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第六章 家族と暮らす
11 思い出の形は人それぞれ 成人
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「それにしても」
城の中を歩きながら、常陸丸がぼそりと呟く。
「不興を買って、ようやく顔を覚えてもらえるなんて、東院由狩も不憫なやつ」
「何のことだ?」
「先ほどの部屋に居た近衛兵の一人ですよ。覚えていませんか?二年ほど前まで、朱実殿下の主任護衛をしてましたけど」
「…………」
緋色は、少し考える仕草を見せたけどすぐに諦めた。
「一度、朱実殿下と共に離宮にも来ましたよ?緋色殿下が朱実殿下の頬に傷をつけて、結構な騒ぎになった件です。その時に、朱実殿下が、自分を守れなかったからと言って東院家を皇家筆頭護衛から外したでしょう?」
「あー!」
「思い出しました?」
「成人がミックスジュースを初めて飲んで喜んでたのに、朱実のせいで全部吐き出した時か!」
「そういう覚え方?!そりゃ、朱実殿下の護衛の顔なんて覚えてないわけだわ」
二人は、いつも離宮で話している時みたいに、普通に話している。今歩いている廊下は、人が全然居なくて歩きやすい。俺は、緋色の抱っこのままだから歩いてないけど。
皇族専用の入り口ってことは、入れる人がそんなにいないんだもんな。
緋色も同じことを思ったらしい。
「ここ、いいな」
「挨拶で止められないし、気楽に話せるのは助かりますね」
「今度来るときは、こっちから入ろう」
「ははっ。使えるものは使ってみるもんですね」
「もうあまり来ないかもしれないけどな」
「まあとりあえず、東院の実力者が門番してたって話です」
「ふーん」
「うわ、興味無さそう。あの時俺ら、朱実殿下に利用されたんすよ。どうもその前から、朱実殿下は近衛隊の刷新を謀っていらっしゃったようで、いい理由付けに使われたっていうか」
「別に、俺には関係無い」
「一応、俺も近衛隊の所属なんで気にしてほしいっすねえ」
「俺の個人雇いにするか?」
「殿下が一条の名を名乗っていた時にはそうしてたのに、殿下が皇族に戻されたときに、俺も近衛隊に戻されたんですよ。その時の脅し文句が、お前が近衛隊の所属でなければ、皇族である緋色を守るために、近衛兵を交代で送ることになるがよいか、でした」
「朱実……」
緋色が、ものすごーく嫌がる顔をした。
「だから、戻ったんすよ。感謝してくださいよ」
「ああ、はいはい」
話しながらたどり着いたのは、文官の仕事部屋。大きな部屋にたくさんの机が並んで、同じ服装の人が席に座り、書類を書いたり読んだりしている。機械に文字を打ち込んでいる人もいる。
「緋色殿下」
声をかける前に、緋色の赤い服を見て全員が一斉に立ち上がり、包拳礼をした。
「ああ、仕事の邪魔をしてすまないな。皆、仕事に戻ってくれ。俺の戸籍を閲覧したいから、担当の者が相手をしてくれると助かるのだが」
城の中を歩きながら、常陸丸がぼそりと呟く。
「不興を買って、ようやく顔を覚えてもらえるなんて、東院由狩も不憫なやつ」
「何のことだ?」
「先ほどの部屋に居た近衛兵の一人ですよ。覚えていませんか?二年ほど前まで、朱実殿下の主任護衛をしてましたけど」
「…………」
緋色は、少し考える仕草を見せたけどすぐに諦めた。
「一度、朱実殿下と共に離宮にも来ましたよ?緋色殿下が朱実殿下の頬に傷をつけて、結構な騒ぎになった件です。その時に、朱実殿下が、自分を守れなかったからと言って東院家を皇家筆頭護衛から外したでしょう?」
「あー!」
「思い出しました?」
「成人がミックスジュースを初めて飲んで喜んでたのに、朱実のせいで全部吐き出した時か!」
「そういう覚え方?!そりゃ、朱実殿下の護衛の顔なんて覚えてないわけだわ」
二人は、いつも離宮で話している時みたいに、普通に話している。今歩いている廊下は、人が全然居なくて歩きやすい。俺は、緋色の抱っこのままだから歩いてないけど。
皇族専用の入り口ってことは、入れる人がそんなにいないんだもんな。
緋色も同じことを思ったらしい。
「ここ、いいな」
「挨拶で止められないし、気楽に話せるのは助かりますね」
「今度来るときは、こっちから入ろう」
「ははっ。使えるものは使ってみるもんですね」
「もうあまり来ないかもしれないけどな」
「まあとりあえず、東院の実力者が門番してたって話です」
「ふーん」
「うわ、興味無さそう。あの時俺ら、朱実殿下に利用されたんすよ。どうもその前から、朱実殿下は近衛隊の刷新を謀っていらっしゃったようで、いい理由付けに使われたっていうか」
「別に、俺には関係無い」
「一応、俺も近衛隊の所属なんで気にしてほしいっすねえ」
「俺の個人雇いにするか?」
「殿下が一条の名を名乗っていた時にはそうしてたのに、殿下が皇族に戻されたときに、俺も近衛隊に戻されたんですよ。その時の脅し文句が、お前が近衛隊の所属でなければ、皇族である緋色を守るために、近衛兵を交代で送ることになるがよいか、でした」
「朱実……」
緋色が、ものすごーく嫌がる顔をした。
「だから、戻ったんすよ。感謝してくださいよ」
「ああ、はいはい」
話しながらたどり着いたのは、文官の仕事部屋。大きな部屋にたくさんの机が並んで、同じ服装の人が席に座り、書類を書いたり読んだりしている。機械に文字を打ち込んでいる人もいる。
「緋色殿下」
声をかける前に、緋色の赤い服を見て全員が一斉に立ち上がり、包拳礼をした。
「ああ、仕事の邪魔をしてすまないな。皆、仕事に戻ってくれ。俺の戸籍を閲覧したいから、担当の者が相手をしてくれると助かるのだが」
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