785 / 1,321
第七章 冠婚葬祭
74 俺の好きなこと 成人
しおりを挟む
「ただいまー」
「おかえりなさい!」
このやり取りが、好き。お出かけして帰ってきて、ただいまって言う。誰かが必ず出迎えてくれて、おかえりって言う。
お家が無いとできなくて、一緒に暮らしている人がいないとできないこと。必ず帰れる場所があって、出迎えてくれる人がいるのは、本当に幸せだなあ、と毎日でも思うんだ。
「乙羽、ただいま。常陸丸を連れて行って、ごめんね」
お留守番、寂しかったよね?
「ふふ。私が行かないって言ったんだから、気にしなくていいのよ、なる。でも、うん。寂しかったかな」
車で移動するのが苦手な乙羽は、温泉でお泊まりじゃないなら行かない、って言ったんだ。九鬼の所のお家は、温泉宿よりもう少し遠いから、車に乗ってる時間が長くて辛いもんね。それで緋色は、常陸丸も置いて行こうとしたけど、それは常陸丸が嫌がった。絶対に駆け付けられない場所に、お前を一人で行かせるわけが無い、って。
そう言った常陸丸は、すごく格好良かったな。睨みつけるように緋色を見ながら言ってて、一緒に執務室で仕事していた三郎や斎が、喧嘩が始まったのかと心配してた。
緋色がちょっと笑って、そうかって言ったから、喧嘩じゃないって、すぐに分かったみたいだけど。
そうだよ、って言った常陸丸は、ぷいっと横を向いて、また仕事に戻った。書類仕事にね。
俺、分かったんだ。常陸丸は緋色の、護衛で副官で侍従で親友で、大変だ。だけど、緋色のこと好きだから、離れるなんて考えたことも無いんだ。きっとそう。それは、とっても素敵だなあ、と思うんだ。
乙羽と、ただいまのぎゅーをしてたら、べりっとはがされた。早い。
「他の男とくっつくな。寂しかったなら、抱きつく相手はこっちだろ」
「なるはいいでしょ」
「いいか。成人も男だ」
このやり取りも、いつも通り。そんなこと言うけど、俺はいいんだよね。ちょっとぎゅーって抱っこするまで、待っててくれるもんね。常陸丸なら本当は、ぎゅーってする前に止められるもんね。
「ふふ。おかえり、常陸丸」
「ただいま、乙羽」
ああ。ぎゅーってする二人を見てるのも、俺、すごく好きだ。
「おかえりなさい!」
このやり取りが、好き。お出かけして帰ってきて、ただいまって言う。誰かが必ず出迎えてくれて、おかえりって言う。
お家が無いとできなくて、一緒に暮らしている人がいないとできないこと。必ず帰れる場所があって、出迎えてくれる人がいるのは、本当に幸せだなあ、と毎日でも思うんだ。
「乙羽、ただいま。常陸丸を連れて行って、ごめんね」
お留守番、寂しかったよね?
「ふふ。私が行かないって言ったんだから、気にしなくていいのよ、なる。でも、うん。寂しかったかな」
車で移動するのが苦手な乙羽は、温泉でお泊まりじゃないなら行かない、って言ったんだ。九鬼の所のお家は、温泉宿よりもう少し遠いから、車に乗ってる時間が長くて辛いもんね。それで緋色は、常陸丸も置いて行こうとしたけど、それは常陸丸が嫌がった。絶対に駆け付けられない場所に、お前を一人で行かせるわけが無い、って。
そう言った常陸丸は、すごく格好良かったな。睨みつけるように緋色を見ながら言ってて、一緒に執務室で仕事していた三郎や斎が、喧嘩が始まったのかと心配してた。
緋色がちょっと笑って、そうかって言ったから、喧嘩じゃないって、すぐに分かったみたいだけど。
そうだよ、って言った常陸丸は、ぷいっと横を向いて、また仕事に戻った。書類仕事にね。
俺、分かったんだ。常陸丸は緋色の、護衛で副官で侍従で親友で、大変だ。だけど、緋色のこと好きだから、離れるなんて考えたことも無いんだ。きっとそう。それは、とっても素敵だなあ、と思うんだ。
乙羽と、ただいまのぎゅーをしてたら、べりっとはがされた。早い。
「他の男とくっつくな。寂しかったなら、抱きつく相手はこっちだろ」
「なるはいいでしょ」
「いいか。成人も男だ」
このやり取りも、いつも通り。そんなこと言うけど、俺はいいんだよね。ちょっとぎゅーって抱っこするまで、待っててくれるもんね。常陸丸なら本当は、ぎゅーってする前に止められるもんね。
「ふふ。おかえり、常陸丸」
「ただいま、乙羽」
ああ。ぎゅーってする二人を見てるのも、俺、すごく好きだ。
440
お気に入りに追加
4,981
あなたにおすすめの小説
追放されたボク、もう怒りました…
猫いちご
BL
頑張って働いた。
5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。
でもある日…突然追放された。
いつも通り祈っていたボクに、
「新しい聖女を我々は手に入れた!」
「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」
と言ってきた。もう嫌だ。
そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。
世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです!
主人公は最初不遇です。
更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ
誤字・脱字報告お願いします!
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完】ちょっと前まで可愛い後輩だったじゃん!!
福の島
BL
家族で異世界転生して早5年、なんか巡り人とか言う大層な役目を貰った俺たち家族だったけど、2人の姉兄はそれぞれ旦那とお幸せらしい。
まぁ、俺と言えば王様の進めに従って貴族学校に通っていた。
優しい先輩に慕ってくれる可愛い後輩…まぁ順風満帆…ってやつ…
だったなぁ…この前までは。
結婚を前提に…なんて…急すぎるだろ!!なんでアイツ…よりによって俺に…!??
前作短編『ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活』に登場する優馬の続編です。
今作だけでも楽しめるように書きますが、こちらもよろしくお願いします。
【完結】塔の悪魔の花嫁
かずえ
BL
国の都の外れの塔には悪魔が封じられていて、王族の血筋の生贄を望んだ。王族の娘を1人、塔に住まわすこと。それは、四百年も続くイズモ王国の決まり事。期限は無い。すぐに出ても良いし、ずっと住んでも良い。必ず一人、悪魔の話し相手がいれば。
時の王妃は娘を差し出すことを拒み、王の側妃が生んだ子を女装させて塔へ放り込んだ。
【完結】狼獣人が俺を離してくれません。
福の島
BL
異世界転移ってほんとにあるんだなぁとしみじみ。
俺が異世界に来てから早2年、高校一年だった俺はもう3年に近い歳になってるし、ここに来てから魔法も使えるし、背も伸びた。
今はBランク冒険者としてがむしゃらに働いてたんだけど、 貯金が人生何周か全力で遊んで暮らせるレベルになったから東の獣の国に行くことにした。
…どうしよう…助けた元奴隷狼獣人が俺に懐いちまった…
訳あり執着狼獣人✖️異世界転移冒険者
NLカプ含む脇カプもあります。
人に近い獣人と獣に近い獣人が共存する世界です。
このお話の獣人は人に近い方の獣人です。
全体的にフワッとしています。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜
咲
BL
公爵家の長女、アイリス
国で一番と言われる第一王子の妻で、周りからは“悪女”と呼ばれている
それが「私」……いや、
それが今の「僕」
僕は10年前の事故で行方不明になった姉の代わりに、愛する人の元へ嫁ぐ
前世にプレイしていた乙女ゲームの世界のバグになった僕は、僕の2回目の人生を狂わせた実父である公爵へと復讐を決意する
復讐を遂げるまではなんとか男である事を隠して生き延び、そして、僕の死刑の時には公爵を道連れにする
そう思った矢先に、夫の弟である第二王子に正体がバレてしまい……⁉︎
切なく甘い新感覚転生BL!
下記の内容を含みます
・差別表現
・嘔吐
・座薬
・R-18❇︎
130話少し前のエリーサイド小説も投稿しています。(百合)
《イラスト》黒咲留時(@black_illust)
※流血表現、死ネタを含みます
※誤字脱字は教えて頂けると嬉しいです
※感想なども頂けると跳んで喜びます!
※恋愛描写は少なめですが、終盤に詰め込む予定です
※若干の百合要素を含みます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる