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第七章 冠婚葬祭
154 挨拶 成人
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「よし。食うか」
「うん!」
「まて、緋色。しかと挨拶をいたせ」
あ、父さま。家族写真を撮るために並んでいる時に少しだけ話をしたけれど、写真を撮り終わった緋色がすぐに離れてしまってそれきりだった。控え室も、皇族は別に作っていたので会わなかった。あれ?俺たちも皇族だけど皆といたな。ま、いっか。楽しかったし。
料理が並んでいく様子を見ていた人たちが、前を向いて合図を待っている。
「父上が挨拶をしたらいい」
「お前の主催だろうが」
「無礼講ってのは目上の者から伝えるものなんだから、父上が言えばいいんだ」
「……分かった。挨拶をしてやろう。その代わり逃げるなよ」
ん?
父さまがゆったりと歩いて、儀式を終えた主役たちの前へ出た。
「しまった。自分でやれば良かった」
緋色ががっくりとうなだれて呟く。
何だろ?
「みな、今日はよく集まってくれた」
父さまの声は、大きくもなく小さくもなく、高くもなく低すぎることもない。こうしてたくさんの人へ向けて話す時は、少しゆっくり話す。大声でもなんでもないのに何故か皆、すぐにそちらへ注目してしまう。
上に立つ人。前に立つ人。声を聞くと自然と背筋が伸びるような、そんな人。
俺や緋色と話す時は、全然そんなものは出ていないんだけど。
あれ?じゃあ出したり引っ込めたりできるのか、あれ。あの、背筋伸びるような感じのやつ。朱実殿下はいつも出てる。にこにこ笑ってても出てる。引っ込めれないのかな?じゃあ引っ込められる父さまの方が強い?父さまは威圧を怖がらせないように上手に出せる、のかな?
「将来有望な若人たちが、共に歩む伴侶を見つけたことを神に皆に報告できたこと、大変に喜ばしく思う。おめでとう!」
わああ、と拍手が起こった。
おめでとう、と言われた主役たちが綺麗に頭を下げる。俺も抱っこから下ろしてもらって、緋色と二人で頭を下げた。
「私も、息子の結婚衣装を見ることができ、大変に満足している。何せこやつらは、放っておくと何もかもを勝手に終わらせてしまい、晴れ姿を見せにも来やしない故な」
少し笑い声が聞こえた。
父さま、お話上手だね。
「そんな訳で、私はとても楽しんでおる故、みなも大いに楽しんでほしい。既に無礼講との通達は出ていると思うが、改めてこの場は無礼講であることを伝えよう。とはいえ、子どももおる場じゃ。節度を持った酒との付き合いを頼むぞ。のう、九条利胤」
「やや。陛下よりのご指名とは恐悦至極。このじじい、しかと心に留め置きましょうぞ」
じいじがすぐに答えて敬礼をして、今度はたくさんの笑い声が起こった。
大丈夫。じいじのお酒は、ちょうどいい量を超えるとすぐにたくさんの手に取り上げられちゃうから。最初は乙羽だけだった手に俺の手が加わって、生松が加わった。睦峯は一番遠慮がなくて、義父上もう終わりだ、と取り上げてしまう。斎は、そっとお酒のコップをお水のコップと入れ替える。三郎は、もう一杯だけ、と言われるとあげちゃうから、じいじと一緒に皆に怒られてしまう。
だからね、じいじはもうお酒をたくさん飲めない。もう少し飲みたいのう、って文句を言う。嬉しそうに笑いながら、文句を言う。
「では、離宮の料理人の心尽くしの料理を頂こう」
「はい!」
見可のいい返事が聞こえて、またみんな楽しく笑った。
何を食べようか。
迷ってしまうくらいたくさんあるなあ!
「うん!」
「まて、緋色。しかと挨拶をいたせ」
あ、父さま。家族写真を撮るために並んでいる時に少しだけ話をしたけれど、写真を撮り終わった緋色がすぐに離れてしまってそれきりだった。控え室も、皇族は別に作っていたので会わなかった。あれ?俺たちも皇族だけど皆といたな。ま、いっか。楽しかったし。
料理が並んでいく様子を見ていた人たちが、前を向いて合図を待っている。
「父上が挨拶をしたらいい」
「お前の主催だろうが」
「無礼講ってのは目上の者から伝えるものなんだから、父上が言えばいいんだ」
「……分かった。挨拶をしてやろう。その代わり逃げるなよ」
ん?
父さまがゆったりと歩いて、儀式を終えた主役たちの前へ出た。
「しまった。自分でやれば良かった」
緋色ががっくりとうなだれて呟く。
何だろ?
「みな、今日はよく集まってくれた」
父さまの声は、大きくもなく小さくもなく、高くもなく低すぎることもない。こうしてたくさんの人へ向けて話す時は、少しゆっくり話す。大声でもなんでもないのに何故か皆、すぐにそちらへ注目してしまう。
上に立つ人。前に立つ人。声を聞くと自然と背筋が伸びるような、そんな人。
俺や緋色と話す時は、全然そんなものは出ていないんだけど。
あれ?じゃあ出したり引っ込めたりできるのか、あれ。あの、背筋伸びるような感じのやつ。朱実殿下はいつも出てる。にこにこ笑ってても出てる。引っ込めれないのかな?じゃあ引っ込められる父さまの方が強い?父さまは威圧を怖がらせないように上手に出せる、のかな?
「将来有望な若人たちが、共に歩む伴侶を見つけたことを神に皆に報告できたこと、大変に喜ばしく思う。おめでとう!」
わああ、と拍手が起こった。
おめでとう、と言われた主役たちが綺麗に頭を下げる。俺も抱っこから下ろしてもらって、緋色と二人で頭を下げた。
「私も、息子の結婚衣装を見ることができ、大変に満足している。何せこやつらは、放っておくと何もかもを勝手に終わらせてしまい、晴れ姿を見せにも来やしない故な」
少し笑い声が聞こえた。
父さま、お話上手だね。
「そんな訳で、私はとても楽しんでおる故、みなも大いに楽しんでほしい。既に無礼講との通達は出ていると思うが、改めてこの場は無礼講であることを伝えよう。とはいえ、子どももおる場じゃ。節度を持った酒との付き合いを頼むぞ。のう、九条利胤」
「やや。陛下よりのご指名とは恐悦至極。このじじい、しかと心に留め置きましょうぞ」
じいじがすぐに答えて敬礼をして、今度はたくさんの笑い声が起こった。
大丈夫。じいじのお酒は、ちょうどいい量を超えるとすぐにたくさんの手に取り上げられちゃうから。最初は乙羽だけだった手に俺の手が加わって、生松が加わった。睦峯は一番遠慮がなくて、義父上もう終わりだ、と取り上げてしまう。斎は、そっとお酒のコップをお水のコップと入れ替える。三郎は、もう一杯だけ、と言われるとあげちゃうから、じいじと一緒に皆に怒られてしまう。
だからね、じいじはもうお酒をたくさん飲めない。もう少し飲みたいのう、って文句を言う。嬉しそうに笑いながら、文句を言う。
「では、離宮の料理人の心尽くしの料理を頂こう」
「はい!」
見可のいい返事が聞こえて、またみんな楽しく笑った。
何を食べようか。
迷ってしまうくらいたくさんあるなあ!
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