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第七章 冠婚葬祭
138 罪を飲み込む 成人
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「成人さま。少しだけ、お客様のお時間を頂いてもよろしいか」
「半助……」
「たくさんいいよ」
一人で食堂に現れた半助が、俺にまず頭を下げた。壱鷹が、真剣な顔で半助を見る。
少しなんて言わずにたくさんお話したらいい。伴侶の家族は家族になるって俺はもう知っている。じゃあ、ここの人たちは半助の家族になるってこと。結婚式に呼ぶ家族はいないって言った半助の。
そうか、とだけ緋色は言った。
「俺は、同族殺しです……」
「そうか」
「……地獄で償いましょう」
「壱臣は極楽へ行くのではないか?」
半助は長いまつ毛を少し伏せた。
「……少し寂しいですね」
「連れて行けばいい」
「臣を?」
ほんの少し半助は笑う。緋色は楽しそうに、にやって笑う。緋色のが楽しい時の笑いなら、半助のは楽しい笑いじゃない。
「俺は一緒に地獄へ行く」
目を見開いた半助が、俺と緋色の顔を見比べてまた笑った。これは、楽しい時の笑い方。
「殿下方には、充分な資格がありそうや」
「足りないなら、悪行の限りを尽くしてやろう」
「は、はは。地獄の閻魔様も逃げ出しますって」
「だろう?」
珍しく、半助はたくさん笑った。
「地獄の閻魔も逃げ出しそうな人数をあの世へ送った俺が、現世では英雄だ。我が国の兵士を誰より退けて生き延びた成人が、英雄の伴侶だ。自分と自分の大事なものを守る時に躊躇った奴が負けるのさ。お前は、同族を手に掛けても生き延びる方を選んだ。それが全てだ。戦ってのはそういうもんだ。壱臣のためだったのなら、罪は二分するがいい」
「……っ」
「賭けてもいい。あいつは迷わず引き受ける」
さっきまで楽しそうに笑っていた半助の目に、涙が浮かんできた。
「これで、共に地獄行き確定だ」
「……ふっ」
ぐっと何かを飲み込んだ半助が、涙を浮かべたまま笑った。
「嬉しい、と思う俺は、やはり地獄行きでしょうか」
「あっちでも仲良くやろうぜ」
「ええ、ぜひ」
後で、緋色に教えてもらった。同族殺し。八朔は、半助に守られながら逃げた壱臣の追っ手に半助の家族や親族を使ったんだって。人質を取ったりして逆らえないようにして。半助は壱臣を守った。だから、半助の家族はいない。いても、半助のことを恨んでいるかもしれない。
ふーん。
「お前には分かりにくいか」
俺は頷く。同族でも何でも、敵同士ならどちらかがやられてしまうのは仕方ないことだ。半助が生きてるってことは、相手はやられてしまってるってこと。当たり前だ。
「そうだな……。俺と常陸丸を倒そうとして、力丸や乙羽が追ってくると考えたらどうだ?」
常陸丸が勝つんじゃない?ああ、でも、常陸丸は乙羽には負けるかもしれない。常陸丸は乙羽を倒すくらいなら自分が倒れる方を選ぶだろう。でも、そうしたら緋色が力丸にやられちゃう。常陸丸は緋色を守るためには、力丸と乙羽を倒さなくちゃならない。
「あ……」
大切な誰かを守りきれた後、大切な誰かがいない。
そうか。
同族殺し。
罪は二分……。
壱臣ならきっと、二つに分けたりせず丸ごと包んでくれるんじゃないかな……。
「半助……」
「たくさんいいよ」
一人で食堂に現れた半助が、俺にまず頭を下げた。壱鷹が、真剣な顔で半助を見る。
少しなんて言わずにたくさんお話したらいい。伴侶の家族は家族になるって俺はもう知っている。じゃあ、ここの人たちは半助の家族になるってこと。結婚式に呼ぶ家族はいないって言った半助の。
そうか、とだけ緋色は言った。
「俺は、同族殺しです……」
「そうか」
「……地獄で償いましょう」
「壱臣は極楽へ行くのではないか?」
半助は長いまつ毛を少し伏せた。
「……少し寂しいですね」
「連れて行けばいい」
「臣を?」
ほんの少し半助は笑う。緋色は楽しそうに、にやって笑う。緋色のが楽しい時の笑いなら、半助のは楽しい笑いじゃない。
「俺は一緒に地獄へ行く」
目を見開いた半助が、俺と緋色の顔を見比べてまた笑った。これは、楽しい時の笑い方。
「殿下方には、充分な資格がありそうや」
「足りないなら、悪行の限りを尽くしてやろう」
「は、はは。地獄の閻魔様も逃げ出しますって」
「だろう?」
珍しく、半助はたくさん笑った。
「地獄の閻魔も逃げ出しそうな人数をあの世へ送った俺が、現世では英雄だ。我が国の兵士を誰より退けて生き延びた成人が、英雄の伴侶だ。自分と自分の大事なものを守る時に躊躇った奴が負けるのさ。お前は、同族を手に掛けても生き延びる方を選んだ。それが全てだ。戦ってのはそういうもんだ。壱臣のためだったのなら、罪は二分するがいい」
「……っ」
「賭けてもいい。あいつは迷わず引き受ける」
さっきまで楽しそうに笑っていた半助の目に、涙が浮かんできた。
「これで、共に地獄行き確定だ」
「……ふっ」
ぐっと何かを飲み込んだ半助が、涙を浮かべたまま笑った。
「嬉しい、と思う俺は、やはり地獄行きでしょうか」
「あっちでも仲良くやろうぜ」
「ええ、ぜひ」
後で、緋色に教えてもらった。同族殺し。八朔は、半助に守られながら逃げた壱臣の追っ手に半助の家族や親族を使ったんだって。人質を取ったりして逆らえないようにして。半助は壱臣を守った。だから、半助の家族はいない。いても、半助のことを恨んでいるかもしれない。
ふーん。
「お前には分かりにくいか」
俺は頷く。同族でも何でも、敵同士ならどちらかがやられてしまうのは仕方ないことだ。半助が生きてるってことは、相手はやられてしまってるってこと。当たり前だ。
「そうだな……。俺と常陸丸を倒そうとして、力丸や乙羽が追ってくると考えたらどうだ?」
常陸丸が勝つんじゃない?ああ、でも、常陸丸は乙羽には負けるかもしれない。常陸丸は乙羽を倒すくらいなら自分が倒れる方を選ぶだろう。でも、そうしたら緋色が力丸にやられちゃう。常陸丸は緋色を守るためには、力丸と乙羽を倒さなくちゃならない。
「あ……」
大切な誰かを守りきれた後、大切な誰かがいない。
そうか。
同族殺し。
罪は二分……。
壱臣ならきっと、二つに分けたりせず丸ごと包んでくれるんじゃないかな……。
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