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第五章 それは日々の話
94 世界で一番可愛い子ども 成人
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お昼過ぎ、末良が来た!玄関までお迎えに行ったら、斑鹿乃にしがみついて、むーとした顔できょろきょろしている。
いつもいる場所ってのが分かってきたみたいでね。知らない場所に行くと、ものすごく警戒して、私にしがみつくのよ、ってこの前、斑鹿乃が言ってたやつだ。人も、そうらしい。知らない人が近付くと、やだーって泣いちゃうんだよね。
「わー、末良、大きくなったなあ!こんにちは」
客の迎えに出た力丸が声をかけると、斑鹿乃の胸に、ぎゅうと顔を埋めちゃった。泣かなかっただけ偉い!
「力丸さま、こんにちは。お久しぶりです」
斑鹿乃は、くすくす笑いながら末良の背中をぽんぽん叩いた。
「斑鹿乃、こんにちは。末良、こんにちは」
近くまで行って声をかけると、末良が、ぱっと顔を上げる。あ、あ、と言いながら俺を指差して、斑鹿乃を見た。
「大好きな成人さんがいましたねえ。良かったね」
俺の顔を見て、少し笑ったのが可愛い。ああ。末良は、何でこんなに可愛いんだろう。
「成人、だらしない顔してんなあ。まあ、末良、可愛いもんな」
だらしない顔ってどんな顔?
力丸が俺の横に並ぶと、末良がまた、むう、と難しい顔をする。
「末良、そんな顔すんな。力丸兄ちゃんだぞ。覚えろよ」
力丸は、あんまり気にしてないみたいで、にこにこと末良に話しかけている。力丸がにこにこしてるから、だんだん末良も、むう、の顔じゃなくなってきたのがすごい。
誕生日会の会場である食堂に案内すると、末良は、入り口にも飾った輪っかの飾りに、あー!と言いながら手を伸ばした。少し上の方に飾ったから届かなかったなあ。
外して渡そうかな、と思っていたら斑鹿乃が、届かなくていいのよ、と小さな声で言った。
「握りつぶしちゃうし、食べちゃう」
「あはは」
そうだった。末良は何でも食べちゃう。青葉さんに聞いたら、五感の全てを使って物を確認してるのよって言ってた。
「この世の全てが知らない物だから、自分の持ってる感覚全てで確認しようとするんだろうね。これは硬いか軟らかいか、どんな音がするのか、どんな色か形か、どんな匂いか、どんな味がするのか」
「食べられない物も?」
「食べられるかどうかも確認してるのかもねえ。危ないから、大人がきちんと見ててあげないと、赤ん坊なんてすぐに死んじゃうんだよ」
赤ちゃんを育てるのって大変なんだなあ。
俺も、赤ちゃんだったことあるのかな?口に入れて確かめたりしたかな?
たぶん、してないんだろうなあ。だって、知らない物や事が多すぎる。赤ちゃんの時に確認してないから、知らないのかもなあ。たまに、末良があむあむしてる赤ちゃん用のおもちゃ、美味しいのかな?って思っちゃうし。
食堂の中に入っても、飾りを指差して、あ、あ、と言ってる末良の目がきらきらしてて、俺は、いつもより色々飾り付けして良かったーと思った。
「まーた、だらしない顔」
力丸がけらけら笑って俺を見ている。
だから、だらしない顔って何?
いつもいる場所ってのが分かってきたみたいでね。知らない場所に行くと、ものすごく警戒して、私にしがみつくのよ、ってこの前、斑鹿乃が言ってたやつだ。人も、そうらしい。知らない人が近付くと、やだーって泣いちゃうんだよね。
「わー、末良、大きくなったなあ!こんにちは」
客の迎えに出た力丸が声をかけると、斑鹿乃の胸に、ぎゅうと顔を埋めちゃった。泣かなかっただけ偉い!
「力丸さま、こんにちは。お久しぶりです」
斑鹿乃は、くすくす笑いながら末良の背中をぽんぽん叩いた。
「斑鹿乃、こんにちは。末良、こんにちは」
近くまで行って声をかけると、末良が、ぱっと顔を上げる。あ、あ、と言いながら俺を指差して、斑鹿乃を見た。
「大好きな成人さんがいましたねえ。良かったね」
俺の顔を見て、少し笑ったのが可愛い。ああ。末良は、何でこんなに可愛いんだろう。
「成人、だらしない顔してんなあ。まあ、末良、可愛いもんな」
だらしない顔ってどんな顔?
力丸が俺の横に並ぶと、末良がまた、むう、と難しい顔をする。
「末良、そんな顔すんな。力丸兄ちゃんだぞ。覚えろよ」
力丸は、あんまり気にしてないみたいで、にこにこと末良に話しかけている。力丸がにこにこしてるから、だんだん末良も、むう、の顔じゃなくなってきたのがすごい。
誕生日会の会場である食堂に案内すると、末良は、入り口にも飾った輪っかの飾りに、あー!と言いながら手を伸ばした。少し上の方に飾ったから届かなかったなあ。
外して渡そうかな、と思っていたら斑鹿乃が、届かなくていいのよ、と小さな声で言った。
「握りつぶしちゃうし、食べちゃう」
「あはは」
そうだった。末良は何でも食べちゃう。青葉さんに聞いたら、五感の全てを使って物を確認してるのよって言ってた。
「この世の全てが知らない物だから、自分の持ってる感覚全てで確認しようとするんだろうね。これは硬いか軟らかいか、どんな音がするのか、どんな色か形か、どんな匂いか、どんな味がするのか」
「食べられない物も?」
「食べられるかどうかも確認してるのかもねえ。危ないから、大人がきちんと見ててあげないと、赤ん坊なんてすぐに死んじゃうんだよ」
赤ちゃんを育てるのって大変なんだなあ。
俺も、赤ちゃんだったことあるのかな?口に入れて確かめたりしたかな?
たぶん、してないんだろうなあ。だって、知らない物や事が多すぎる。赤ちゃんの時に確認してないから、知らないのかもなあ。たまに、末良があむあむしてる赤ちゃん用のおもちゃ、美味しいのかな?って思っちゃうし。
食堂の中に入っても、飾りを指差して、あ、あ、と言ってる末良の目がきらきらしてて、俺は、いつもより色々飾り付けして良かったーと思った。
「まーた、だらしない顔」
力丸がけらけら笑って俺を見ている。
だから、だらしない顔って何?
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