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第五章 それは日々の話
4 赤璃さまと髪の美容液 成人
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「赤璃さん、こちらに座れる?」
雫石さんが、部屋にあるソファを指差す。はい、と頷いてベッドから下りた赤璃さまは、少しほっそりして見えた。
「さ、成人ちゃん、こっちこっち。」
赤璃さまの座った後ろに手を引かれて行くと、雫石さんの侍女さんが付いてくる。
「赤璃さん、この香りは平気?」
侍女さんが雫石さんの言葉に、手に持って来ていた美容液の蓋を開けて、赤璃さまに近付ける。
「とても良い香りです。」
「気持ち悪くなったりしない?」
「ええ、大丈夫そうです。」
緋色が雫石さんにと選んだ美容液はとても仄かな香りで、髪に伸ばし終えた後はいっぱい頭を振らないと匂いが分からないくらいの物だ。髪に伸ばしている時は、気持ちいい匂いがしている。温まった手でやると、ちょうどいいらしい。
俺も、このくらいが好き。ずっと匂いがしてると、ちょっと困る。
「では、成人ちゃんに後はお任せするわ。」
赤璃さまの髪に美容液を塗るの?でも今日、赤璃さまのお土産を持ってきてないんだけど。
俺が、困って雫石さんの顔を見上げると、にこにこの雫石さんが頭を撫でてくれた。
「赤璃さんの元気が出るように、お願いね。私はとっても元気になったのよ?」
確かに。
元気のない赤璃さまって、何を話せばいいのか分からない。
俺はうんうんと頷いて右手の平を侍女さんに差し出した。
「なる?何するの?それ、なあに?」
雫石さんが赤璃さまの対面のソファに腰を下ろすと、この部屋に居た侍女さんがすっとお茶を出す。赤璃さまの前と、その横にも一つ置かれた。
俺の?蓋を開けといてね。
「髪の毛の美容液。緋色のお土産。」
右手をぎゅっと握って温めてから、赤璃さまの髪をそっと掴む。手を滑らすと、元々つるつるさらさらの長い髪が、しっとり艶々した。
おお。
雫石さんと全然違う。
ふわふわしてないから、少しの量でどんどんしっとりしていく。
「わ、気持ちいい。良い匂い。」
ふふ。そうでしょ?
お茶を三つ置いて、俺の分のお茶の蓋を開けてくれた赤璃さまの侍女さんが、俺の横に立って真剣に見ている。
何回か美容液を手の平に足してもらって塗る間も、ずっとそこで見ていた。
「できた。」
「うわあ、気持ち良かった。何これ、すごい。お土産ってことは、置いていってくれるの?」
「うん。でも今日は、雫石さんのしか持ってきてない。」
「え?じゃあこれ、お義母様の?」
「うん。」
「まあ、すみません。私、髪の毛長いから、たくさん使ってしまったんじゃないかしら?」
「いいのよ。緋色さんが、いつでも買えるようにしてくださるらしいから、また買いにいきましょ。」
「へええ。緋色殿下、こんなものを輸入する伝手を繋いできたの?」
「うん。商店街にお店作るって。」
「へええ。緋色殿下が?」
緋色がまた、へええって言われてる。
俺は可笑しくて笑った。笑ってる間に、侍女さんが手を綺麗に拭いてくれた。
そうだ。元気になってきた赤璃さまに聞いておかなきゃ。
「赤ちゃん、いつ出てくるの?」
雫石さんが、部屋にあるソファを指差す。はい、と頷いてベッドから下りた赤璃さまは、少しほっそりして見えた。
「さ、成人ちゃん、こっちこっち。」
赤璃さまの座った後ろに手を引かれて行くと、雫石さんの侍女さんが付いてくる。
「赤璃さん、この香りは平気?」
侍女さんが雫石さんの言葉に、手に持って来ていた美容液の蓋を開けて、赤璃さまに近付ける。
「とても良い香りです。」
「気持ち悪くなったりしない?」
「ええ、大丈夫そうです。」
緋色が雫石さんにと選んだ美容液はとても仄かな香りで、髪に伸ばし終えた後はいっぱい頭を振らないと匂いが分からないくらいの物だ。髪に伸ばしている時は、気持ちいい匂いがしている。温まった手でやると、ちょうどいいらしい。
俺も、このくらいが好き。ずっと匂いがしてると、ちょっと困る。
「では、成人ちゃんに後はお任せするわ。」
赤璃さまの髪に美容液を塗るの?でも今日、赤璃さまのお土産を持ってきてないんだけど。
俺が、困って雫石さんの顔を見上げると、にこにこの雫石さんが頭を撫でてくれた。
「赤璃さんの元気が出るように、お願いね。私はとっても元気になったのよ?」
確かに。
元気のない赤璃さまって、何を話せばいいのか分からない。
俺はうんうんと頷いて右手の平を侍女さんに差し出した。
「なる?何するの?それ、なあに?」
雫石さんが赤璃さまの対面のソファに腰を下ろすと、この部屋に居た侍女さんがすっとお茶を出す。赤璃さまの前と、その横にも一つ置かれた。
俺の?蓋を開けといてね。
「髪の毛の美容液。緋色のお土産。」
右手をぎゅっと握って温めてから、赤璃さまの髪をそっと掴む。手を滑らすと、元々つるつるさらさらの長い髪が、しっとり艶々した。
おお。
雫石さんと全然違う。
ふわふわしてないから、少しの量でどんどんしっとりしていく。
「わ、気持ちいい。良い匂い。」
ふふ。そうでしょ?
お茶を三つ置いて、俺の分のお茶の蓋を開けてくれた赤璃さまの侍女さんが、俺の横に立って真剣に見ている。
何回か美容液を手の平に足してもらって塗る間も、ずっとそこで見ていた。
「できた。」
「うわあ、気持ち良かった。何これ、すごい。お土産ってことは、置いていってくれるの?」
「うん。でも今日は、雫石さんのしか持ってきてない。」
「え?じゃあこれ、お義母様の?」
「うん。」
「まあ、すみません。私、髪の毛長いから、たくさん使ってしまったんじゃないかしら?」
「いいのよ。緋色さんが、いつでも買えるようにしてくださるらしいから、また買いにいきましょ。」
「へええ。緋色殿下、こんなものを輸入する伝手を繋いできたの?」
「うん。商店街にお店作るって。」
「へええ。緋色殿下が?」
緋色がまた、へええって言われてる。
俺は可笑しくて笑った。笑ってる間に、侍女さんが手を綺麗に拭いてくれた。
そうだ。元気になってきた赤璃さまに聞いておかなきゃ。
「赤ちゃん、いつ出てくるの?」
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