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第四章 西からの迷い人
109 茶色いのは苦い 成人
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「どうぞ。」
「ありがと、三郎。」
「はい。」
あれ?三郎、何かあった?
机にプリンを置いてくれた三郎の頬に右手を伸ばす。何か、表情が柔らかいような……?
驚いて固まった三郎の頬をむにむにと揉む。
わ、柔らかい。もちもちしてる。
「何してんだよ、三郎が困ってるだろ。殿下も止めてくださいよ。」
「三郎の頬っぺた、柔らかいよ。」
「え?そうなの、どれ?」
力丸も、反対の頬を俺と一緒にむにむにとする。
「おおー、すげ。柔らかい。」
「あ、あ、あの……?」
「何してるんや、三人で。」
壱臣が器の違うプリンを持って俺のとこへ来た。
「ああ、三郎。成人くんのプリンはこっちなんや。言うて無かったな、ごめんよ。」
「え?あ、何か違うんですか?」
「カラメル無しなんよ。」
「あ、へえ?カラメル無し……。ええですね。」
俺たちの手を外して、自分の手で頬を押さえながら三郎が言う。
「茶色いの、苦い。」
「あ、分かります。私もずっと思てました。カラメルは苦いから無くてもええなあ、て。」
わ、仲間だ。
俺を見て三郎が少し笑った。笑ってる!
「お子さまだな。」
「茶色いのは苦いでしょ。コーヒーとか。」
「ああ、分かります。匂いも独特で、あれも苦手なんです。」
俺は力丸に知らん顔して三郎に手を出した。三郎も手を出してくれて、握手する。
うん、俺たち仲間ね。
「ほな、三郎もこれにするか?」
壱臣が、もう一つあったカラメル無しのプリンを三郎に手渡す。
「え、ええんですか?誰かの分やないんですか?」
「ううん。念のため二つ作っただけやから、大丈夫。誰かの分やとしたら、ひふ、あ、いや三郎の分。茶色いの苦手なん、覚えとくでな。」
「あ、兄上、あ、いえ、壱臣さ、ま、その、ありがとうござい……。」
「兄上でええけど。あと、その丁寧な言葉もいらんよ。」
「あの、でも……。」
「うち、兄上やし。」
壱臣が、ふふっと笑ってプリンを持って座る。
「ほな、俺も兄上やん?」
プリンを食べて、眠気の飛んだ顔をした弐角が言った。
「へ?」
「俺も兄上って呼ばれたい。臣だけずるい。」
「三郎、ややこしいから、うちだけでええよ。それより、角もうちのこと兄上って呼び。」
「臣は臣やろ。」
「うちは二人のお兄ちゃんやからなあ。」
壱臣はプリンを食べながら、によによと笑う。
「うわ、何か腹立つわ。ほんのちょっと早う出てきただけやん?三郎、俺のことも兄上って言うてみて。」
「あの、えーと、でも……。」
「分かった、ほな角兄上でもええわ。」
「か、角兄上……。」
「なんやー。」
弐角がご機嫌で返事してるけど、三郎は用事はないと思うよ。
そんな様子を見て泣いてしまった壱鷹は、ちょっと笑った弐藤に手ぬぐいを渡されている。
プリンは今日も美味しい!
「ありがと、三郎。」
「はい。」
あれ?三郎、何かあった?
机にプリンを置いてくれた三郎の頬に右手を伸ばす。何か、表情が柔らかいような……?
驚いて固まった三郎の頬をむにむにと揉む。
わ、柔らかい。もちもちしてる。
「何してんだよ、三郎が困ってるだろ。殿下も止めてくださいよ。」
「三郎の頬っぺた、柔らかいよ。」
「え?そうなの、どれ?」
力丸も、反対の頬を俺と一緒にむにむにとする。
「おおー、すげ。柔らかい。」
「あ、あ、あの……?」
「何してるんや、三人で。」
壱臣が器の違うプリンを持って俺のとこへ来た。
「ああ、三郎。成人くんのプリンはこっちなんや。言うて無かったな、ごめんよ。」
「え?あ、何か違うんですか?」
「カラメル無しなんよ。」
「あ、へえ?カラメル無し……。ええですね。」
俺たちの手を外して、自分の手で頬を押さえながら三郎が言う。
「茶色いの、苦い。」
「あ、分かります。私もずっと思てました。カラメルは苦いから無くてもええなあ、て。」
わ、仲間だ。
俺を見て三郎が少し笑った。笑ってる!
「お子さまだな。」
「茶色いのは苦いでしょ。コーヒーとか。」
「ああ、分かります。匂いも独特で、あれも苦手なんです。」
俺は力丸に知らん顔して三郎に手を出した。三郎も手を出してくれて、握手する。
うん、俺たち仲間ね。
「ほな、三郎もこれにするか?」
壱臣が、もう一つあったカラメル無しのプリンを三郎に手渡す。
「え、ええんですか?誰かの分やないんですか?」
「ううん。念のため二つ作っただけやから、大丈夫。誰かの分やとしたら、ひふ、あ、いや三郎の分。茶色いの苦手なん、覚えとくでな。」
「あ、兄上、あ、いえ、壱臣さ、ま、その、ありがとうござい……。」
「兄上でええけど。あと、その丁寧な言葉もいらんよ。」
「あの、でも……。」
「うち、兄上やし。」
壱臣が、ふふっと笑ってプリンを持って座る。
「ほな、俺も兄上やん?」
プリンを食べて、眠気の飛んだ顔をした弐角が言った。
「へ?」
「俺も兄上って呼ばれたい。臣だけずるい。」
「三郎、ややこしいから、うちだけでええよ。それより、角もうちのこと兄上って呼び。」
「臣は臣やろ。」
「うちは二人のお兄ちゃんやからなあ。」
壱臣はプリンを食べながら、によによと笑う。
「うわ、何か腹立つわ。ほんのちょっと早う出てきただけやん?三郎、俺のことも兄上って言うてみて。」
「あの、えーと、でも……。」
「分かった、ほな角兄上でもええわ。」
「か、角兄上……。」
「なんやー。」
弐角がご機嫌で返事してるけど、三郎は用事はないと思うよ。
そんな様子を見て泣いてしまった壱鷹は、ちょっと笑った弐藤に手ぬぐいを渡されている。
プリンは今日も美味しい!
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