【完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

126 解読が遅かった……  成人

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 あれ?
 皇太子殿下から届いていたお手紙に返事を書こうとして、首を捻った。
 今読んでいる手紙の、分からない言葉をしっかり調べてみないと合ってるか分からないけど、もしかして皇太子殿下は、うちのお誕生日会に来たかったんだろうか。俺は、この前のお手紙はてっきり、皇太子殿下も五月がお誕生日だから、お城でお誕生日会をするので一緒にしませんか、って意味だと思ってたんだけど。
 そのお手紙には、丁寧にお返事を書いてお断りしたので、次のお手紙を読むのを後回しにしてしまった。きっと、分かりました、残念です、みたいなお返事だろうなと思っていたんだ。お誕生日会の準備が忙しかったから、また後でゆっくり解読しようと思ってた。
 お誕生日会が終わった次の日の午後に思い出して読んでみたら、何か違ってて……。
『成人へ
 返信を受け取った。
 私の誕生日会ならば、誕生日当日に、家族と九家の代表と懇意の家臣を集めて晩餐を共にする形で済んでおり、城で改めて開催する必要はない。
 緋色も出席していたので、そなたも存じている前提でしたためた。
 私が前回のふみで述べたのは、そなたが主催する誕生日会のことである。間もなくと聞き及ぶが、間に合うであろうか。朱実』
 少しずつ、分からない言葉を抜き出しては辞書で調べて繋げていく。全く分からなかった一回目のお手紙と違って、だいたいは辞書で調べられるし、そのまんまで分かるところも少しはある。
 緋色ひいろの言う通りにして良かった。分かりませんって、お返事書いて正解だった。これくらいなら、時間をかければ何とかなる、ような気がする。
 そして繋げてみて分かったことが、間に合わなかったことだったわけで……。
 うわあ、どうしよう。
 後回しにしちゃ駄目だったなあ。いや、この手紙だけだと来たかったかどうかは分かりにくいけど、うちのお誕生日会に間に合いますかって聞いてるんだし、前の手紙で、一緒にっていってたから、合わせると、たぶん、そういうことだ。うちの誕生日会を一緒にしたかったのじゃない?つまり、昨日、来たかったってこと?
 皇太子殿下のお手紙は難しいから、後でゆっくり読もうと思ったのが駄目だった。お手紙ってのは、届いたらすぐに読まないと駄目なものなんだ……。
 うーん。
 うーん。

「起きてるか。おやつ食いにいくぞ」
「うーん」

 唸りながら机に頭を乗せていたら、緋色ひいろが俺の部屋に迎えに来た。

「何してるんだ?」
「読まずに置いてた皇太子殿下のお手紙を、今読んだら」
「ああ、やっぱり言わなくていい」

 俺が言いかけた所で、緋色ひいろが遮る。
 ええ?最後まで言わせて。もやもやするから!

「うちのお誕生日会に来たかったみたいなのに、俺、手紙から読み取れなくて」
「ぶはっ」

 ぶはっ?

「お城のお誕生日会を一緒にしたいのかと思って、うちもやるので行けませんってお断りのお手紙出したんだけど」
「ふ。くっ。それで?く、くくっ」
「その後のお手紙読んだら、うちのお誕生日会に来たかったのかもしれなくて」
「ぶふふっ。うんうん」
「でも、今解読できたから間に合わなかった……」

 もうっ。
 どうしようって俺がちょっと考えてるのに、緋色ひいろ、さっきからさあ。

「は、ははははは。あーっははははは」

 何でお腹を抱えて笑ってんの?
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