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第八章 郷に入っては郷に従え
79 衣装部屋の試練 祈里
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「衣装部の方々にお願い申し上げます。若様と若奥様が少々お疲れでございます。こちらにご案内致しますので、しばしご休憩の後、衣装替えして戻る算段を付けて頂きたいとのことです」
何か、先触れが来た。
…………。
へ?先触れ?!
衣装部屋に?
訳が分からなくて、は?と、同じ部屋にいる方々と顔を見合わせた。昨日から共に過ごさせてもらっている、九鬼のお城の衣装部の方々だ。
「わ、若様と若奥様が?なんで?なんでここに?」
「ご休憩?」
「ご休憩所って、別にありましたよね?」
「衣装替えって、どういうことや?」
本当に、訳が分からない。衣装直しなら、休憩のための部屋に私たちの誰かを呼んでくださればそれで済むはず……。
私たちは、昼食を半分食べたくらいの時間だった。早朝から、そりゃあもう忙しく、たくさんの方々の衣装を着付けて着付けて、着付けまくって一息つき、軽く片付け終えた頃には、結婚の儀を終えて披露宴へ向かう方々の衣装の乱れを直す時間だった。無事に披露宴が始まったと聞いて、これでもう大丈夫と安堵の息を吐いていた。
昼食に、と出してもらったお膳は、使用人向けのものも披露宴で出されている品の幾つかを組み合わされているらしく、大変に豪華だった。そのお膳を、のんびり堪能していた所である。衣装部の忙しい時間は終わり、後は着崩れた方がいらっしゃれば直すだけの待機時間となっている。
主役の花嫁花婿とそのご家族様はもちろん、お城にお泊まりの近隣国の方や重臣の方々と、大変な数の着付けをしたものだ。
私のように、主についてきた近隣国の衣装係もお二人いらっしゃった。それぞれの主の着付けが済んだ後は、このお城の衣装係の方々と協力して、たくさんたくさん着付けた。女ばかりで気安かったこともあり、まるでずっとここで働いていたかのように打ち解けている。羽織り袴も着物も、どの国も仕様が同じで助かった。
緋色殿下と衣装がお揃いだと喜ぶ成人さまは、とても可愛らしかった。
「ど、ど、どうしたらええんやろ」
なんて誰かが言っている間に、早くも襖が開く。お膳を脇に避ける間もあらばこそ、だ。
一斉に平伏した私たちに、
「ああ、ああ。そんなんええから、ご飯食べとき」
と、弐角さまの声が聞こえた。
「ごめんな。ご飯中に」
か細い声は橙々さまだ。びっくりして頭を上げたのは、私だけでは無かった。橙々さまのか細い声!私は、今朝会っただけだけれど、明るくて元気なお方だなあ、という印象だったのだ。弐角さまの従妹とのことだから、もともと姫様育ちのはずなのにとても気さくな方だった。
「まああ。お二人とも、どうされたんです?」
九鬼のお城の衣装部長は、近くに住む世話焼きのおばさまって感じがする。うちの涼乃絵さまとは、大違い。でも、どちらもとても話しやすい。
ばたばたと座布団が並べられて、大急ぎでお二人の着物をくつろげていった。
「帯、締めすぎやったですか?」
「いや。衣装は関係ない。ただの酔っ払いや。ちょっと休ませてな」
弐角さまのお言葉に、全員でほっと息を吐いた。
何か、先触れが来た。
…………。
へ?先触れ?!
衣装部屋に?
訳が分からなくて、は?と、同じ部屋にいる方々と顔を見合わせた。昨日から共に過ごさせてもらっている、九鬼のお城の衣装部の方々だ。
「わ、若様と若奥様が?なんで?なんでここに?」
「ご休憩?」
「ご休憩所って、別にありましたよね?」
「衣装替えって、どういうことや?」
本当に、訳が分からない。衣装直しなら、休憩のための部屋に私たちの誰かを呼んでくださればそれで済むはず……。
私たちは、昼食を半分食べたくらいの時間だった。早朝から、そりゃあもう忙しく、たくさんの方々の衣装を着付けて着付けて、着付けまくって一息つき、軽く片付け終えた頃には、結婚の儀を終えて披露宴へ向かう方々の衣装の乱れを直す時間だった。無事に披露宴が始まったと聞いて、これでもう大丈夫と安堵の息を吐いていた。
昼食に、と出してもらったお膳は、使用人向けのものも披露宴で出されている品の幾つかを組み合わされているらしく、大変に豪華だった。そのお膳を、のんびり堪能していた所である。衣装部の忙しい時間は終わり、後は着崩れた方がいらっしゃれば直すだけの待機時間となっている。
主役の花嫁花婿とそのご家族様はもちろん、お城にお泊まりの近隣国の方や重臣の方々と、大変な数の着付けをしたものだ。
私のように、主についてきた近隣国の衣装係もお二人いらっしゃった。それぞれの主の着付けが済んだ後は、このお城の衣装係の方々と協力して、たくさんたくさん着付けた。女ばかりで気安かったこともあり、まるでずっとここで働いていたかのように打ち解けている。羽織り袴も着物も、どの国も仕様が同じで助かった。
緋色殿下と衣装がお揃いだと喜ぶ成人さまは、とても可愛らしかった。
「ど、ど、どうしたらええんやろ」
なんて誰かが言っている間に、早くも襖が開く。お膳を脇に避ける間もあらばこそ、だ。
一斉に平伏した私たちに、
「ああ、ああ。そんなんええから、ご飯食べとき」
と、弐角さまの声が聞こえた。
「ごめんな。ご飯中に」
か細い声は橙々さまだ。びっくりして頭を上げたのは、私だけでは無かった。橙々さまのか細い声!私は、今朝会っただけだけれど、明るくて元気なお方だなあ、という印象だったのだ。弐角さまの従妹とのことだから、もともと姫様育ちのはずなのにとても気さくな方だった。
「まああ。お二人とも、どうされたんです?」
九鬼のお城の衣装部長は、近くに住む世話焼きのおばさまって感じがする。うちの涼乃絵さまとは、大違い。でも、どちらもとても話しやすい。
ばたばたと座布団が並べられて、大急ぎでお二人の着物をくつろげていった。
「帯、締めすぎやったですか?」
「いや。衣装は関係ない。ただの酔っ払いや。ちょっと休ませてな」
弐角さまのお言葉に、全員でほっと息を吐いた。
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