【完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

64 色んな勉強の仕方  成人

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「なるちゃん。お勉強を始めるよ」

 気になることを聞こうかな、と政巳まさみに話しかける前に、青葉あおばに呼ばれた。そうだった。お勉強の時間だった。場所を移動したりしていたから、いつもより始めるのが遅くなってしまった。よろしくお願いしますと頭を下げて、座布団が二つ置かれた椅子に座る。
 勉強は好きだ。分かることが増えるのは嬉しい。できる事が増えるのは楽しい。教えてくれる人がいることは、幸せなことだ。
 四月から学校に通い始めた見可みかが、学校での勉強がつまらないって言ったことがあった。見可みかは、学校に行く前から家でも勉強をしていたから、もう知っていることをまた聞くのがつまらないって。俺には、学校がよく分からないけれど、そういうものなのかって思った。何回も教えてもらった方がしっかり覚えられるような気もするけれど、つまらない時もあるのかな?
 学校が嫌なら俺と一緒に勉強する? って見可みかを誘ってみた。俺は、青葉あおばとする勉強をつまらないって思ったことがない。何をしても楽しいよって言うと、そうするって見可みかは言った。緋椀ひまりは、学校を休むなんて駄目だって怒ったけど、作治さくじが、やってみろって言って学校へ行く準備をした見可みかをうちに連れてきた。
 俺の仕事が終わってから勉強だから、学校より始まるのが遅い。見可みかは最初は、俺の仕事をしてる後ろについてきて、ちょっと楽しいって言った。三日目には、お勉強まだー? って言ってた。そう言われても、早く始まったりはしないんだけれども。
 仕事が終わってから、お昼ご飯まで勉強。青葉あおばが、本を見ながら新しい漢字や言葉の意味を教えてくれたり、計算の仕方を教えてくれたりする。新しいことを覚えたら、それを使えるようにノートに書いたり問題を解いたりする。それだけ。
 見可みか見可みかの勉強。俺は俺の勉強。俺の方が難しいことをしていたから、別々に。青葉あおばは、どんな難しさの勉強も教えてくれる。本当にすごい。青葉あおば見可みかに教えているのを問題を解きながら聞いていたら、それ、俺も習ったなあってのばっかりだった。ちゃんと覚えてた。嬉しかった。
 お昼ご飯までで終わり。学校は、お昼ご飯を食べた後も勉強するし、宿題といって家でする課題も出されるけど、俺は宿題はほとんどない。宿題がどんなものかは、毎週決まった曜日に遊びに来てくれる灯可とうかがやっているのを見たことがあるので知っている。俺は、勉強の時間に真剣にやっているから宿題はなしでいいよ、って青葉あおばが言ってた。午後、あちこちにお出かけするのも勉強だからそれで充分なんだって。お昼寝する日もあるし、商店街やお城や病院や末良すえよしのおうちに行ったりする日もある。
 一週間もしないうちに、学校に行くって見可みかは戻っていった。学校の方が楽しいって。
 緋椀ひまり作治さくじが、本当にご迷惑をおかけしましたってすごく頭を下げていた。俺が誘ったことだから、別にいいんだけど。見可みかがいいならどっちでもいい。

「なるちゃんは、見可みかさまがいらっしゃって楽しかった?」
「うん。たまにはいい」
「そう。それもまた、いい経験だね」

 他に誰かがいる所で勉強するのも好きだな、俺。たまにいい。政巳まさみも元気になったみたいだし、たまにここで勉強することにしよう。
 
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