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第九章 礼儀を知る人知らない人
14 生松の病院 成人
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病院は今日も静かだ。病院ではお静かに、と壁の貼り紙に書いてあるから当たり前なんだけど。しんどかったり痛かったりする人が、そんなに大騒ぎする訳ないしね。人がいて動いてるのに何だか静かっていうの、俺はすごく好き。
使用人用の病院は、入院してる人も通院してる人もあんまりいない。仕事中に体調を崩したり怪我をした人が駆け込んでくるから、そういう時は急に忙しくなるけど、それ以外の時間は割とゆったりしている。午前中は、お城で働いている人が順番に定期健診をしにきてるからずっと人がいるんだけど、健診は調べるだけで治療してる訳じゃないからばたばたもしない。しないけど、城の使用人がたくさんいる時に俺が来ると、皆礼儀正しく包拳礼したりして大騒ぎになるから午前中はなるべく来ないことにした。
生松に用事がある時は、おやつを持って病院に来るのが一番いい。ちょっと生松に診てほしい人がいる時も、午後に連れてくるのが安心。病院でお仕事してる人には、包拳礼いらないよってもう言ってあるしね。それでもする人はいるんだけどさ。
「こんにちは」
「成人殿下、こんにちは。おやつの時間ですか?」
受付の人は、しっかり立ち上がって深々と頭を下げたけど、包拳礼はせずににっこり笑って話してくれた。うんうん。これがいい。
「今日は、この源さんが作ってくれた美味しいおやつ。どうぞ」
おやつを渡すと、大事に両手で受け取ってまた深々と頭を下げた。うん。おやつをそんなに大事にしてくれてありがとね。
「いつも私にまでお気をつかってくださり、ありがとうございます」
「ん?美味しいものは皆で食べるんだよ」
「はい。そうでございましたね。では、有り難く頂戴致します」
「うん」
「生松先生は、いつものお部屋です」
「はーい」
源さんとゆっくり廊下を歩く。病院までは、じいやが車を出してくれたから良かった。近いけど、源さんにたくさん歩かせたくなかったから。
「おお。成人殿下。お久しぶりじゃないですか!」
「栄!」
元気な声は、生松と一緒に仕事をしている薬師寺栄だ。体が小さいのに、とても元気。おやつが大好きで、俺がおやつを持ってくるとすごく喜んでくれる。皇太子殿下にお願いされたって言って、ここの病院に来たのはいつだったっけ?朱音殿下が生まれた後だったかな?白衣を着て、短い髪を揺らして、ぱたぱたと動き回っている。
生松が俺と一緒に西の国に行っている間は、病院のお留守番をしてくれてたのかな。ここは、あんまりたくさんの医師はいないみたいだし。もう一つある病院にはたくさんいるみたいなんだけど。
ん?それなら今日も白衣を着てるのはおかしくない?
「こんにちは。おやつですか?嬉しいです!今日は患者付きかな?患者さんもこんにちは!」
「あ、その、こんにちは……?」
源さんが頭を下げるのを、栄はにこにこ見ている。うん、今日も元気。元気なんだけど、でもさ。
「あのさ、栄はお休みじゃないの?」
「はは。今日は休みの曜日じゃありませんよ!」
そうだけど、うちはお留守番組はお休みだよ?
「んー?」
「さあさあ、生松先生のとこに行きますよ!」
うん。まあ、元気だからいいんだけどさ。
使用人用の病院は、入院してる人も通院してる人もあんまりいない。仕事中に体調を崩したり怪我をした人が駆け込んでくるから、そういう時は急に忙しくなるけど、それ以外の時間は割とゆったりしている。午前中は、お城で働いている人が順番に定期健診をしにきてるからずっと人がいるんだけど、健診は調べるだけで治療してる訳じゃないからばたばたもしない。しないけど、城の使用人がたくさんいる時に俺が来ると、皆礼儀正しく包拳礼したりして大騒ぎになるから午前中はなるべく来ないことにした。
生松に用事がある時は、おやつを持って病院に来るのが一番いい。ちょっと生松に診てほしい人がいる時も、午後に連れてくるのが安心。病院でお仕事してる人には、包拳礼いらないよってもう言ってあるしね。それでもする人はいるんだけどさ。
「こんにちは」
「成人殿下、こんにちは。おやつの時間ですか?」
受付の人は、しっかり立ち上がって深々と頭を下げたけど、包拳礼はせずににっこり笑って話してくれた。うんうん。これがいい。
「今日は、この源さんが作ってくれた美味しいおやつ。どうぞ」
おやつを渡すと、大事に両手で受け取ってまた深々と頭を下げた。うん。おやつをそんなに大事にしてくれてありがとね。
「いつも私にまでお気をつかってくださり、ありがとうございます」
「ん?美味しいものは皆で食べるんだよ」
「はい。そうでございましたね。では、有り難く頂戴致します」
「うん」
「生松先生は、いつものお部屋です」
「はーい」
源さんとゆっくり廊下を歩く。病院までは、じいやが車を出してくれたから良かった。近いけど、源さんにたくさん歩かせたくなかったから。
「おお。成人殿下。お久しぶりじゃないですか!」
「栄!」
元気な声は、生松と一緒に仕事をしている薬師寺栄だ。体が小さいのに、とても元気。おやつが大好きで、俺がおやつを持ってくるとすごく喜んでくれる。皇太子殿下にお願いされたって言って、ここの病院に来たのはいつだったっけ?朱音殿下が生まれた後だったかな?白衣を着て、短い髪を揺らして、ぱたぱたと動き回っている。
生松が俺と一緒に西の国に行っている間は、病院のお留守番をしてくれてたのかな。ここは、あんまりたくさんの医師はいないみたいだし。もう一つある病院にはたくさんいるみたいなんだけど。
ん?それなら今日も白衣を着てるのはおかしくない?
「こんにちは。おやつですか?嬉しいです!今日は患者付きかな?患者さんもこんにちは!」
「あ、その、こんにちは……?」
源さんが頭を下げるのを、栄はにこにこ見ている。うん、今日も元気。元気なんだけど、でもさ。
「あのさ、栄はお休みじゃないの?」
「はは。今日は休みの曜日じゃありませんよ!」
そうだけど、うちはお留守番組はお休みだよ?
「んー?」
「さあさあ、生松先生のとこに行きますよ!」
うん。まあ、元気だからいいんだけどさ。
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