【完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

94 おやつ合戦  成人

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灯可とうか。おやつもらっていこう」

 灯可とうかをお部屋にご案内してから俺がおやつを運んで行くという計画だったけど、これは急いで厨房に行かなくちゃならない。
 だって白いプリンだ。プリンなのに、白いんだよ。

広末ひろすえ、プリンが、プリンが白い」
「おう、なる坊。お友達来たか。だいぶ待ったな。おやつ持ってくか?」

 うんうん。おやつ持ってく。じゃなくて……。

「あ。灯可とうかさま、ご一緒でしたか。これは失礼を致しました」

 広末ひろすえが急に背筋を伸ばす。

「あ、いや。私が突然邪魔をしたのだ。気にしないでくれ」
 
 そっと厨房を覗いていた灯可とうかが、手を横に振る。

「俺はどうも礼儀に疎くて、申し訳ございません」
「本当に、気にせずいつも通りで構わない。その、成人なるひとさまといつもそのようにお話されるのかと少し驚いただけだ」
「すみません。殿下が気にしなくていいと仰ってくれるもんで、なる坊の呼び方は、殿下の伴侶になる前にそれぞれが呼んでいたまんま変わってねえんです」
「ああ、そうなのか」
「ご挨拶、終わった?」

 白いプリンを早く見せたいのに、ご挨拶が長い。待ちきれなくてつい聞いてしまった。
 いつもは待ってるんだよ。人がお話してるときはちゃんと待ってる。いつまででも待てるように訓練されてた。
 でも、今はちょっと先に白いプリンを見て欲しい。
 あ、でもこれはよくないな。こういうのは、あれだ。我が儘だった……。
 
「おう、すまんすまん」

 広末ひろすえが笑う。俺の持ってた袋を受け取って、すぐに開いて見てくれた。怒ってない、良かった。あ、広末ひろすえはそんなに怒らないけど。ご飯をちゃんと食べない時だけ、心配しながらちょっと怒る。

「おお」

 広末ひろすえは瓶を一つ取り出して、くるくると見てる。白い。全部白い。

「おおお」

 喜んでる。すごく喜んでる。ね、言ったでしょ。

村次むらつぐ村次むらつぐちょっと来い」

 はーい、と食堂から村次むらつぐが出てきた。おやつの時間が終わりだから食堂の机を拭いてたのかな。

「これ見ろ」
「え?白い。プリン……ですか?」
「ミルクプリンだって。ね、灯可とうか
「はい、うちの料理人がミルクプリンと言っていました」
「ああ、牛乳。牛乳か」

 ふふ。美味しそうだよね。黄色くないのに美味しそう。

「俺、これも食べたい」
「お、そうだな。おやつだったな」
成人なるひと、うちも今日は新作だぞ」
「ずっと、いい匂いしてる」
「だろ?」

 村次むらつぐは厨房の奥に引っ込んで、たこ焼きみたいな丸いお菓子をお皿に入れて来てくれた。
 何?これ何?

「一口カステラ。たこ焼きの鉄板にカステラの生地を入れて焼いたら、すごく美味しそうなものができちゃった」

 おおお!村次むらつぐが作ったの?
 すげー!
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