【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

38 俺もそれは知っている  成人

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 外はちょっと暑いけど、外で待たせてもらうことにした。茉璃まつりは、アイスクリームを食べて一休み。お腹に赤ちゃんがいて体が休みたがっているのだから、お昼寝はたくさんしたらいいと思う。俺も、眠たい時は寝るよ。お兄さんになっても疲れてしまう時はあるから、無理をしないことに決めた。長生きするために、大事なことだから。俺は、少しでも長生きするために頑張ることにしたから、できることは何だってしようと思う。体の勉強もしたいな。医師になりたい訳じゃないけど、どうしたら体が長持ちするか知りたい。知りたいこと、したいことがたくさんで、忙しい。忙しいことが、嬉しい。
 そんな事を考えながら、一条のお屋敷の門の後ろで通りを覗いている。門の外に立つのはやめて欲しい、と門番にお願いされてしまった。お屋敷の門の前には二人の門番が居て、お屋敷を守っている。門の後ろからでも通りを見られる造りになっているから、そちらでお待ち頂きたいと言うので、そこに立った。目の前の通りを歩く人間はそんなにいなくて、大体、城へ行く車か、城から出てくる車が、あっという間に通り過ぎるだけだった。
 俺が今日、一条の屋敷に来ることは、灯可とうか見可みかには内緒にしてあるらしい。
 
「早く帰って来て欲しい、とは伝えてあるの。見可みかにも、大事なお話があるから一条のお家にすぐ来てね、と伝えてもらっているわ」

 二人は学校に行っている。お休みの曜日以外は、毎日学校でお勉強。この国の子どもは、皆学校に通うらしい。小学校と中学校は、どんな身分の子どもでも、親がいない子どもでも、戸籍の登録がある子どもは皆、学校に通うことになっている。みんなって凄いな。全員だもんな。全員、読み書き計算ができるなんて、凄い国だ。俺の生まれた国がどんな制度だったか知らないけれど、に勉強させる余裕なんてなかったんじゃないかな。俺は、読みは少しできたけど、書くのはできなかったし、計算も習ったのは少しだけだった。
 そんなことより、銃の扱いや爆弾の扱い、体術などを覚える方が重要だったからね。
 今日は、灯可とうか見可みかも、お家での勉強や習い事がない。よく、俺と灯可とうかが約束して遊んでいる曜日だ。でも、今日は約束していなかった。約束していなかったのにいたら、灯可とうかは驚くかな。どう思うだろう。先触れ無しで来てしまったことになるのかな。
 ちょっとどきどきしてきた。喜んでくれるかな。
 通りに、揃いの服を着て揃いの大きな鞄を背負った子どもたちが歩き始めた。見可みかと同じくらい小さな子どもも、白い襟付きのシャツを着て、黒い半ズボンを履いて大きな鞄を背負っている。スカートの子どももいる。皆汗だくで暑そうだ。鞄、大き過ぎじゃない?ひっくり返りそうだよ。
 幾人かずつでまとまって話しながら歩いていく様子は、とても楽しそうだった。
 力丸りきまる村次むらつぐ三郎さぶろうと出掛けた時を思い出す。友だちと話しながら歩くのは、それだけで楽しいって、俺も知ってる!
 見可みかが、友だちと笑って話しながら、通り過ぎて行くのが見えた。今、見可みかの帰るお家は、お隣の七条のお屋敷だから、一条の家は一回通り過ぎる。鞄を置いたらすぐ、こっちに来てくれるかな。
 ん?一緒にいた友だちと見可みかが、約束な、おう、後でなって話してるのが聞こえたんだけど。

成人なるひとさま?成人なるひとさまだ!成人なるひとさま!」

 見可みかに気を取られていたら、一人で走って帰ってきた灯可とうかが、門に入る前から大きな声を上げた。
 喜んでくれてる?
 良かった!
 それにしても灯可とうか、俺、外からは見えないはずなのに、なんで分かったの?
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