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第八章 郷に入っては郷に従え
53 いつもと違う 成人
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行く場所はいつもとおんなじなのに、行き方がいつもと全然違った。車に乗ってたら進んでいくのはおんなじだから、おんなじと言えばおんなじなんだけど、そうじゃない所が全然違う。
服が正装なのが違う。離宮の留守番の人が皆で揃ってお見送りしてくれたのも、いつもと違う。お城の前にお見送りの人がいたことなんて無かった。父さまと朱実殿下が、にこにこでいってらっしゃいって言ってくれた。
一緒に行く人がたくさんで、荷物もたくさん。だから、車も一台じゃない。車には、四台全部に緋色の印が大きく描かれていて、それを見た緋色は、げって言って嫌そうな顔をした。いつもは、目立たない場所に小さく付いているだけだから、これも違うところ。服や持ち物にも、いつもより大きなお印が付いている。
緋色の道行だと、周りじゅうにお知らせするため、らしい。お知らせしながら、回りに頭を下げてもらいながら行くことが大事。格好良い緋色を、たくさんの人に見せびらかしておいで、と緋見呼さまが言っていた。緋色はいつでも格好良いから、そんなの簡単だ。
休憩をしてご飯を食べる場所も、いつもと違った。いつもの、お金を入れて食べる物の券を買う食堂じゃなくて、俺たちがいつもお泊まりする、温泉のある宿の大きなお部屋で、全員並んで座った。お膳に乗ったご飯が全員の前に一つずつ並べられて、それを皆で食べた。
ご飯は、いつもお泊まりする時に食べる味とおんなじだったから、ちょっとほっとした。でも、ご飯もおかずもたくさん並んでて、全部は食べられなかった。
「今回は、お前にも必ず一膳付くことになる。無理をせず、いる物だけ食べろ。残しても気にしなくていい」
緋色がそう言うから、分かったと頷いて、大好きな物から食べた。あ、お品書き、と思ったけど、広末が一緒にいることを思い出して、まあいいことにした。端っこの席に見えた広末は、うんうんと頷きながら楽しそうに食べていた。
九鬼の城まで続く大きな道は、いつもたくさん通っている車が一台も通れなくしてあった。道の両脇に、たくさんの人が並んで手を振っている。
「おお」
「手を振り返してみたらどうだ?」
俺が、びっくりして窓の外を見ていたら緋色が言った。車は、のろのろ、のろのろと進んでいる。俺たちからも外がよく見えるし、外からも俺たちが見えているみたいだ。
なるほど、と手を振ったら、おおお!とたくさんの声が聞こえた。窓を閉めていても、はっきり聞こえた。
「わわ」
「はは。お前に手を振ってもらって、皆喜んでるな」
その時、おおおおお!!と外の声がもっと大きくなった。ん?
「なに?」
「緋色殿下が笑った、って外は大騒ぎだ」
力丸が、後ろの座席で笑う。この旅行の俺の護衛は、力丸がしてくれるんだって。これも、いつもと違うところ。外では、お仕事の邪魔しないように、力丸にあんまり話しかけないように気をつけないとね。つい、話しちゃいそうだから。車の中は、いつも通りでもいいかな。
「緋色が笑うと大騒ぎなの?」
「魔王さまは、あんまり笑わないからなー」
「そう?」
「そうなんだよ」
いつも笑ってるけどなあ。
「痛て」
あ。力丸が、もうおでこを弾かれた。これは、いつも通り。
服が正装なのが違う。離宮の留守番の人が皆で揃ってお見送りしてくれたのも、いつもと違う。お城の前にお見送りの人がいたことなんて無かった。父さまと朱実殿下が、にこにこでいってらっしゃいって言ってくれた。
一緒に行く人がたくさんで、荷物もたくさん。だから、車も一台じゃない。車には、四台全部に緋色の印が大きく描かれていて、それを見た緋色は、げって言って嫌そうな顔をした。いつもは、目立たない場所に小さく付いているだけだから、これも違うところ。服や持ち物にも、いつもより大きなお印が付いている。
緋色の道行だと、周りじゅうにお知らせするため、らしい。お知らせしながら、回りに頭を下げてもらいながら行くことが大事。格好良い緋色を、たくさんの人に見せびらかしておいで、と緋見呼さまが言っていた。緋色はいつでも格好良いから、そんなの簡単だ。
休憩をしてご飯を食べる場所も、いつもと違った。いつもの、お金を入れて食べる物の券を買う食堂じゃなくて、俺たちがいつもお泊まりする、温泉のある宿の大きなお部屋で、全員並んで座った。お膳に乗ったご飯が全員の前に一つずつ並べられて、それを皆で食べた。
ご飯は、いつもお泊まりする時に食べる味とおんなじだったから、ちょっとほっとした。でも、ご飯もおかずもたくさん並んでて、全部は食べられなかった。
「今回は、お前にも必ず一膳付くことになる。無理をせず、いる物だけ食べろ。残しても気にしなくていい」
緋色がそう言うから、分かったと頷いて、大好きな物から食べた。あ、お品書き、と思ったけど、広末が一緒にいることを思い出して、まあいいことにした。端っこの席に見えた広末は、うんうんと頷きながら楽しそうに食べていた。
九鬼の城まで続く大きな道は、いつもたくさん通っている車が一台も通れなくしてあった。道の両脇に、たくさんの人が並んで手を振っている。
「おお」
「手を振り返してみたらどうだ?」
俺が、びっくりして窓の外を見ていたら緋色が言った。車は、のろのろ、のろのろと進んでいる。俺たちからも外がよく見えるし、外からも俺たちが見えているみたいだ。
なるほど、と手を振ったら、おおお!とたくさんの声が聞こえた。窓を閉めていても、はっきり聞こえた。
「わわ」
「はは。お前に手を振ってもらって、皆喜んでるな」
その時、おおおおお!!と外の声がもっと大きくなった。ん?
「なに?」
「緋色殿下が笑った、って外は大騒ぎだ」
力丸が、後ろの座席で笑う。この旅行の俺の護衛は、力丸がしてくれるんだって。これも、いつもと違うところ。外では、お仕事の邪魔しないように、力丸にあんまり話しかけないように気をつけないとね。つい、話しちゃいそうだから。車の中は、いつも通りでもいいかな。
「緋色が笑うと大騒ぎなの?」
「魔王さまは、あんまり笑わないからなー」
「そう?」
「そうなんだよ」
いつも笑ってるけどなあ。
「痛て」
あ。力丸が、もうおでこを弾かれた。これは、いつも通り。
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