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第五章 それは日々の話
157 お年玉 成人
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お正月、というのは、皆がお休みする日だ。三日間、お休みする決まり。
いつもこの離宮に住んでいる人でも、実家というところに帰っている。仕事は皆休みだから、通ってくる人もいなくて人が少ない。常陸丸と乙羽と力丸は、おんなじ所に帰っていった。何か、家族って感じがしていいな、と思った。家族、が分かってきた気がする。
じいじと生松と睦峯は、この離宮がお家だからいつも通りここにいる。じいじは、朝からお酒を飲んで、生松におかわりを止められていた。
「正月なんだからええじゃないか。なあ、睦峯?」
「すべての行事ごとに、そう言ってますよね」
「酒飲みの歌、そのままですね」
生松だけでなく、助けを求めた睦峯にも冷たくコップを取り上げられて、じいじは何故か嬉しそうに笑う。
「あけましておめでとうございます」
教えてもらったお正月の挨拶をすると、三人が口々に、同じ挨拶を返してくれた。
「かしこい成人にお年玉をやろう」
「かしこい?」
「きちんと挨拶ができたからな」
じいじは、ポチ袋に入ったお金をくれたけれど、俺はもう、自分で仕事をしてる大人なので、これは貰えない。力丸が、俺は家に挨拶に帰ってももう、お年玉を貰えないんだよなあ、とぼやいてて知ったんだ。貰えないどころか、親戚の子どもにお年玉を渡さなくてはいけないそうだ。働いてお金を稼いでる人は大人だから、仕方ねえよなあって言ってた。
それで言えば、俺は大人ってことになる。貰えない。
じいじに返そうとしたら、受け取ってくれると嬉しいんだがなあ、と言いながらぽんぽんと俺の頭を優しく撫でた。
ひゃ、と首をすくめてしまう。撫でられるのは気持ちいいのに、上から手が伸びてくるのが怖い。早く治らないかな、と思っている。頭撫でられるの、好きなのに、怖がってると思われちゃう。いや、怖がってるのか。何でだろ。いつからだろ?
「おお、すまん」
緋色が後ろから抱えてくれて、じいじが慌てて手を引いた。撫でてもらうのは好きなんだけど、上から手が来るのが怖い。撫でるのはやめなくてもいいんだ。ああ、上手く伝えられない。
「可愛い子や孫には、その子が大人になっても、何か渡したくなるのが年寄りってもんだ。だから、ほら。生松と睦峯のもあるぞ」
俺のと同じポチ袋が、生松と睦峯の手にも乗せられた。
「義父上……」
「…………」
二人は、手の上のポチ袋をしみじみと見る。
「ありがとう、ございます……」
生松が返さずに受け取って、睦峯も小さな声で、ありがとうごさいます、と言った。
うーん、そっか。俺より大人の二人が受け取るなら俺も……。
「ありがと」
「うむ。めでたいな」
じいじが、にかりと笑う顔の前に、俺の後ろから手が伸びてきた。
「もらっとらんぞ」
そうだ、じいじ。緋色の分は?
「わっはっはっはっは」
じいじは、可笑しくて堪らないというように大笑いしながら、ポケットから取り出したポチ袋をその手に乗せた。
やっぱり。緋色のもあったね!
振り向いたら、何故かびっくりしている緋色の顔が目に入った。
じいじはますます大笑いして、
「今年も楽しい一年になりそうじゃ」
と、言った。
いつもこの離宮に住んでいる人でも、実家というところに帰っている。仕事は皆休みだから、通ってくる人もいなくて人が少ない。常陸丸と乙羽と力丸は、おんなじ所に帰っていった。何か、家族って感じがしていいな、と思った。家族、が分かってきた気がする。
じいじと生松と睦峯は、この離宮がお家だからいつも通りここにいる。じいじは、朝からお酒を飲んで、生松におかわりを止められていた。
「正月なんだからええじゃないか。なあ、睦峯?」
「すべての行事ごとに、そう言ってますよね」
「酒飲みの歌、そのままですね」
生松だけでなく、助けを求めた睦峯にも冷たくコップを取り上げられて、じいじは何故か嬉しそうに笑う。
「あけましておめでとうございます」
教えてもらったお正月の挨拶をすると、三人が口々に、同じ挨拶を返してくれた。
「かしこい成人にお年玉をやろう」
「かしこい?」
「きちんと挨拶ができたからな」
じいじは、ポチ袋に入ったお金をくれたけれど、俺はもう、自分で仕事をしてる大人なので、これは貰えない。力丸が、俺は家に挨拶に帰ってももう、お年玉を貰えないんだよなあ、とぼやいてて知ったんだ。貰えないどころか、親戚の子どもにお年玉を渡さなくてはいけないそうだ。働いてお金を稼いでる人は大人だから、仕方ねえよなあって言ってた。
それで言えば、俺は大人ってことになる。貰えない。
じいじに返そうとしたら、受け取ってくれると嬉しいんだがなあ、と言いながらぽんぽんと俺の頭を優しく撫でた。
ひゃ、と首をすくめてしまう。撫でられるのは気持ちいいのに、上から手が伸びてくるのが怖い。早く治らないかな、と思っている。頭撫でられるの、好きなのに、怖がってると思われちゃう。いや、怖がってるのか。何でだろ。いつからだろ?
「おお、すまん」
緋色が後ろから抱えてくれて、じいじが慌てて手を引いた。撫でてもらうのは好きなんだけど、上から手が来るのが怖い。撫でるのはやめなくてもいいんだ。ああ、上手く伝えられない。
「可愛い子や孫には、その子が大人になっても、何か渡したくなるのが年寄りってもんだ。だから、ほら。生松と睦峯のもあるぞ」
俺のと同じポチ袋が、生松と睦峯の手にも乗せられた。
「義父上……」
「…………」
二人は、手の上のポチ袋をしみじみと見る。
「ありがとう、ございます……」
生松が返さずに受け取って、睦峯も小さな声で、ありがとうごさいます、と言った。
うーん、そっか。俺より大人の二人が受け取るなら俺も……。
「ありがと」
「うむ。めでたいな」
じいじが、にかりと笑う顔の前に、俺の後ろから手が伸びてきた。
「もらっとらんぞ」
そうだ、じいじ。緋色の分は?
「わっはっはっはっは」
じいじは、可笑しくて堪らないというように大笑いしながら、ポケットから取り出したポチ袋をその手に乗せた。
やっぱり。緋色のもあったね!
振り向いたら、何故かびっくりしている緋色の顔が目に入った。
じいじはますます大笑いして、
「今年も楽しい一年になりそうじゃ」
と、言った。
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