【完結】人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

119 俺たちの友だち  成人

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「……どこに行っていた?」

 緋色ひいろ、まだお布団の中だけど起きてた。びっくり。誰も起こしに来てないのに。低く掠れた声はご機嫌が悪い?ま、朝だからね。緋色ひいろは朝起きるのが苦手だから。

「お見送り」
「あ?」
鶴丸つるまる松吉まつきち
「ああ」

 緋色ひいろはそれだけ言うとまた目をつぶって、うつ伏せになりちょっと唸ってから、がばっと起き上がった。

「おはよ」
「おう」

 ちょい、ちょい、と緋色ひいろの手が動いているから、布団の横に座る。

「違う」

 もー。
 上半身は起こしたけど布団から出ない緋色ひいろに近付くと、ぎゅうっと抱っこされた。これ好き。緋色ひいろ、大好き。俺の右手も緋色ひいろの背中に回す。緋色ひいろも、ぎゅー。

「勝手にいなくなるな」
「昨日の夜、言った」
「あ?」
鶴丸つるまる松吉まつきちのお見送りするって」

 静かになった緋色ひいろが、俺をもっとぎゅうっとする。思い出した?朝早くに出るんだって、って俺言ったよ。

「……起こせ」
「早すぎだったし、俺の友だちだから」

 いいかな、と思って。夜話した時も、緋色ひいろ、そうかって言っただけだったし。

「お前の友だちは、俺の友だちでもあるだろう?」
「え?」

 そうなの?
 びっくりして右手の力が緩む。緋色ひいろは少し体を離して俺と顔を合わせた。

「お前と俺は大体いつも一緒にいるんだから、同じ相手と遊ぶことが多い。俺の友人、お前の友人と決める必要あるか?」
「……!」

 そ、そうか。
 緋色ひいろ弐角にかくが遊ぶ時に俺はいつも一緒にいるし、弐角にかくと俺も友だちなのか。常陸丸ひたちまる乙羽おとわ緋色ひいろの友だちだけど、俺も仲良し。力丸りきまるもだ!

「おお」
「どうした?」
緋色ひいろの友だちは俺も仲良し」

 うんうん頷いていると、常陸丸ひたちまるがお茶を持って入ってきた。

「おはようございます。あれ?殿下、早いっすね」
「一人で起きてた」
「へええ。やればできるじゃないっすか」

 緋色ひいろは、何も言わずにお茶を受け取って飲み始めた。

「うん。やればできる」
「な。できるんだな。いつもやればいいのにな」
「ね?」
「お前ら、うるさい」

 へへ、ほんとだ。俺と常陸丸ひたちまるも仲良し。

成人なるひと、朝飯食べよ。あ、殿下起きてるんすね。めずらしいー」

 力丸りきまるも部屋に入ってきた。湯呑みを常陸丸ひたちまるに返した緋色ひいろが、力丸りきまるをちょいちょい、と指で呼ぶ。

「ん?」

 ひょいと近付いてきた力丸りきまるのおでこが、ばちっと弾かれた。

「痛てっ。え?は?な、なんで?」
「しといた方がいい気がした」
「え?は?」

 ほんとは避けれるのに絶対避けない力丸りきまると、ちゃんと手加減する緋色ひいろもとても仲良し。
 ほんとだ。皆、友だちだった。

「今度は起こすね」
「そうしろ」

 俺の友だち、また増えた!
 
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