【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

55 んん?  弐角

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「伴侶は、連れて来なかったのか」

 軽く、緋色ひいろ殿下は仰った。

「へ?伴侶?⋯⋯あ、婚約者ですか」
「まだ結婚してない時は、伴侶じゃなくて、婚約者?」
「まあ、もういいんじゃねえの?もうすぐ結婚するんだし」

 ああ、つまり、俺の伴侶になる人間を見に来たと。その為にわざわざ?いや、まあ殿下らしいな。
 成人なるひとさまは相変わらず生真面目に、語彙を増やそうとしてらっしゃる。殿下、そこはちゃんと教えてあげて。

「呼ぶんですか?」
「おう」
「呼ぶんですか?!」
「おう」

 何でもう一回言った?みたいな顔で首を傾げられても!そこは、いや急だったから無理にとは言わん、って殿下が言って、すいません、また今度会ってやってくださいって俺が答える流れやろ?
 ちゃうか、違うんかあ。

「あ、あの、弐角にかく。うちも、ちょっと会いたい」

 おみー?そっち?そっちなんか?双子の以心伝心どこいった?

「いや、だからそれは、ほら、おみを招待した日に、おみとは顔合わせしよかと思て」
「うん。でも、その日は他にも人がおるんやろ?」
「ああ。あの、両家の家族だけでな、結婚式をしよかと思てな。その、羽織袴や着物は着ずに、て通達したんやけど、ほな何を着たらええんや、て皆わちゃわちゃしとってな。何とか全員の服装の目処が立ったからおみにも招待状を送ったんやけど、おみにとったら、すぐ一月後とかになってしもたな。ごめん。こっちでは、わいわい話をしとったもんやから、そこまで気ぃ回らんかった。ごめんな」

 両家言うても、あれや。相手の家も俺の住んでた仮親の家やから、どっちも元々、俺のうちやし、俺の親なんやけど。
 ああ、これを言うと、おみに申し訳ないな。育ててくれた叔父上のことも、ほんまの父上のことも父上って呼んどるなんて、たった一人の父上とほとんど会えもせんかったおみに申し訳ない。俺だけ、立派な結婚式をするとかも、なあ。

「そうなんか。うちのためにそんなんせんでも、良かったのに。うちは、弐角にかくに面倒事を押し付けて逃げた能無しやで」
「とんでもない!おみが頑張ってくれたお陰で、俺と父上は実権を取り戻せたんや!そんなん言うたらあかん!」

 まだ、そんな事思てたんか?根深く、おみの意識にそんな事を植え付けた奴らは根絶やしにしたつもりやのに、そうやない、と側で言えんのはもどかしいことやな。

弐角にかくと父上が幸せなら、うちの評判なんてどうでもええよ」

 本気でそう言って笑うおみに、そうやない、おみも一緒に幸せでないとあかんのやと、どうしたら伝わるのやろう。

「とにかくその日は、絶対来てほしい。皆、おみに会えるんを楽しみにしとるから。な?俺だけ、結婚式とかして申し訳ないけど、おみにも出席してもらいたいんや。家族やもん。見てほしい」
弐角にかくは、壱臣いちおみの家族なの?」
「まあ、そうだな」 

 成人なるひとさまが、ひょいと口を挟んできた。殿下が、軽く答える。成人なるひとさまは、驚いた顔をした。え?なんで?双子って知っとるやんな?兄弟やで?

「ええ!じゃあ、弐角にかく壱臣いちおみの結婚式に呼ばないと!うわあ、俺、家族って知らなかったよ」

 ん?
 おみの結婚式って何?
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