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第五章 それは日々の話
206 たこ焼き屋さん開店 成人
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まだまだ寒いけど良い天気な三月の初め、昼ごはんの片付けを終えた広末と村次が、離宮の前にばたばたと、腰まである高さの机を置いて、その上にたこ焼きの鉄板を置いた。
気になって、出入り口から覗いていると、
「なる坊は寒いから中にいろよ」
って言われる。
確かに寒いけど……。
「何するの?」
「たこ焼き屋さん」
「!!」
何それ、楽しそう。売るの?え、誰に?いらっしゃいってするの?
出入り口が開け放たれて、ばたばたと水瀬や鼓与も何か運んでいる。
たこ焼きの材料と、何かお皿みたいのと、割り箸?つま楊枝じゃなく?
「何で割り箸?」
「つま楊枝では食べにくいという人もいるかな、と思いまして」
水瀬が答えてくれる。へええ。
準備を近くで見たくて少しずつ近寄っていくと、外に出てしまった。
「くしゅんっ」
「こら、なる坊。風邪引くぞ。出てくんな」
むー。
でも、俺もたこ焼き屋さんしたい。
あ、そうだ。
「服着てくる」
出かける用のあったかい服を着れば、大丈夫のはず。緋色のいないうちに、出てしまおう。
頑張って服を重ね着して、もこもこの上着も着て外に出ると、もう良い匂いがし始めていた。
「ふわあ。良い匂い」
「ありゃ。出てきたのか」
「いっぱい着てきた」
「寒くないか」
「うん」
広末は相変わらず、おしゃべりしながらでもお料理の手が動く。すごいよね。見てるだけで楽しい。
たこ焼きを焼いてる隣に、もう一つの机が並んでいて、水瀬と鼓与がそこで何か準備していた。
「ここ何?」
「こちらで売るんですよ。成人さまもこちらを手伝ってください」
うんうん。
俺がたこ焼きを焼くと丸くならないことがあるから、売るのはちょっとなあ。
「これは何ですか?」
早速、二人組で歩いていた警備隊の人が足を止めた。
城内は警備隊がうろうろして、城で働く人や、住んでいる人を守ってくれているから、何かいつもと違うことをしたらすぐに気付くよね。
「たこ焼きです。うちで最近流行ってるんですけど、警備隊の方にも振る舞ったらどうか、と緋色殿下が仰いまして」
「ああ」
警備隊の人が、ごくんと唾を飲んだ。
「最近、離宮から良い匂いが漂っていると、警備隊でも非常に評判で。もしかして、これが?」
「たぶんそうだと思いますよ?」
おお、と二人で頷き合う警備員。しゃべりながら、くるくるとたこ焼きをひっくり返す広末の手元を、じーっと見ている。
「持ち帰ることはできますでしょうか」
「いや。できればここで食べていってほしいんですよ。熱いうちが旨いんでね」
「そうですか……。いや、しかし」
「殿下が調べたところでは、今のところ、警備隊の職務規定に、買い食い禁止の項目はないそうですよ?」
「……はは。いや、成る程」
「差し入れにしたかったのですが、皆様に行き渡るように作ることができませんので、少しだけお代を頂いてもよろしいですか?」
「はは。いや、もちろん」
「その、二つ頼む」
顔を見合わせた警備隊の二人は、少し笑ってポケットからお金を取り出した。
「では、すぐに焼き上がるので隣の机の前でお待ちください」
お仕事だ!
楽しそう。
俺はお店屋さんだから、ちゃんと挨拶しなくちゃな。
「いらっしゃい!」
気になって、出入り口から覗いていると、
「なる坊は寒いから中にいろよ」
って言われる。
確かに寒いけど……。
「何するの?」
「たこ焼き屋さん」
「!!」
何それ、楽しそう。売るの?え、誰に?いらっしゃいってするの?
出入り口が開け放たれて、ばたばたと水瀬や鼓与も何か運んでいる。
たこ焼きの材料と、何かお皿みたいのと、割り箸?つま楊枝じゃなく?
「何で割り箸?」
「つま楊枝では食べにくいという人もいるかな、と思いまして」
水瀬が答えてくれる。へええ。
準備を近くで見たくて少しずつ近寄っていくと、外に出てしまった。
「くしゅんっ」
「こら、なる坊。風邪引くぞ。出てくんな」
むー。
でも、俺もたこ焼き屋さんしたい。
あ、そうだ。
「服着てくる」
出かける用のあったかい服を着れば、大丈夫のはず。緋色のいないうちに、出てしまおう。
頑張って服を重ね着して、もこもこの上着も着て外に出ると、もう良い匂いがし始めていた。
「ふわあ。良い匂い」
「ありゃ。出てきたのか」
「いっぱい着てきた」
「寒くないか」
「うん」
広末は相変わらず、おしゃべりしながらでもお料理の手が動く。すごいよね。見てるだけで楽しい。
たこ焼きを焼いてる隣に、もう一つの机が並んでいて、水瀬と鼓与がそこで何か準備していた。
「ここ何?」
「こちらで売るんですよ。成人さまもこちらを手伝ってください」
うんうん。
俺がたこ焼きを焼くと丸くならないことがあるから、売るのはちょっとなあ。
「これは何ですか?」
早速、二人組で歩いていた警備隊の人が足を止めた。
城内は警備隊がうろうろして、城で働く人や、住んでいる人を守ってくれているから、何かいつもと違うことをしたらすぐに気付くよね。
「たこ焼きです。うちで最近流行ってるんですけど、警備隊の方にも振る舞ったらどうか、と緋色殿下が仰いまして」
「ああ」
警備隊の人が、ごくんと唾を飲んだ。
「最近、離宮から良い匂いが漂っていると、警備隊でも非常に評判で。もしかして、これが?」
「たぶんそうだと思いますよ?」
おお、と二人で頷き合う警備員。しゃべりながら、くるくるとたこ焼きをひっくり返す広末の手元を、じーっと見ている。
「持ち帰ることはできますでしょうか」
「いや。できればここで食べていってほしいんですよ。熱いうちが旨いんでね」
「そうですか……。いや、しかし」
「殿下が調べたところでは、今のところ、警備隊の職務規定に、買い食い禁止の項目はないそうですよ?」
「……はは。いや、成る程」
「差し入れにしたかったのですが、皆様に行き渡るように作ることができませんので、少しだけお代を頂いてもよろしいですか?」
「はは。いや、もちろん」
「その、二つ頼む」
顔を見合わせた警備隊の二人は、少し笑ってポケットからお金を取り出した。
「では、すぐに焼き上がるので隣の机の前でお待ちください」
お仕事だ!
楽しそう。
俺はお店屋さんだから、ちゃんと挨拶しなくちゃな。
「いらっしゃい!」
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