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第九章 礼儀を知る人知らない人
30 ふわふわのお花の握り方 成人
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朝は、もう作ってあった紙のお花の後ろにテープを貼っていった。お昼ご飯の後で食堂にくっ付けるので、朝にすることはそれだけだ。乙羽や水瀬たちは、お客様がたくさんいらっしゃるから、とお休みの日だけど掃除をしている。気にしなくていい、と緋色に言われて、気にしますよ! と二人の声が揃っていた。明日休めよ、と緋色が言ったら、明日は誕生日会後の掃除をしたいから嫌だって。緋色は、あー、じゃあ、適当に休め、って言って終わった。緋色がため息を吐いてたから、ちゃんと休んでるか確認しておくね、と言っておいた。
前に衣装部で作り方を教えてもらった飾りのお花は、乙羽と毎月作っているうちにどんどん上手になっている。
「うわあ。素敵ですねえ」
「きれー」
亀吉のお世話をしている使用人、香月と亀吉が揃って言った。香月は、色んな角度から真剣にお花を見ている。だいぶ気に入ったみたい。時間がたくさんあったので作り方を教えてあげたら、すごくすごく喜んでくれた。
亀吉は、お花を手に持ったら、やっぱりぐちゃって握ってしまった。末良と一緒だ。末良も、いつもぐちゃっと握っちゃう。でも亀吉は、末良みたいにお口には持っていかなかった。小さい子が皆、何でもお口に入れちゃう訳じゃないみたいだ。同じな所と違う所がある。
「あ」
「あああ。すみません、成人殿下。亀吉さま、優しくですよ、優しく」
「やさしく」
亀吉がそっと手を開くと、お花は手から落ちてしまう。拾って小さな手に乗せてあげると、またぐっと握って端っこがぐちゃっとつぶれた。
「やさしく」
お口では言うけど、手は上手く動かないみたい。つぶれて困っている。
「難しいねえ」
「す、す、すみません、成人殿下」
「いいよ。たくさんあるから、持つ練習したらいいよ」
力の入れ具合が難しいんだな、きっと。ふわふわのこれを上手に持つのって、体の使い方のいい練習になるかもよ。ね?
そんな感じでのんびり準備してからお昼ご飯を食べていたら、灯可と見可が使用人とやって来た。早くてすみません、と灯可が言って、俺は本当は朝から来たかった、と見可が言った。
「いいよ。皆で飾り付けしよう」
俺が言うと、見可が万歳する。
「やった!」
「皆さんのお昼ご飯が終わってからだぞ、見可」
「分かってるって、兄上」
「だからまだ早いと言ったんだ」
「兄上だって早く行きたいって言ってたじゃないか」
「それは本当に早く行くという意味じゃなくて、早く行きたいな、という希望を述べただけだ」
「でも来たじゃん」
「それはお前がうるさいから」
「一緒に来たんだから、一緒だよ」
二人の言い争いを、亀吉がぽかんと見ている。
「灯可と見可にこんにちは、する?」
俺の足にしがみついている亀吉に言うと、見可がやっと亀吉に気付いた。
「おおお。赤ちゃんがいる。末良じゃない赤ちゃんだ。兄上、見て、可愛い。こんにちは」
見可。小さい子には、ゆっくり喋らないと逃げられちゃうよ。見可の赤ちゃんが生まれる前に練習しとかないと。
前に衣装部で作り方を教えてもらった飾りのお花は、乙羽と毎月作っているうちにどんどん上手になっている。
「うわあ。素敵ですねえ」
「きれー」
亀吉のお世話をしている使用人、香月と亀吉が揃って言った。香月は、色んな角度から真剣にお花を見ている。だいぶ気に入ったみたい。時間がたくさんあったので作り方を教えてあげたら、すごくすごく喜んでくれた。
亀吉は、お花を手に持ったら、やっぱりぐちゃって握ってしまった。末良と一緒だ。末良も、いつもぐちゃっと握っちゃう。でも亀吉は、末良みたいにお口には持っていかなかった。小さい子が皆、何でもお口に入れちゃう訳じゃないみたいだ。同じな所と違う所がある。
「あ」
「あああ。すみません、成人殿下。亀吉さま、優しくですよ、優しく」
「やさしく」
亀吉がそっと手を開くと、お花は手から落ちてしまう。拾って小さな手に乗せてあげると、またぐっと握って端っこがぐちゃっとつぶれた。
「やさしく」
お口では言うけど、手は上手く動かないみたい。つぶれて困っている。
「難しいねえ」
「す、す、すみません、成人殿下」
「いいよ。たくさんあるから、持つ練習したらいいよ」
力の入れ具合が難しいんだな、きっと。ふわふわのこれを上手に持つのって、体の使い方のいい練習になるかもよ。ね?
そんな感じでのんびり準備してからお昼ご飯を食べていたら、灯可と見可が使用人とやって来た。早くてすみません、と灯可が言って、俺は本当は朝から来たかった、と見可が言った。
「いいよ。皆で飾り付けしよう」
俺が言うと、見可が万歳する。
「やった!」
「皆さんのお昼ご飯が終わってからだぞ、見可」
「分かってるって、兄上」
「だからまだ早いと言ったんだ」
「兄上だって早く行きたいって言ってたじゃないか」
「それは本当に早く行くという意味じゃなくて、早く行きたいな、という希望を述べただけだ」
「でも来たじゃん」
「それはお前がうるさいから」
「一緒に来たんだから、一緒だよ」
二人の言い争いを、亀吉がぽかんと見ている。
「灯可と見可にこんにちは、する?」
俺の足にしがみついている亀吉に言うと、見可がやっと亀吉に気付いた。
「おおお。赤ちゃんがいる。末良じゃない赤ちゃんだ。兄上、見て、可愛い。こんにちは」
見可。小さい子には、ゆっくり喋らないと逃げられちゃうよ。見可の赤ちゃんが生まれる前に練習しとかないと。
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