【完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

87 赤は好きな人の色  成人

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 くまの帽子は、いつも俺がみんなの誕生日プレゼントに買うものより、だいぶ高かった。値札を見て、ものすごーく、ものすごーく悩んだけど、持ってきたお金で足りる。
 くまがお揃いだしな。
 くまの帽子を手に、うんうん悩んだ末に、会計所に持っていった。

「プレゼント用に包んでもらえますか?」
「畏まりました。包装紙のお色をお選びください」

 緑色と桃色を出されて、悩んでしまう。商店街の包んでくれる店は、いつも同じ包装紙だし、プレゼント用に包んでもらえない店も多い。そういうときは、自分できれいな袋を買って入れる。袋とかリボンが売ってる店もあるからね。赤いリボンを衣装部の人にもらって持っているから、袋に入れて赤いリボンを結ぶときれい。……リボン結びは、乙羽おとわに手伝って貰わないとできないけれど。
 赤の包装紙は無いのかあ。赤色は、普通の人はあんまり使えないんだったっけ?赤に近い桃色にしようかな、と桃色を指差すと、承りました、少しお待ちください、と店員さんが言う。他に会計をする人がいなかったから、手早く綺麗に包装してくれる様子を見ていると、手を動かしながら話しかけてくれた。

「女の子へのプレゼントですか?」

 いや。末良すえよしは男の子だよ。おむつを替えるときに見たけど、俺や緋色ひいろと同じものが付いてた。女の子には無いんだって、勉強の時間に青葉あおばに教えてもらったよ。

「男の子」

 俺が言うと、店員さんはすごくびっくりしている。

「包装紙は、こちらの色でよろしかったのですか?」
「うん。俺、赤が好きだし」

 そういうと、俺をまじまじと見て、急に口調が緊張した感じになった。

「あ……、ええと、左様でございましたか」
「これ、赤に似てるから」
「そう、ですね」

 ん?男の子には緑とか、そういう決まりでもあったのかな。

「できたか」

 緋色ひいろが迎えに来てくれたのを見て、店員さんが少し震えながら、俺にプレゼントの袋を渡してくれた。

「お待たせ致しました」
「ありがとう」

 丁寧に頭を下げてくれるので、お礼を言ってその場を後にする。

「どうかしたか?」
「ん?えーと、女の子へのプレゼントですか?って聞かれた」
「ああ。包装紙を桃色にしたからか」
「桃色は女の子って決まりある?」
「いや?赤ん坊は本人の好きな色が分からないんだから、渡す者の好きな色でいいんじゃないか」

 そっか。そうだよね。末良すえよしはまだ、あーとかうーとかしか言わない。後は泣いてるか笑ってるな。

「お前の好きな色に似てるのがこっちだったんだろ?」
「うん」
「赤色好きだな」
「うん」

 だって。

緋色ひいろの色だから」
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