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第九章 礼儀を知る人知らない人
40 一番美味しいたこ焼き 成人
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今日、広末は、末良のためのたこ焼きを焼く。広末は、いつも皆のためにたこ焼きを焼いてくれるけど、今日の一つ目は末良のため。
誕生日会の日のたこ焼きは、大事な人が誕生日だと、その人のために焼きたいって人が多い。三月の俺の誕生日の時は、緋色が俺のために焼いてくれた。作ってほしいってお願いしたらやってくれたんだ。すごく上手で美味しかった。何だか、いつも広末たちが作ってくれて食べるたこ焼きより美味しかった気がする。そんな訳ないんだけど。餅は餅屋っていう言葉があるみたいに、その仕事が専門の人がやった方が上手なのは間違いないはずなんだけど。でも、俺には一番美味しいたこ焼きだった。
皆もそう思ってるから、作りたかったり作ってもらいたかったりするんだよね、たぶん。
緋色が、こっそり練習してたって聞いて嬉しかった。少しでも上手に作りたい気持ち、よく分かる。好きな人に、少しでも美味しいものを渡したいから。俺も、緋色や、俺に作ってほしいってお願いしてきた灯可や力丸、じいやたちに美味しいたこ焼きを食べて欲しくて、たまに練習しているんだ。楽しいから、いくらでも練習しちゃう。俺は堂々と練習してるけど、緋色は練習していたことは内緒らしい。そういう人もいるんだな。どっちでもいいんだけど、緋色の内緒を俺が聞いても良かったのかな、ってちょっと思った。嬉しかったから、ま、いっか。
皆、何回か練習したりしてどんどん上手になってるから、うちにはたこ焼き作りの名人がたくさんいる。でも、皆に教えてくれる広末より上手な人はいない。広末は、まるで手妻みたいだって言われるような速さで、両手で、綺麗な丸いたこ焼きをたくさん作ってしまう。商店街にお店を出したら、すごい人気のお店になるだろうな。離宮の前で屋台を出した時、行列ができていたし。あれは楽しかったなあ。またやりたい。
「うわ。何これ。こんな玩具見た事ない。何の絵? 動物?」
そういえば、すぐに鉄板の熱いところに手を触れそうになる見可はどこにいるかな、と思った所に見可の大きな声が聞こえた。子どもが参加していると危ないから、誕生日会にたこ焼きは止めようかって何回か違うおやつになったんだけど、見可と灯可と末良が毎月来るようになって、やっぱりたこ焼きが食べたいし作りたいって人が多くて、たこ焼きは復活した。
よく考えたら、手を出すのは見可だけ。見可をちゃんと見張ってたら、止めるのは間に合う。うちには速い人がたくさんいるし、見可の見張りに来てくれる緋椀もすごく速い。今日は、少し遅れて来たけど、今も見可のすぐ近くに立っている。見可は、一回、本当に火傷しそうに危なかったことがあって、次の月には誕生日会に連れてきてもらえなかった。すごくすごく悲しかったみたいで、もう絶対に危ないことはしませんって皆の前で誓いを立てて、やっとこうして参加できている。半分泣きながら誓いを立てたから信用してるんだけど、それでも皆、何となく見可の居場所を把握して気にしてるのが面白い。
「ぞうと、がおとにゃーとわんわんと」
「とらとねこといぬだろ」
「がおとにゃーとわんわん」
末良の説明を見可が訂正すると、亀吉も末良と同じことを言った。
「とらとねこといぬ」
「がおとにゃーとわんわん」
二人対一人だから負けそう。可愛いなあ。見可は、振り返って灯可に助けを求めた。
「兄上。とらとねこといぬだよな」
「末良と亀吉の言いやすい方でいいんじゃないか」
ふふっ。灯可も見可の味方じゃなかった。俺も、二人の言いやすい方でいいと思うよ、見可。
「ええー」
「ええー」
「ええー」
見可が上げた不満の声を、末良と亀吉が真似してる。
「それは真似するんかーい」
鶴丸の呟きが聞こえて、俺は何だかすごく面白くて笑った。
誕生日会の日のたこ焼きは、大事な人が誕生日だと、その人のために焼きたいって人が多い。三月の俺の誕生日の時は、緋色が俺のために焼いてくれた。作ってほしいってお願いしたらやってくれたんだ。すごく上手で美味しかった。何だか、いつも広末たちが作ってくれて食べるたこ焼きより美味しかった気がする。そんな訳ないんだけど。餅は餅屋っていう言葉があるみたいに、その仕事が専門の人がやった方が上手なのは間違いないはずなんだけど。でも、俺には一番美味しいたこ焼きだった。
皆もそう思ってるから、作りたかったり作ってもらいたかったりするんだよね、たぶん。
緋色が、こっそり練習してたって聞いて嬉しかった。少しでも上手に作りたい気持ち、よく分かる。好きな人に、少しでも美味しいものを渡したいから。俺も、緋色や、俺に作ってほしいってお願いしてきた灯可や力丸、じいやたちに美味しいたこ焼きを食べて欲しくて、たまに練習しているんだ。楽しいから、いくらでも練習しちゃう。俺は堂々と練習してるけど、緋色は練習していたことは内緒らしい。そういう人もいるんだな。どっちでもいいんだけど、緋色の内緒を俺が聞いても良かったのかな、ってちょっと思った。嬉しかったから、ま、いっか。
皆、何回か練習したりしてどんどん上手になってるから、うちにはたこ焼き作りの名人がたくさんいる。でも、皆に教えてくれる広末より上手な人はいない。広末は、まるで手妻みたいだって言われるような速さで、両手で、綺麗な丸いたこ焼きをたくさん作ってしまう。商店街にお店を出したら、すごい人気のお店になるだろうな。離宮の前で屋台を出した時、行列ができていたし。あれは楽しかったなあ。またやりたい。
「うわ。何これ。こんな玩具見た事ない。何の絵? 動物?」
そういえば、すぐに鉄板の熱いところに手を触れそうになる見可はどこにいるかな、と思った所に見可の大きな声が聞こえた。子どもが参加していると危ないから、誕生日会にたこ焼きは止めようかって何回か違うおやつになったんだけど、見可と灯可と末良が毎月来るようになって、やっぱりたこ焼きが食べたいし作りたいって人が多くて、たこ焼きは復活した。
よく考えたら、手を出すのは見可だけ。見可をちゃんと見張ってたら、止めるのは間に合う。うちには速い人がたくさんいるし、見可の見張りに来てくれる緋椀もすごく速い。今日は、少し遅れて来たけど、今も見可のすぐ近くに立っている。見可は、一回、本当に火傷しそうに危なかったことがあって、次の月には誕生日会に連れてきてもらえなかった。すごくすごく悲しかったみたいで、もう絶対に危ないことはしませんって皆の前で誓いを立てて、やっとこうして参加できている。半分泣きながら誓いを立てたから信用してるんだけど、それでも皆、何となく見可の居場所を把握して気にしてるのが面白い。
「ぞうと、がおとにゃーとわんわんと」
「とらとねこといぬだろ」
「がおとにゃーとわんわん」
末良の説明を見可が訂正すると、亀吉も末良と同じことを言った。
「とらとねこといぬ」
「がおとにゃーとわんわん」
二人対一人だから負けそう。可愛いなあ。見可は、振り返って灯可に助けを求めた。
「兄上。とらとねこといぬだよな」
「末良と亀吉の言いやすい方でいいんじゃないか」
ふふっ。灯可も見可の味方じゃなかった。俺も、二人の言いやすい方でいいと思うよ、見可。
「ええー」
「ええー」
「ええー」
見可が上げた不満の声を、末良と亀吉が真似してる。
「それは真似するんかーい」
鶴丸の呟きが聞こえて、俺は何だかすごく面白くて笑った。
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