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第六章 家族と暮らす
105 あなたはいつも完璧な人 赤璃
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「お疲れ様」
つい固い声が出たのは許してほしい。今、私は、なるに聞いたあなたの話を飲み込みきれていないの。
「なるが一口カステラを持ってきてくれたのよ。食べてみたいって言ってたでしょう?」
「私が?」
向かいのソファに座りながら朱実が答える。
ああ、そうね。
食べてみたいとは言っていない。
あなたはただ、離宮でまた新しいお菓子ができたそうだよ、と私に教えてくれただけだった。朱実はそれを食べたいんだな、と思ったのは私。いつもそう。あなたは、決して言質を取らせないように、けれど自分の思い通りに事が運ぶように話をし、そして行動する。
私は、私たちは、あなたの心を慮り、勝手に動いているだけだ。
「食べたいのじゃないかと思ったの。そうでなければ、離宮の新しいお菓子の話なんてしないでしょ」
「ちょっとした新しい情報を知らせたつもりだったのだけれど。まあそうだね、興味はあったかな」
「早速なるに持ってきてもらったのよ。是非食べてみて」
「ああ、ありがとう」
いつも通りのようで少し距離を感じるのは、私に、思うところがあるから。
朱実は、すんなりと一口カステラを口に入れた。なるが持ってきた品だからと拒絶したりはしないらしい。
「うん。食べやすいね」
「村次が作ったの」
「そう。見事なものだ。離宮は良い料理人が大勢いて羨ましいよ。今度、うちに来てもらえないか聞いてみようかな」
「え?駄目」
思わず、といった風になるが言う。
「駄目かい?私が頼めば頷いてくれる者がいるのではないかな?」
「上官の命令は逆らえないから駄目。皆、緋色の大切な人だから」
「そう。残念だな」
薄く笑みをはいた口元から紡がれる芝居がかった台詞。
我慢がきかないのは、産後で情緒が安定していないからだということにしよう。
「ねえ、朱実。緋色殿下に銃を向けたことがあるって本当?」
常陸丸に聞けば、端から見た光景を正確に知ることができるのだろうけれど。
でも、私は、あなたのことが知りたい。
なるには嘘が無い。聞けば、見たまま感じたままを伝えてくれる。だからもし、なるの言うことと朱実の言うことが違っていたとしたら、嘘は朱実。見解の相違だとしても、何か脚色をするとしたら朱実の方だ。
「私が?まさか!そんなことは、天と地がひっくり返ってもあり得ないね」
ああ、ほら。
本当に驚いた顔でそう言うのね。
つい固い声が出たのは許してほしい。今、私は、なるに聞いたあなたの話を飲み込みきれていないの。
「なるが一口カステラを持ってきてくれたのよ。食べてみたいって言ってたでしょう?」
「私が?」
向かいのソファに座りながら朱実が答える。
ああ、そうね。
食べてみたいとは言っていない。
あなたはただ、離宮でまた新しいお菓子ができたそうだよ、と私に教えてくれただけだった。朱実はそれを食べたいんだな、と思ったのは私。いつもそう。あなたは、決して言質を取らせないように、けれど自分の思い通りに事が運ぶように話をし、そして行動する。
私は、私たちは、あなたの心を慮り、勝手に動いているだけだ。
「食べたいのじゃないかと思ったの。そうでなければ、離宮の新しいお菓子の話なんてしないでしょ」
「ちょっとした新しい情報を知らせたつもりだったのだけれど。まあそうだね、興味はあったかな」
「早速なるに持ってきてもらったのよ。是非食べてみて」
「ああ、ありがとう」
いつも通りのようで少し距離を感じるのは、私に、思うところがあるから。
朱実は、すんなりと一口カステラを口に入れた。なるが持ってきた品だからと拒絶したりはしないらしい。
「うん。食べやすいね」
「村次が作ったの」
「そう。見事なものだ。離宮は良い料理人が大勢いて羨ましいよ。今度、うちに来てもらえないか聞いてみようかな」
「え?駄目」
思わず、といった風になるが言う。
「駄目かい?私が頼めば頷いてくれる者がいるのではないかな?」
「上官の命令は逆らえないから駄目。皆、緋色の大切な人だから」
「そう。残念だな」
薄く笑みをはいた口元から紡がれる芝居がかった台詞。
我慢がきかないのは、産後で情緒が安定していないからだということにしよう。
「ねえ、朱実。緋色殿下に銃を向けたことがあるって本当?」
常陸丸に聞けば、端から見た光景を正確に知ることができるのだろうけれど。
でも、私は、あなたのことが知りたい。
なるには嘘が無い。聞けば、見たまま感じたままを伝えてくれる。だからもし、なるの言うことと朱実の言うことが違っていたとしたら、嘘は朱実。見解の相違だとしても、何か脚色をするとしたら朱実の方だ。
「私が?まさか!そんなことは、天と地がひっくり返ってもあり得ないね」
ああ、ほら。
本当に驚いた顔でそう言うのね。
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