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第七章 冠婚葬祭
68 じゃんけんをしよう 成人
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「俺が、許可しました。教育やら何やらでいっぱいいっぱいになっとる橙々に、少しでも穏やかに過ごして欲しゅうて。城の中には影もおるからと......」
それから弐角は、はっとした。
「あの。うちの影は......」
「この屋敷の中には、入れなかったようですな」
さらりとじいやが言う。
そうだね。一ノ瀬が、ちょっとだけ俺たちに付いてきているから、入れないだろうなあ。入れたら、すごい。入れた人がいるなら、その人を橙々の護衛にしたらいい。
「......っ!」
弐角が、とても驚いた顔をした。弐角は、鍛えてはいるけれど、気配を読むのが上手くない。だから、よく分からなかったんだな。自分の影も、一緒にいると思っていたのか。
才蔵は分かってたよね。だから、ずっと臨戦態勢だった。さっき、弐角を抱えて飛んだの、格好良かったよ。
才蔵の方を向くと、こっくりと頷いた。
「せめて初手を防げる者を配置すべき、と進言致します」
「ああ、分かった。ええな、橙々」
「......椿が、もう少し鍛えて強うなったら、また」
「無理」
じいやの言葉に、深く頷いた弐角が橙々に向かって言ったけれど、橙々がまだ椿がいいって言うから、俺が教えてあげた。
「無理......ですか」
「うん」
気配も読めない。速くもない。集中がもたない。......鍛えてもこれなのかな。まさかな。
「鍛えてもいないのに、護衛をやるって言うのが、む、」
えーと。なんだっけ?ちょうどいい言葉があったような。
「む......」
「む?」
橙々が首を傾げている。
「無責任、か」
そう。それそれ。流石、緋色。
「無責任......。俺もですね」
「まあ、その通りだな。」
項垂れた弐角に緋色が言う。
「そ、そんな?!私は、ちゃんと鍛えて」
「椿は、頑張っとりました。血のにじむ様な努力をしとったのを、知っています」
ええ?鍛えてあれなら、ますます無理だよ。
そうだ。
「俺と、目をつぶらずにじゃんけんしよ」
「へ?」
「じゃんけん。じゃんけんに勝ったら、橙々の護衛でいていいよ」
「じゃんけん......」
椿がぽかんとしているから、緋色の膝の上で右手を振り上げた。
「いくよー。じゃーんけーん」
椿が慌てて、手を持ち上げる。もうチョキって分かっちゃう。そして、俺の手を見ていない。見やすいように、持ち上げてあげているのに。
「ぽん」
椿はやっぱりチョキで、俺はグーを出した。
「あ」
「俺の勝ち」
「あ、いや、そんな」
「もう一回する?」
「はい!はい、お願いします」
何回かやったら気付くかな。少しは俺の手を見る?より後から出そうとする?
でも、三回やっても椿はそのまま、簡単に負けた。才蔵が、あって顔をして。
「ど、どんなカラクリや?」
弐角が身を乗り出して、もう少し見せてくれ、と頼んでくる。
ほらね、椿。じゃんけんをしてるのは椿なんだから、椿が一番に気付けるはずなのに。ただ、首を傾げていても勝てないよ。
そうして椿は、後三回負けた。
それから弐角は、はっとした。
「あの。うちの影は......」
「この屋敷の中には、入れなかったようですな」
さらりとじいやが言う。
そうだね。一ノ瀬が、ちょっとだけ俺たちに付いてきているから、入れないだろうなあ。入れたら、すごい。入れた人がいるなら、その人を橙々の護衛にしたらいい。
「......っ!」
弐角が、とても驚いた顔をした。弐角は、鍛えてはいるけれど、気配を読むのが上手くない。だから、よく分からなかったんだな。自分の影も、一緒にいると思っていたのか。
才蔵は分かってたよね。だから、ずっと臨戦態勢だった。さっき、弐角を抱えて飛んだの、格好良かったよ。
才蔵の方を向くと、こっくりと頷いた。
「せめて初手を防げる者を配置すべき、と進言致します」
「ああ、分かった。ええな、橙々」
「......椿が、もう少し鍛えて強うなったら、また」
「無理」
じいやの言葉に、深く頷いた弐角が橙々に向かって言ったけれど、橙々がまだ椿がいいって言うから、俺が教えてあげた。
「無理......ですか」
「うん」
気配も読めない。速くもない。集中がもたない。......鍛えてもこれなのかな。まさかな。
「鍛えてもいないのに、護衛をやるって言うのが、む、」
えーと。なんだっけ?ちょうどいい言葉があったような。
「む......」
「む?」
橙々が首を傾げている。
「無責任、か」
そう。それそれ。流石、緋色。
「無責任......。俺もですね」
「まあ、その通りだな。」
項垂れた弐角に緋色が言う。
「そ、そんな?!私は、ちゃんと鍛えて」
「椿は、頑張っとりました。血のにじむ様な努力をしとったのを、知っています」
ええ?鍛えてあれなら、ますます無理だよ。
そうだ。
「俺と、目をつぶらずにじゃんけんしよ」
「へ?」
「じゃんけん。じゃんけんに勝ったら、橙々の護衛でいていいよ」
「じゃんけん......」
椿がぽかんとしているから、緋色の膝の上で右手を振り上げた。
「いくよー。じゃーんけーん」
椿が慌てて、手を持ち上げる。もうチョキって分かっちゃう。そして、俺の手を見ていない。見やすいように、持ち上げてあげているのに。
「ぽん」
椿はやっぱりチョキで、俺はグーを出した。
「あ」
「俺の勝ち」
「あ、いや、そんな」
「もう一回する?」
「はい!はい、お願いします」
何回かやったら気付くかな。少しは俺の手を見る?より後から出そうとする?
でも、三回やっても椿はそのまま、簡単に負けた。才蔵が、あって顔をして。
「ど、どんなカラクリや?」
弐角が身を乗り出して、もう少し見せてくれ、と頼んでくる。
ほらね、椿。じゃんけんをしてるのは椿なんだから、椿が一番に気付けるはずなのに。ただ、首を傾げていても勝てないよ。
そうして椿は、後三回負けた。
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