【完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
上 下
816 / 1,321
第七章 冠婚葬祭

105 やっぱり最恐  弐角

しおりを挟む
弐角にかく。別にこんな仰々ぎょうぎょうしいことをしろと言った覚えは無いんだが?」

 ソファに深く腰掛けた緋色ひいろ殿下が、うんざりした顔で六車むぐるま夫妻を見てから、隣の成人なるひとさまを抱き上げようと手を伸ばして、だめー、とその手を押さえられている。
 うん、成人なるひとさま?今日は、殿下のお膝に座る気分やないんかー、そうかあ。でもな。世界平和のために、殿下の膝の上に乗っとってくれんかな?そうしたら殿下のご機嫌は大抵、上向くから。

「分かっとります。せやけど、六車むぐるまが、どうしても直接、緋色ひいろ殿下と成人なるひと殿下に謝罪を申し述べたいんです、言うもんやさかい」
「まあ、成人なるひとに、というなら仕方ないから聞くが」

 そやね。おるだけで、圧倒的な存在感と圧力を感じる緋色ひいろ殿下に不敬を働く強者つわものなんて、まあおらんやろ。不敬や無礼や言うたら成人なるひとさま絡みやろなあ。
 なんで皆、分からんのかな。成人なるひとさまは、めっちゃ優しくて可愛らしいけど、そこかしこから緋色ひいろ殿下の気配が立ち上っとるのに。本人かて、身のこなしに無駄がない。俺では、成人なるひとさまの初手は防げんかもしれん。

「お時間を取らせてしまう事になるのは分かっとりましたが、それでも、どうしても、こうして直接の謝罪を受け入れて頂きたく。此度の仕儀、誠に、誠に申し訳なく」

 六車むぐるまがまた、頭を下げた。そんなに暑くもない部屋で、だらだらと汗をかいとる。緋色ひいろ殿下の、どんな噂を聞いてきたのやら。まあ、最恐、いうのは有名な話やけど。
 そんなことは、全然無いんやけどな。
 優しい、お人やと思う。おみがあんなに懐いとるんやもん。成人なるひとさまも。……半助はんすけもや。今回の手紙かて、半助はんすけが手を出す前に侍女を連れ帰れ、やったもんな。
 そんな手紙やから、事情がよう分からんくて、関係者が震え上がるんやろ。大体、緋色ひいろ殿下からの手紙なんて、ほぼメモやからね。
 遊びに行く、とか何日から何日まで滞在、とか一言書いてあるだけやし。封筒に入って届くのはまだましで。一ノ瀬のじい様が、するりと城の防衛線突破して、遊びに、ってメモを持ってくるのが一番恐ろしい。色んな意味で!
 やっぱ最恐やったわ。
 はあ。
 なんか、疲れたなあ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

【完】ちょっと前まで可愛い後輩だったじゃん!!

福の島
BL
家族で異世界転生して早5年、なんか巡り人とか言う大層な役目を貰った俺たち家族だったけど、2人の姉兄はそれぞれ旦那とお幸せらしい。 まぁ、俺と言えば王様の進めに従って貴族学校に通っていた。 優しい先輩に慕ってくれる可愛い後輩…まぁ順風満帆…ってやつ… だったなぁ…この前までは。 結婚を前提に…なんて…急すぎるだろ!!なんでアイツ…よりによって俺に…!?? 前作短編『ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活』に登場する優馬の続編です。 今作だけでも楽しめるように書きますが、こちらもよろしくお願いします。

【完結】塔の悪魔の花嫁

かずえ
BL
国の都の外れの塔には悪魔が封じられていて、王族の血筋の生贄を望んだ。王族の娘を1人、塔に住まわすこと。それは、四百年も続くイズモ王国の決まり事。期限は無い。すぐに出ても良いし、ずっと住んでも良い。必ず一人、悪魔の話し相手がいれば。 時の王妃は娘を差し出すことを拒み、王の側妃が生んだ子を女装させて塔へ放り込んだ。

【完結】狼獣人が俺を離してくれません。

福の島
BL
異世界転移ってほんとにあるんだなぁとしみじみ。 俺が異世界に来てから早2年、高校一年だった俺はもう3年に近い歳になってるし、ここに来てから魔法も使えるし、背も伸びた。 今はBランク冒険者としてがむしゃらに働いてたんだけど、 貯金が人生何周か全力で遊んで暮らせるレベルになったから東の獣の国に行くことにした。 …どうしよう…助けた元奴隷狼獣人が俺に懐いちまった… 訳あり執着狼獣人✖️異世界転移冒険者 NLカプ含む脇カプもあります。 人に近い獣人と獣に近い獣人が共存する世界です。 このお話の獣人は人に近い方の獣人です。 全体的にフワッとしています。

追放されたボク、もう怒りました…

猫いちご
BL
頑張って働いた。 5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。 でもある日…突然追放された。 いつも通り祈っていたボクに、 「新しい聖女を我々は手に入れた!」 「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」 と言ってきた。もう嫌だ。 そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。 世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです! 主人公は最初不遇です。 更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ 誤字・脱字報告お願いします!

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活

福の島
BL
家でゴロゴロしてたら、姉と弟と異世界転生なんてよくある話なのか…? しかも家ごと敷地までも…… まぁ異世界転生したらしたで…それなりに保護とかしてもらえるらしいし…いっか…… ……? …この世界って男同士で結婚しても良いの…? 緩〜い元男子高生が、ちょっとだけ頑張ったりする話。 人口、男7割女3割。 特段描写はありませんが男性妊娠等もある世界です。 1万字前後の短編予定。

【完】俺の嫁はどうも悪役令息にしては優し過ぎる。

福の島
BL
日本でのびのび大学生やってたはずの俺が、異世界に産まれて早16年、ついに婚約者(笑)が出来た。 そこそこ有名貴族の実家だからか、婚約者になりたいっていう輩は居たんだが…俺の意見的には絶対NO。 理由としては…まぁ前世の記憶を思い返しても女の人に良いイメージがねぇから。 だが人生そう甘くない、長男の為にも早く家を出て欲しい両親VS婚約者ヤダー俺の勝負は、俺がちゃんと学校に行って婚約者を探すことで落ち着いた。 なんかいい人居ねぇかなとか思ってたら婚約者に虐められちゃってる悪役令息がいるじゃんと… 俺はソイツを貰うことにした。 怠慢だけど実はハイスペックスパダリ×フハハハ系美人悪役令息 弱ざまぁ(?) 1万字短編完結済み

処理中です...