできるのは、きっと幸せの証。
 年始の集まりも、俺の幸せな楽しいことの一つ。緋色ひいろは、別に行かなくてもいいって言っていたけれど、俺は年始の集まりは好きだったから、行けるなら行きたかった。だから、帰ってこれて嬉しい。もちろん、緋色ひいろがどうしても行くのが嫌なら、俺も行かないけどさ。でも緋色ひいろは、俺が、年始の集まりに行こうって言ったら帰ってきてくれた。
 年始の集まりは、灯可とうかに出会って、たくさんの遊びを教えてもらった場所だ。そこから、灯可とうかとはとても仲良しになった。週に一度、おうちで遊ぶくらいに。色んな遊びをしたり、灯可とうかに学校のお話を聞いたり、おやつを一緒に食べたりする。ただ、本を読んでいるだけの時もある。それぞれ勉強していたりもする。そんなのは別に一緒にいなくてもできるんだけれど、それでも、俺たちは一緒にいた。それで、楽しかった。
 たまに、灯可とうかの弟の見可みかや、おばあ様の緋見呼ひみこさまも一緒に来た。そんなときは、大騒ぎで遊ぶことになった。それも、とても楽しかった。お互いの家の料理人が作るおやつを交換して食べるのを料理人たちも楽しみにしていたから、俺たちが遊ぶ約束をするだけでたくさんの人が楽しめていたのかもしれない。それなら、すごく良かった。
 決められた席に座ると、去年と同じように俺の向かいの席にいた灯可とうかが、ぱっと笑顔になって俺に手を振った。久しぶりだ。俺も嬉しくて手を振り返した。西の国に長いこと行っていたから、灯可とうかと長い間遊べていない。今日は、たくさん遊ぼうね。俺はもう、福笑いもじゃんけんも知っている。お正月の遊び。今日も皆でしよう。去年と同じように四条の姉弟と見可みかと、八条の席にいる、あの小さな子も誘ってさ。
 見可みかは、去年と違って灯可とうかの隣にはいなくて、七条の席にいた。俺と同じ並びの後ろの方。成人なるひとさまー、おーいって言いながら手を振ってくれたから、すぐに見つけられた。こら、大きな声を出したら駄目です、ってすぐに緋椀ひまりに叱られていた。今日も元気そう。その手前にいた四条の姉弟は、静かに手を振ってくれた。去年遊んだ仲間たち。ふふ。皆、少しずつ大きくなっている。
 今年も、たくさん遊ぼう。
 そのうち、朱音あかね殿下や寧子やすこさんちの赤ちゃん、茉璃まつりの大きなお腹に入っている赤ちゃんも参加して、遊ぶ人数がたくさん増えていくんだよね。
 俺、年始の集まりはやっぱり好きだなあ。
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