【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

79 ご飯の時間  成人

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「自分の飯に集中しろ」

 そう言われても、気になる。椿つばきは初めての、うちでのご飯なんだから。
 ぴし、と姿勢よく座る椿つばきを見ていたら、緋色ひいろに注意された。口に運ばれるご飯を、ぱくりと食べる。

「あれかあ。何か気い張ってるなあ」

 隣に座った力丸りきまるも、遠慮なく椿つばきを見ていた。あ、でも、ご飯はぱくぱく食べてるのね。食べながら、見ながら、しゃべるってどうやるの?教えてほしい。
 力丸りきまるを見ていたら、俺の口におかずを運んできた。緋色ひいろの入れてくれたご飯が、口の中でちょうど無くなったところ。何で分かるのかなあ。ぱくりと食べて、もぐもぐする。

「知らない家で飯を食うんだから、気も張るだろ」

 緋色ひいろの隣の常陸丸ひたちまるが答えて、力丸りきまるがうーん、と唸った。

「そういうんじゃなくて、何か、こう……。いや、まあどうでもいいか」

 がくっ。

「それより、三郎さぶろう。どうよ?」

 今度は、俺と反対の隣に座る三郎さぶろうに話しかけている。力丸りきまるって本当に忙しいねえ。

「私の方には、覚えはないようです。たぶん相手も、そうや思います」
「なら良かった」
「はい。ありがとうございます」

 何なに?

「ああ。見覚えあるかって聞いてたの。三郎さぶろう、あっちの出身だろ?歳も近そうだし」
「ふーん」
「そういうこと、何も考えずに連れてきたろ、殿下」

 緋色ひいろがまた、俺の口にご飯を入れながら、当たり前だろって言った。

「関係ないだろ。あれは弐角にかくに良くない」
「うわ。それだけ?」
成人なるひとに無礼だった」
「あ、それか」

 よく分かんないけど、違うよー。

「弱いの」
「弱い?姫なんだから、弱いだろうよ」

 ん?姫?姫って何?

「護衛って言ってた」
「はあ?」
橙々だいだいの護衛。橙々だいだい死んじゃうから、駄目だよって教えてあげた」
「うん、橙々だいだいって誰ー?ま、いいか。護衛なら弱くちゃ駄目だなあ」

 そうそう。
 で、鍛えたいって言うから緋色ひいろが連れてきたの。でも、椿つばきは鍛えても、橙々だいだいの護衛は無理だと思う。自分が、側に付かれて護衛されることに慣れていて、でも、そのことに気付いていない。急に近付く殺気のない者を、防ぐことができないだろうなあ。

「ま、納得いくまで置いとくさ」
「ま、俺はなんでもいいけど」

 俺は、橙々だいだいが危なくなければそれでいいよ。緋色ひいろの友だちの弐角にかくの大事な人が、危なくなければ、それでいい。
 
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